「メンバーの承認」【HRMonday Report】

2021年10月19日|カテゴリー「人事制度コラム
「管理職登用」~未来志向への変革~【HRMonday Report】
継続は力なり。頭ごなしに否定しない、頑張っていることを褒める。今すぐ実践できる、メンバーの自己肯定感を高め、主体的にチャレンジする気持ちを芽生えさせる「承認」とは?

今回は、楠田祐氏×松丘啓司氏で人事の最新トレンドをオンライントークライブでお届けする「HRMonday」※より、第23回に解説していた、「タレントレビュー」についてをご紹介いたします。

※人事向けオンライン配信「HRMonday」は現在終了しています

なぜ「承認すること」が大切なのか?

「若い子たちは、ちょっと怒られるとすぐ辞めてしまう」「最近の若者は承認欲求が強いから褒めてあげないとね」。
人事部の方から、そんなお話をお伺いすることがしばしばあります。
昭和の頃まで部下は上司の背中を見て仕事を学ぶもの、失敗をしたら激しく叱責される、といった考えや風景はどこの会社でも見られていました。
ですがその後、社会的にパワハラが問題視されるようになったことに加え、「メンバーの承認」が、その人のパフォーマンス向上につながると様々な研究で明らかになるにつれ、「承認」の大切さがビジネスの世界でも重要視されるようになってきました。

例えば、メンバーの行動や発言に対して、「どうして、そんなこともできないのか?」「余計なことをするな」といった、否定的な発言をマネジャーや周囲が繰り返し続けると、メンバーの自己肯定感が低下してしまいます。
その結果、「自分はダメだ」「何かやってもどうせ叱られる」といった気持ちが芽生え、成長するどころか通常のパフォーマンスですら発揮することが難しくなります。

パフォーマンスマネジメントの世界では、フィードバックの大切さが唱えられていますが、その大前提として、メンバーの存在そのものを承認すること、またそのメンバーの考えや行動を承認することが、マネジャーの役割として重要だと考えられています。

「自分は頑張ればできる」「自分はまだまだ成長できる」という自己効力感やグロースマインドセットを持っていると、エンゲージメントが高まり、その結果、パフォーマンも高まるということが、複数の学術的な研究で証明されています。
スポーツの世界でも同じで、いわゆる体育会的な根性論や、監督の指示が絶対といった考え方よりも、青山学院の駅伝チームに見られるような、主体性とコミュニケーションを大切にし、一人ひとりの努力を引き出すようなアプローチの方が、よいパフォーマンスを導き出すことも分かってきています。

また、VUCAの時代となり、目まぐるしく変化する市場の状況を読みながら、トライ&エラーを繰り返すことでしか成功できない環境では、今まで以上に「失敗から学ぶ」ことが重要になってくるでしょう。
自己肯定感が低い状態にある人は、「エラー」や「できない自分」を受け入れにくくなり、経験学習サイクルが上手く機能しないことに加え、マネジャーからの叱責を恐れて困難を避けるので、失敗を隠したり、そもそも「トライ」することをしなくなったりする傾向があります。
「トライ&エラーから学ぶことで、自分はもっと成長できる」そういったマインドセットで仕事に向かうためにも、ますますこれからは「承認」が重要になってくるでしょう。

まずは「否定しない」ことから始める

「承認」が重要だとしても、今までそのようなカルチャーがない組織で、急に「承認をしてください」といっても、一足飛びに変わることは難しいでしょう。
承認するということは、その人らしい価値観やユニークさを受け入れる、つまり、多様な価値観を受け入れるということでもあります。
そのためには、自分と違う価値観や、組織の方向性に合わない価値観を否定するようなカルチャーでは、相手を承認することは難しいでしょう。
そういった企業は、ダイバーシティ&インクルーションの取組みも並行して、組織カルチャーの変革も行っていく必要があります。

松丘は、すぐにマネジャーが実践できる、「メンバーの自己肯定感」を高める承認の方法として、「否定をしない」ことと「努力を褒める」ことを紹介しました。


■頭ごなしに否定しない

例えばですが、コロナ禍でテレワークが増えたことで、「テレワークは効率的だ」と思う人もいれば、「仕事は顔を突き合わせて一緒にやってこそ成果が出る」と思う人もいます。
それは、その人それぞれの価値観からくる感じ方、考え方の違いであり、どちらが正しい、正しくないということではありません。
若いメンバーが「効率的なのでテレワークで仕事をしたいです」と言った時に、すかさずマネジャーとして「いや、違うだろう。仕事っていうのは・・・」と説教をするのではなく、そういう風に感じる人がいるということを、まずは受け入れることが承認の第一歩です。
自分の価値観が相手に理解されていると感じると、「自分はここにいる価値がある」「自分はここで必要とされている」と自分の居場所を見つけることができ、それが結果としてメンバーの自己肯定感につながっていきます。


■頑張っている「過程」を褒める

頑張っていることを見つけ出して褒めてあげるというのも、自己肯定感を高めるのに効果的な承認の方法です。
頑張っていることを褒めるためには、前提として、マネジャーがチャレンジを促していること、また、メンバーがどういったチャレンジをして、どのように頑張っているのかを把握できている必要があります。
そのためにも頻繁に、メンバーとコミュニケーションを行い、メンバーの行動や活動を理解していなければなりません。
また、「いいセンスをしている」「いい成績を収めた」といった、その人の優秀さや成果ばかりを褒めていると、「優秀じゃないとは思われたくない」「失敗をしたと思われなくない」と、結果だけに目が行ってしまい、保守的なマインドセットになってしまうことがあります。
優秀さや成果をほめることも大切ですが、それ以上に、「この仕事をやってみたいというのは、とてもいいね」といったチャレンジしようとした気持ちや、「こういう工夫は、とてもいいね」等、チャレンジしている過程を褒めてあげることが最も重要です。

小さな取組が大きな改革につながる

自己肯定感が高まり、自分の価値観が相手に認められていると感じると「~をやってみたい」「~を頑張ってみたい」というように、自分の中からチャレンジすることへの意欲がでてくるようになります。
そういった話をすると、皆がやりたいことをやりだしたら組織として成り立たない、わがままを聞くことになってしまう、という声をよく聞きます。

以前もお話ししましたが、会社には組織として目指しているミッションや目標があるので、当然本人の「やりたい」は、組織に貢献するものでなければなりません。
マネジャーには、会社の戦略を理解した上で、組織としての目標と、本人のやりたいという気持ちをうまくリンクさせていく力も必要です。

このように、マネジャーがメンバー一人ひとりの価値観を認め、承認をし、その人の気持ちと会社の方向性をリンクさせて成長を支援できるようになるためには、マネジャーがメンバーのことを深く理解していることが必要です。
そのためには頻繁なコミュニケーションを取る必要があるのですが、1on1を導入してもメンバーの数が多く、進捗管理で話が終わるという声もよく聞きます。

マネジャーが日々の仕事に追われているのには様々な理由がありますが、メンバーに仕事を任せていないことも一因としてあるのではないでしょうか。
業績目標を達成するには、自分で考えて部下に指示する方が早い、進捗の管理をしっかりしていたほうが確実という考えもありますが、それではいつまでたってもメンバーが育たず、その状態から抜け出すことはできません。
そのためにメンバーを育てるには、「承認」することが必要なのです。

一度に変わることが難しいカルチャーの会社では、パイロット部署を選び、そこで「承認」のカルチャーを根付かせる取り組みを小さく始め、成果や業務負荷の検証した上で、少しずつ社内で展開をするといったアプローチを実践するなどをしているところもあります。
一人ひとりのマネジャーが、相手を理解し、承認しようという気持ちを持ち、オンライン・オフラインにこだわらずに日々コミュニケーションを取ることを始めるだけでも、組織は大きく変わってきます。

「うちのカルチャーでは無理」ではなく、まずは小さな取組からでも始めることが、大きな変革への一歩となります。
まずは「いつも頑張っているね」の一言を、メンバーへかけることから始めてみてはどうでしょうか。

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◆株式会社アジャイルHR
松丘啓司
松丘啓司(まつおか・けいじ)
株式会社アジャイルHR 代表取締役社長

1986年 東京大学法学部卒業。アクセンチュア入社

1992年 人と組織の変革を支援するチェンジマネジメントサービスの立ち上げに参画。以後、一貫して人材・組織変革のコンサルティングに従事

1997年 同社パートナー昇進。以後、ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任

2005年 企業の人材・組織変革を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任(現任)

2018年 パフォーマンスマネジメントを支援するスマートフォンアプリ「1on1navi」をリリース後、株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任し、日本企業のパフォーマンスマネジメント変革の支援をミッションとして活動中

著書は多数に上るが、「1on1マネジメント」(2018年)はピープルマネジメントの教科書として多くの企業で活用されている。「人事評価はもういらない」(2016年)は人事だけでなく一般の読者にも広く読まれるベストセラーとなった。

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