「承認」が重要だとしても、今までそのようなカルチャーがない組織で、急に「承認をしてください」といっても、一足飛びに変わることは難しいでしょう。
承認するということは、その人らしい価値観やユニークさを受け入れる、つまり、多様な価値観を受け入れるということでもあります。
そのためには、自分と違う価値観や、組織の方向性に合わない価値観を否定するようなカルチャーでは、相手を承認することは難しいでしょう。
そういった企業は、ダイバーシティ&インクルーションの取組みも並行して、組織カルチャーの変革も行っていく必要があります。
松丘は、すぐにマネジャーが実践できる、「メンバーの自己肯定感」を高める承認の方法として、「否定をしない」ことと「努力を褒める」ことを紹介しました。
■頭ごなしに否定しない
例えばですが、コロナ禍でテレワークが増えたことで、「テレワークは効率的だ」と思う人もいれば、「仕事は顔を突き合わせて一緒にやってこそ成果が出る」と思う人もいます。
それは、その人それぞれの価値観からくる感じ方、考え方の違いであり、どちらが正しい、正しくないということではありません。
若いメンバーが「効率的なのでテレワークで仕事をしたいです」と言った時に、すかさずマネジャーとして「いや、違うだろう。仕事っていうのは・・・」と説教をするのではなく、そういう風に感じる人がいるということを、まずは受け入れることが承認の第一歩です。
自分の価値観が相手に理解されていると感じると、「自分はここにいる価値がある」「自分はここで必要とされている」と自分の居場所を見つけることができ、それが結果としてメンバーの自己肯定感につながっていきます。
■頑張っている「過程」を褒める
頑張っていることを見つけ出して褒めてあげるというのも、自己肯定感を高めるのに効果的な承認の方法です。
頑張っていることを褒めるためには、前提として、マネジャーがチャレンジを促していること、また、メンバーがどういったチャレンジをして、どのように頑張っているのかを把握できている必要があります。
そのためにも頻繁に、メンバーとコミュニケーションを行い、メンバーの行動や活動を理解していなければなりません。
また、「いいセンスをしている」「いい成績を収めた」といった、その人の優秀さや成果ばかりを褒めていると、「優秀じゃないとは思われたくない」「失敗をしたと思われなくない」と、結果だけに目が行ってしまい、保守的なマインドセットになってしまうことがあります。
優秀さや成果をほめることも大切ですが、それ以上に、「この仕事をやってみたいというのは、とてもいいね」といったチャレンジしようとした気持ちや、「こういう工夫は、とてもいいね」等、チャレンジしている過程を褒めてあげることが最も重要です。