キャリア自律とは?メリット・デメリット、実施時のポイント、企業事例もご紹介!

2024年12月20日|カテゴリー「人材育成コラム
キャリア自律とは?
働き手の人材不足が深刻化している日本社会では、企業に社員の生産性を向上させる取り組みが求められています。最近では、主体的に仕事を行う社員の育成方法として「キャリア自律」の促進が注目されるようになってきました。現に、ここ数年で社員のキャリア自律を支援する企業も増えてきており、日本社会全体が社員のキャリア自律を支援するメリットに気付きつつあります。

そこで今回は、キャリア自律のメリット・デメリット、実施時のポイントからキャリア自律に取り組む企業事例をご紹介します。

キャリア自律とは

キャリア自律とは?
キャリア自律とは、社員ひとりひとりが自身のキャリアについて検討し、成長を重ねて切り開いていこうとする考え方です。米国のキャリア・アクション・センターでは「変化する環境において自身のキャリア構築と学習に継続的かつ、自主的に取り組むこと」と定義されています。

日本では長く企業主導型のキャリア形成が一般的に行われてきました。しかし、パターン化されたキャリアや自主性のない研修参加や仕事への取り組み姿勢は、組織に依存した雇用形態といった捉え方もできます。社員自身が、キャリアについて主体的に考え、仕事を通じて成長することが、終身雇用制度が崩壊した現代に最も適したキャリア形成の考え方といえます。

キャリア自律の歴史

キャリア自律は、1980年代のアメリカで起こった経営不況がきっかけで生まれました。当時、企業のリストラが相次ぎ、雇用の流動化が進むようになりました。結果として、組織に依存するのではなく、自らが主体的にキャリアを形成しようというキャリア自律の考えが必然的に生まれ、広がっていくこととなったのです。最近では、日本でもキャリアを通じて複数の会社を渡り歩く考え方が一般的になりつつあります。

自律と自律の違い

「じりつ」には、「自律」と「自立」の2パターンがありますが、以下のような違いがあります。
自分以外の外部的な助けを借りることなく、自分の力のみで物事を行っている状況のことです。経済的な自立や自分のみで仕事をこなす能力など、他者からの支援を受けることなく独立していることを指します。

自らの行動や将来を、他者ではなく自分自身の意思によって決めることを意味します。自分の意思を持って主体的に物事に取り組むため、「キャリア自律」ではこちらの漢字を使います。

キャリア自律が注目される背景

キャリア自律が注目されている背景には、複数の要因があります。

コロナ化を経て、リモートワークと呼ばれる在宅勤務が一般的になりました。また、社会的に働き改革を推奨する流れもあり、仕事とプライベートの両立や勤務時間を選べるフレックス制を導入する企業が増えてきています。柔軟な働き方を採用することで、社員の仕事へのモチベーションを向上させ、成果を出させようという狙いがあります。働き方の多様化とともに、キャリア自律を意識する風潮が高まるようになったのです。

これまでの日本では終身雇用が一般的な雇用形態であったため、社員は企業によって提示されたキャリアを歩むケースがほとんどでした。しかし、1990年代からのリストラや経営破綻が続き、徐々に成果主義の会社が増えていきました。

ジョブ型雇用の推進が増えてきたこともキャリア自律が注目されるようになった背景の一つです。従来の日本の雇用形態として終身雇用や年功序列といった「メンバーシップ型雇用」が一般的でした。しかし、社員の実績で評価する雇用システム「ジョブ型雇用」が広まったことにより、成果やスキルが人事評価につながるようになりました。社員は自らキャリアを通じた成長とスキルに着目し、行動しなければならなくなったのです。

キャリア自律のメリット

キャリア自律とは?
社員にキャリア自律を促すことは、企業にとっても様々なメリットがあります。ここでは企業にキャリア自律がもたらす4つのポイントについて解説していきます。それぞれ見ていきましょう。

・組織全体の生産性の向上
・エンゲージメントの向上
・優秀な人材の発掘
・社員のスキルアップ

組織全体の生産性の向上

社員のキャリア自律の向上は、社員ひとりひとりのパフォーマンスにも影響します。キャリア自律によって、自主性や生産性の高い社員が増えれば、組織全体としての活性化にもつながります。また、パフォーマンスのよい社員というのは、自主的に組織のビジョンや企業のためにやるべきことを考え主体的に行動することが多いです。人材が限られた中で、生産性の高い組織を作るためにも、社員の積極的な仕事への姿勢は欠かせません。

エンゲージメントの向上

社員のキャリア支援を行うことによって、社員はスキルアップの場を提供してくれる企業に愛着を感じ、エンゲージメントの向上を期待することができます。また、社員を成長させてくれる職場であることが周知されれば、人材を採用する場面でも有利に働きます。社員の仕事に対するやりがいやスキル成長の支援をすることによって、社員にとっても企業にとっても利点になります。

優秀な人材の発掘

キャリア自律は、社員のスキルを向上させる有効な手立てでもあります。社員に自分自身のキャリアについて真剣に考えてもらうことで、新たなスキルを獲得することに前向きになったり、主体的に仕事へ取り組んだりといった社員の増加が期待できます。働き手の減少によって、優秀な人材の獲得が困難になっているからこそ、既存社員の成長が重要になっているのです。社員が自身を客観視し、経験とスキルを積むことができれば、これまでになかった潜在的な能力を伸ばし、優秀な人材の発掘にもつながります。

社員のスキルアップ

キャリア自律の際には、将来的に何をやりたいかなどといったキャリアの方向性を社員に定めてもらいます。自身の目標やゴールがある程度定まれば、自然と現状の自分に足りないスキルや経験がわかり、実現するための努力もしやすくなります。企業が社員のキャリア自律を促せば、社員それぞれのスキルアップにもつながり、企業としての生産性も高まります。

キャリア自律支援時のポイント

キャリア自律とは?
キャリア自律を支援する際に、行うべきポイントをご紹介していきます。ポイントは以下の6つです。

・キャリア研修の実施
・キャリア相談窓口の設置
・1on1ミーティングの実施
・管理職への理解
・副業を許可する
・人事制度での機会提供

キャリア研修の実施

キャリア自律を社員に促す上では、キャリア研修の実施は有効な手段です。キャリア研修を通して自身の現状を客観視し、開発したいスキルや経験を把握します。また、キャリア自律の重要性を理解してもらい、今後のキャリアプランを明確化する、といったこともキャリア研修では実施することが可能です。自分自身でキャリアを切り開いていく自覚を持てば、仕事へのスタンスも変わります。入社や昇進、人事異動といった、節目のタイミングで実施することがおすすめです。

セゾンパーソナルプラスでは、企業のキャリア自律促進に向けたキャリア研修プログラムを豊富にご用意しています。ご興味のある方は、ぜひ一度お問合せください。

キャリア相談窓口の設置

キャリア相談窓口を設置し、キャリアプランについて社員が深く考えられるように支援することも重要です。上司や周囲の先輩社員には言いづらいことや、客観的な意見が欲しい時など、都度キャリア自律に関するアドバイスをもらえる場所があれば、キャリア自律を促すきっかけになります。

1on1ミーティングの実施

社員それぞれのキャリアプランへの考えをヒアリングするために、1on1ミーティングを実施することもキャリア自律を促進させる一つの手段です。上司がうまく話を引き出し、普段話すことのない将来像を知り、キャリア自律について考えを深めることができます。また上司側は、部下の話を聞いた上で、場合によってはキャリアプランの策定に協力することも重要です。

管理職への理解を浸透させる

社員へキャリア自律を促す過程において、上司側の姿勢も欠かせない重要な要素です。部下がスキルを得るための支援は、上司が部下に対する理解を深くしている必要があります。スキルだけでなく、経験や知識、資質、特性など、部下にどんな素質があるのか、どのようなキャリアプランが適正かを上司は正しく把握しなければなりません。管理職自体がロールモデルとなることで、部下や社員への支援を行えるようにします。

副業を許可する

副業を許可することも、キャリア自律を促す有効な手段です。一見、副業を許可することによって社員の離職を促進してしまいそうな印象があります。しかし、反対に副業を禁止することで、社員のスキルアップの機会を奪い、身についたスキルを生かすことができる別の職場への関心を高めることになります。副業での経験を通して得たものを本業の仕事でも活かせることを考えても、企業が積極的に副業を支援することはキャリア自律につながるといえます。

人事制度での機会提供

社内公募の充実化をはじめとした人事制度での機会提供を行うことも、キャリア自律を促します。ジョブローテーションやITスキルといった資格取得で手当を支給するなど、社員が様々な職種やスキル獲得に興味を持ってもらえるような機会を作ることが重要です。

キャリア自律を支援している企業事例

キャリア自律とは?
ここからは、実際にキャリア自律を支援している企業事例を3社ご紹介します。

日清食品ホールディングス

日清食品ホールディングスでは、2017年より公募ポストの年齢制限を廃止することで、社員の成長を促しています。以前までは公募ポストに50歳までという条件を設定していました。しかし、年齢制限の撤廃によって、シニア社員の活躍機会を増やし、仕事へのモチベーション向上・スキルアップを図っています。

富士通株式会社

富士通株式会社では、「すべての社員が魅力的な仕事に挑戦し、常に学び成長し続ける」をキャリア自律の目標に掲げ、2020年4月よりジョブ型雇用の導入を開始しています。従来までの階層別教育ではなく、ラーニングマネジメントシステムを学習環境として提供し、社員のスキルアップ向上を促す環境を整えています。

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社では、キャリア自律を支援するため、リモートワークでもスキルを学べる環境を整備しています。「YJぴあさぽ」と呼ばれる、キャリアコンサルタントに自身のキャリアについて相談できる制度を導入しています。

キャリア自律を支援して組織を活性化しよう

今回は、キャリア自律のメリット・デメリット、実施時のポイントからキャリア自律に取り組む企業事例をご紹介しました。キャリア自律を社員自身が身につけることにより、企業全体の生産性の向上や社員の離職を防ぐといったメリットが生まれます。ぜひ今回ご紹介したキャリア自律の支援実施例を参考に、キャリア自律支援を行い優秀な人材を発掘して組織の活性化を目指しましょう。

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