昨年、トヨタの社長が、「自社には偉くなりたい人は沢山いるが、何をやりたいかを持っている人は少ない。次の人事改革では、やりたいことのある人が実現できるように変える」といった旨の発言をしました。
これからは、「~歳になったからそろそろ管理職にさせよう」「~歳になったから役職をおりてもらわなくては」といった型にはまったキャリアではなく、年齢や役職に関わらず、内発的に「自分はこれを実現したい」という思いを持ち、それを実現するために組織に属するという考え方が主流となってくると考えられます。
先述した通り、今までは評価の高い人、会社に貢献をした人を管理職に就けることが一般的でした。
これは、戦国時代に戦(いくさ)で活躍したから領地を増やすといった「ご褒美」に近い感覚といえます。
そのため、貢献や功績をしっかり把握し、不平不満が起きないように評価することに時間を費やしてきました。
ですがここ最近、日本でも少しずつ「次はこういうチャレンジをさせてみてはどうか?」「こんな風に育てていくのはどうか?」といった、人材開発の議論、いわゆるタレントレビューに時間を使おうという傾向が見られるようになってきました。
人材開発会議では、「この人をこんな風に育てたい」というように一人ひとりのキャリアを議論するのですが、その際には会社側の「こうなってほしい」という期待だけではなく、本人のキャリア志向として何をしたいのか、何を成し遂げたいのかをセットで考えることが必要です。
そしてここでいう「キャリア」とは出世する、偉くなるということではなく、「自分はこの組織でこれを実現したい」という内発的な思いのことを指すことを忘れてはいけません。
十数年前から、シニアのキャリア研修を提供していますが、研修の対象者である40代後半から50歳くらいの方たちは、多くが重要なポストにいて一番忙しい時期でもあります。
そのため、今を考えることに精いっぱいで、自分で自分の人生の「これから」を考えていない、また、考えている暇がないといった状況が多くみられます。
役職定年廃止=会社に依存してよいという意味ではなく、組織に残る以上は、自分がどう貢献したいのか、どう関わっていくのかを自分で考えることは、これからますます重要となってくるでしょう。
また、これは決してシニアだけの話ではありません。
「会社の期待」と「自分の思い」を重ね、会社という組織はそれを実現するためのステージである、という考え方を若いうちから訓練しておくことが、60歳、70歳、80歳になっても会社で活躍するために必要となってくるのではないでしょうか。
役職定年を延長する、子会社に出向させる、リストラする。
それらの施策は一時的には効果があるかもしれませんが、人事の戦術でしかありません。
シニアが年齢に関係なく、働きがいをもって組織に貢献できるようには何が必要なのか?人事の視点も変えていく必要があると考えられます。