そうなると残るは賞与のみですが、賞与を決めるためだけの目的で、わざわざレーティングを行う必要もありません。
賞与の本来の位置付けは会社の利益の還元です。つまり、その期に儲かったから従業員に報いるというのが賞与本来の意味であるため、従業員の短期業績に応じて支払うのが合理的です。
全従業員を母集団としてレーティングを行い、それに基づいて賞与を決めている会社も少なくありません。
すべての従業員に共通の尺度が適用されるため、一見、公平な制度のようですが、この方法にはもともと無理があります。
部門や職種が違えば成果(業績)の内容が異なるため、そもそも相対比較できないものを強引にランク付けしているからです。
レーティングを廃止したアメリカ企業が行っている一般的なやり方は、賞与原資を部門に配分して、それぞれの部門において賞与配分を決定するという方法です。
現場に配分を決めさせるのは乱暴なように感じられるかもしれませんが、実は非常に合理的で効果的な方法といえます。
まず、賞与原資を部門に配分する段階で部門業績を織り込むことが可能です。
それによって、個人業績だけではなく部門全体の業績を向上しようとするインセンティブを高めることができます。
さらに、賞与原資を個人に配分する段階では、部門業績に対する貢献度を判断すればよいため、全社一律で行うよりも具体的な検討ができます。
部門業績に対する貢献度を判断するためには、何が自部門にとって評価されるべき成果かが明確になっていなければなりません。
そのためには、目標設定が重要になります。目標設定段階において、自部門の戦略は何か、何が今期のプライオリティかが十分に話し合われていなければ、賞与決定の段階での尺度が曖昧になってしまうため、しっかりとした目標設定の検討が促されます。
部門の原資を個人に配分する段階でレーティングを用いるという考え方もあるかもしれませんが、相対評価によって正規分布させる方法は望ましくありません。
なぜなら、個人のパフォーマンスはもともと正規分布しないため、無理に正規分布させることは現実を歪めてしまうからです。
それよりも、貢献度の高かった人に多くを配分し、それ以外はあまり細かな差を付けないといったやり方の方が、動機付けとしても効果的でしょう。
以上のように、等級と報酬の決定に当たってレーティングは必要がありません。
皆さんの会社でも従来の方法に縛られず、本来の目的に立ち返って望ましい方法を検討されることをお薦めします。