目標管理型のマネジメントの特徴は、動機付けの方法が極めて外発的であるところにあります。
部下に高い目標を設定させて目標の達成度で評価するという方法は、難しい問題を出して点数が高ければよい成績を付けるという試験勉強の動機付けと似ています。
「高い点数を取ったらご褒美をあげるのでがんばれ」と動機付けるわけですが、がんばりの部分は本人に委ねられています。
厳格な目標管理の手綱を緩めると業績が下がってしまうことを恐れるマネジャーも少なくありませんが、もともとマネジャーが行っているのは入口(目標設定)と出口(達成度による評価)を管理しているだけです。
肝心の途中のプロセスでパフォーマンスを高めていく部分は本人任せになっています。
成果主義人事によって、このような「採点官マインド」がまん延しています。
「目標は上から下すものだ」と公言するマネジャーがいますが、試験を教師が出す(=目標を上から下す)ことは採点官マインドからすると当然の発想です。
また、「モチベーションは自分で上げるものだ」と主張するマネジャーもいます。
これも、採点官が試験中に生徒を励ますことがないのと同様です。
もしかすると、マネジャーが途中のプロセスを支援したら本人の実力が分からなくなることを危惧している人がいるかもしれませんし、あるいは、部下の誰かだけを支援したら不公平になることを心配している人もいる可能性があります。
しかし、それらは全く無意味な心配です。
マネジャーの役割は、そもそも部下の実力を採点することではなく、部下のパフォーマンスを高めることによってチーム全体のパフォーマンスを高めることにあるからです。
目標管理型のマネジメントは、管理しているだけでパフォーマンスの向上を支援していません。
しかし、これからのマネジメントはむしろ一人ひとりのパフォーマンスの向上を支援するものでなければなりません。
マネジャーには「管理者」から「支援者」に役割を変えることが求められているのです。
このことはマネジメントの対象が、これまでの目標管理では扱われてこなかった領域に移っていくことを意味しています。