企業におけるこれまでの人事のスタンスは、「アジャイル」(機敏、俊敏)とは真逆でした。
例えば、評価制度の刷新を行おうとすると、設計段階で1年を要し、その後の社内調整に1年をかけ、やっと3年目に導入するといったスピード感が普通でした。
評価制度の導入にはそれほど時間と手間がかかるので、いったん導入したら数年間は手直しをせず、10年以上使い続けている企業も少なくないと思われます。
その結果、企業の人事にはスピードを犠牲にしてでも公平性の担保やリスク回避を重視しようとする価値観が根強く残っています。
6~7割程度の完成度で導入して運用しながら改良していくという発想は乏しく、抜け漏れがないことを慎重に確認してから本番導入するという仕事の進め方が固定化しています。
これはまさに、「ウォーターフォール型」そのものです。
しかし、ビジネス自体がアジャイル化していく状況において、従来のスタンスを維持したままでは、人事がビジネスの変化に対するストッパーになってしまう恐れがあります。
従業員の意識や行動が変わらなければ、ビジネスは変わることができないからであり、人事のスタンスが従業員の意識や行動に大きな影響を及ぼすからです。
そのため、これからの時代においては、人事こそアジャイルな仕事の進め方を率先すべき立場にあります。
「人事が具体的に決めてくれないから現場は動けない」といった言い訳が通用する間は、ビジネス自体も変わることができません。
現場の主体性や自律性を高めるために、最初に人事から変わる必要があるのです。