「定年延長」~定年の概念が消える日はすぐそこに。今すぐ考えたいシニア活用~【HRMonday Report】

2021年11月22日|カテゴリー「人事制度コラム
「管理職登用」~未来志向への変革~【HRMonday Report】
あなたの会社のシニアは「働きがい」を感じていますか?
第一線で培った経験もネットワークもあるシニアを活用しきれていない会社はダメになる。

今回は、楠田祐氏×松丘啓司氏で人事の最新トレンドをオンライントークライブでお届けする「HRMonday」※より、第24回に解説していた、「定年延長」についてをご紹介いたします。

※人事向けオンライン配信「HRMonday」は現在終了しています

定年の概念がなくなる日も近い

かつては60歳まで思い切り働き、その後は老後をエンジョイするという考えが主流だった日本。
現在は、本人の希望があれば65歳までの雇用が可能となり、さらに2021年の4月からは、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となります。

定年延長の議論は、年金の支給開始年齢を遅らせるため、それまでの間の収入をどうするのかといった年金財政的な話が始まりです。
また年金の問題だけではなく、長寿国でもあり少子化が進んでいる日本にとっては、定年が延長されることにより、労働力を確保できるというメリットもあり、今後は定年という概念そのものがなくなる可能性もあるでしょう。

年金の問題も解決できるし、労働力も確保できるし、メリットばかりなのだから、どんどん定年延長すればいいじゃないか!となりそうですが、実際はそうはならず、多くの企業がこの定年延長の問題に頭を悩ませています。それはなぜなのでしょうか?

やる気レスのシニア社員が増える背景

会社を辞めたとたんに社会との関わりが薄れて鬱になる。
急に時間ができてしまい、何もすることがなくなり家族との揉め事が多くなる。
バリバリに働いてきたシニアが会社を辞めたとたんに、生きがいを失ってしまった。
ひと昔前に、こんな話がお昼のワイドショーで取り上げられていました。

その後、定年延長の流れが進み、60歳を超えても引き続き会社で働くことができるようになりました。
それにより、シニアの多くが、働きがい、やりがいを感じ続け、より生き生きとしたシニアライフを送っている・・・となるはずが、実際にはモチベーションの低い状態で、ただ5年を過ごすといった状況に陥り、会社もその状況に頭を抱えているといったことが、今あちらこちらで起こっています。

このようになった背景には、様々な要因がありますが、よく聞く理由としては、

●再雇用の場合、今までに比べると賃金がかなりダウンしてしまい、自分の価値が下がったと感じてしまう
●サポート業務や出向先での補佐的な仕事に就くことが多くなり、活躍を期待されていないと感じてしまう
●年下の上司とうまく関係性構築できず、居場所がないと感じてしまう
などがあります。

その結果、年金受給までの間、一定の収入を得るためだけに、働きがいを感じることもなく、ただ会社に行くという日々を過ごしているシニアの社員が増えているのです。

会社としての役割を果たしているか?

シニア社員の多くは、長い間、上から与えられた目標を達成することを第一とする、いわゆる会社に対して従属的な働き方をしてきたため、こうなりたいからこの勉強をしよう、今度はこれに挑戦したいからこの経験をしてみよう、と主体的にキャリアを考える習慣ができていません。
なので、いざ年を重ねて、今までとは違う環境、立場で働く必要がでてきたときに、自分で自分のキャリアを考えたり、将来に向けて何か具体的に行動を起こしたりすることが上手くできないことが多々あります。
加えて、上司の方も、自分より年上で経験のあるシニアの部下に対して、~をできるようになりなさい、~をした方がよい、とは言いにくく、結果としてほったらかしになっているという状況も少なくありません。

また定年後のキャリアのためにと、定年が近くなってから急にたくさん本を読んでみたり、中小企業診断士等の公的な資格を取得してみたりといった行動に出る方たちも少なからずいます。
ですが、資格を取ればキャリアが広がるというのは幻想にすぎず、そもそも「~をやりたい」という自分なりのゴールやビジョンがないと、何を勉強すべきかわからず、またそれをどう活用していくべきなのか具体的な行動につながるイメージを持つことができません。

このように、キャリア自律ができていないといった、シニア個人の問題点は多々ありますが、それと同時に企業も、組織の中でシニアが長く、健康に活躍し続けるための取組を工夫していく必要があるでしょう。
以前、役職定年の回でもお話ししましたが、そもそも60歳以上のパフォーマンスや働きがいを向上させるために何をするかについては、企業側もあまり力を入れて検討をしていないのが現実です。

制度のチューニングや、ポジションを作るなど対策はしているものの、若手のケアや中堅の育成の方がプライオリティの高い事項となってしまい、結果として、その場しのぎの対策になってしまっている様子が伺えます。

雇用延長制度を作れば、自然とシニアが生き生きと働きがいを感じて活躍できるわけではないので、40代、50代にもキャリア研修を実施したり、上司が若い人の成長を支援するだけではなく、シニアの活躍をどう支援していくかなどというマネジメントについても考えたり、学ぶ機会を作ることも有効でしょう。

また、自律的に仕事をしてほしい、キャリアを考えて成長してほしいと謳う企業が増えていますが、実際に蓋を開けてみると、自律的に仕事ができないようにする仕組みや制度がまだ残っているという現状もあり、目指したい姿と制度の整合性についても、継続的に検討していく必要があるといえます。

シニアにこそ有効な働き方とは?

シニア社員の多くは、経験やネットワークも持っているので、本来であれば入社したばかりの人たちよりも、はるかにパフォーマンスを発揮できるはずです。
年齢を重ねただけで、給料を減らすのは年齢による差別にもなり、また役職を外れて職務が変わったから報酬を落とすといっても、そもそもの職務が不明確なこともあります。
ジョブ型への検討を進めている企業が最近増えてきていますが、シニアに対してこそ職務主義的な制度を検討することも有効だと考えられます。
役職定年のように、一律で役職を外すというよりも、会社として職務を開発して、職務にあった人にその役割を担ってもらうという運用がこれから必要になってくるのではないでしょうか。

働きがいを感じることができず、収入を得るためだけに仕方なく働くというのは、個人にとっても会社にとってもむしろマイナスとなり、定年延長が進む今後は、企業はますますシニア社員の支援に課題を感じることは間違いありません。

楠田氏は、シニアが生き生きと過ごすために大切なのは、健康である、意欲がある、学習し続ける、行動するという4つであると、自らの体験を語りました。
人生100年時代を楽しく、生き生きと過ごすためにも、一人ひとりのシニアがこの4つを実践し、かつ企業がそれをバックアップできる仕組みをしっかり整えることが、会社の発展のためにも、本当の意味での「定年延長」のメリットを生みだすのではないでしょうか。

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◆株式会社アジャイルHR
松丘啓司
松丘啓司(まつおか・けいじ)
株式会社アジャイルHR 代表取締役社長

1986年 東京大学法学部卒業。アクセンチュア入社

1992年 人と組織の変革を支援するチェンジマネジメントサービスの立ち上げに参画。以後、一貫して人材・組織変革のコンサルティングに従事

1997年 同社パートナー昇進。以後、ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任

2005年 企業の人材・組織変革を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任(現任)

2018年 パフォーマンスマネジメントを支援するスマートフォンアプリ「1on1navi」をリリース後、株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任し、日本企業のパフォーマンスマネジメント変革の支援をミッションとして活動中

著書は多数に上るが、「1on1マネジメント」(2018年)はピープルマネジメントの教科書として多くの企業で活用されている。「人事評価はもういらない」(2016年)は人事だけでなく一般の読者にも広く読まれるベストセラーとなった。

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