CRM(顧客管理)、SFA(営業支援)、MA(マーケティングオートメーション)など、多くの企業では営業力強化に向けて、これまでにもさまざまなプロセス改革やIT化に取り組まれてきました。しかし、それらの取り組みと比べて、営業における組織マネジメントのあり方は、10年前、20年前から大きくは変わっていません。
営業における組織マネジメントの現状
ここで組織マネジメントと呼んでいるのは、KPIや営業活動の管理のことではなく、営業組織に属する「人のマネジメント」を指しています。営業担当者に年次や半期で目標を与え、その進捗状況を管理して、達成度で評価することを中心とした組織マネジメントのあり方は、長い間、大きく進歩していないのです。
ところが、これまでの組織マネジメントは時代に合わなくなってきています。しばしば、VUCAと呼ばれるように、変化が激しく、不確実性の高い現在の環境では、もっと機敏なマネジメントが必要とされるからです(注:VUCAはVolatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguityの略)。さらに今回の新型コロナウィルス問題は、VUCAの経営環境をますます進展させたと言えるでしょう。
営業手法が変化しても、やるのは「人」であることに変わりはありません。その「人」に関する課題をマネジメント層に聞いてみると、以下のような不満がしばしば述べられます。
「もっと提案力を高めることが必要だが、自分で考えられる営業担当者が少ない」
「『やりたい』という意欲に欠け、新しいことにチャレンジしようとしない」
「各人がバラバラに動いていて、情報共有や連携が不足している」
「困難があっても最後までやり抜く気概が足りない」
これらの不満は、そもそもマネジメントが十分に機能していないことの表れです。
上から目標を与えて、やらせてばかりしてきたから自分で考える訓練ができていません。何かをやりたいと営業担当者が提案しても、上司に否定されたら新しいことに取り組む意欲も失せてしまいます。個人目標の達成が第一とされる状況では、他人に対して無関心になるのは当然です。また、上司の支えがなければ、困難を乗り越えてやり抜く気力を維持することも難しいことでしょう。
ますます進展するVUCAの環境で業績を高めるには、1人ひとりの営業担当者が「考え」「チャレンジし」「連携して」「やり抜く」営業組織を創ることが必要です。そのために、組織マネジメントのあり方を刷新することが不可欠となります。