「役職定年」~小手先の施策では解決にならない~【HRMonday Report】

2021年5月25日|カテゴリー「さまざまな分野 ,さまざまな分野 ,人事制度コラム
「管理職登用」~未来志向への変革~【HRMonday Report】
役職定年は余生のための準備期間なのか?
60歳、70歳になっても生き生きと働き、組織に貢献できる人材となるためには何が必要か?

今回は、楠田祐氏×松丘啓司氏で人事の最新トレンドをオンライントークライブでお届けする「HRMonday」※より、第19回に解説していた、「役職定年」についてをご紹介いたします。

※人事向けオンライン配信「HRMonday」は現在終了しています

役職定年制度の今

人生100年時代といわれ、昔のように60歳になったら老後をエンジョイするといった考え方は過去のものとなりました。
高齢化による労働力の不足もあり、多くの企業がシニアの活用について検討を進めています。
組織が高齢化しているのだから、そもそもとして定年も役職定年も引き上げてしまえばよいか?というと、そう簡単にはいきません。
楠田氏と松丘はここ最近の企業の取り組みについて、以下のようにポイントをあげました。

●役職定年を廃止する方向で検討している企業が急増
●中年次主義の原因になり得るという理由を挙げる企業が多い
●一方で、ポストの空きを作る必要性が生じることから、大半の企業は廃止を見送っている
●定年そのものを65歳とし、60歳を役職定年に引き上げる企業もある

「何歳になったので終わり」と、年齢で区切る考えである役職定年制度は、年次主義を固定化させる原因になりがちです。その一方で、役職定年を廃止すると、役職をやめてもらう理由やタイミングが難しくなるという側面もあります。

企業によっては、組織の年齢構成を見ながら、55歳役職定年を56歳、57歳と流動的に変更するなどの取り組みをしているところもあります。
しかし、ポスト数や人件費等、定量的な概念だけを軸に「~歳で終わり」と決めることは、果たして得策なのでしょうか?

役職定年のモデルそのものが破綻している

65歳を定年とし、役職定年を60歳に引き上げた場合、定年が延長になってもポストが増えるわけではないので、当然、管理職に昇進する年齢も同時にスライドして上がっていかざるを得ません。
そうなると、40歳で管理職についていたのが、45歳でようやく管理職というように、今まで以上に下がつかえてしまう現象が起きます。

役職定年制度の概念は、労働基準法の管理監督者の考え方がベースにあります。
前回の「管理職登用」の際にも話題に挙がりましたが、これまでの管理職は経営側の立場で従業員を管理することが役割です。

今までは、いずれ「あなたも管理職になれますよ」ということを動機づけにし、仕事を頑張った人、会社に貢献をした人へ高い評価を与え、ご褒美として管理職への登用をすることが一般的でした。
とはいえ、ポストの数は決まっていて、管理職の人数を増やせるわけではないので、一定数を定期的に入れ替えないと下がつかえてしまいます。
高度成長期のように、人口がピラミッドで増えていき、経済も右肩上がりで拡大している時代ではなくなった今、このモデル自体が破綻しているといえるでしょう。

ですが多くの企業は、役職定年を引き上げる、子会社に出向してもらう、アドバイザー的なポジションを用意する、といったように、破綻しかけたモデルの上で、つじつま合わせのように施策を打ち続けてきました。
しかし会社に長期間依存させることは、逆に言えば、従業員自身も会社に依存せざるを得ない状態を作り上げているといえるのではないでしょうか。

年齢の区切りは意味がない

昨年、トヨタの社長が、「自社には偉くなりたい人は沢山いるが、何をやりたいかを持っている人は少ない。次の人事改革では、やりたいことのある人が実現できるように変える」といった旨の発言をしました。

これからは、「~歳になったからそろそろ管理職にさせよう」「~歳になったから役職をおりてもらわなくては」といった型にはまったキャリアではなく、年齢や役職に関わらず、内発的に「自分はこれを実現したい」という思いを持ち、それを実現するために組織に属するという考え方が主流となってくると考えられます。

先述した通り、今までは評価の高い人、会社に貢献をした人を管理職に就けることが一般的でした。
これは、戦国時代に戦(いくさ)で活躍したから領地を増やすといった「ご褒美」に近い感覚といえます。
そのため、貢献や功績をしっかり把握し、不平不満が起きないように評価することに時間を費やしてきました。
ですがここ最近、日本でも少しずつ「次はこういうチャレンジをさせてみてはどうか?」「こんな風に育てていくのはどうか?」といった、人材開発の議論、いわゆるタレントレビューに時間を使おうという傾向が見られるようになってきました。

人材開発会議では、「この人をこんな風に育てたい」というように一人ひとりのキャリアを議論するのですが、その際には会社側の「こうなってほしい」という期待だけではなく、本人のキャリア志向として何をしたいのか、何を成し遂げたいのかをセットで考えることが必要です。
そしてここでいう「キャリア」とは出世する、偉くなるということではなく、「自分はこの組織でこれを実現したい」という内発的な思いのことを指すことを忘れてはいけません。

十数年前から、シニアのキャリア研修を提供していますが、研修の対象者である40代後半から50歳くらいの方たちは、多くが重要なポストにいて一番忙しい時期でもあります。
そのため、今を考えることに精いっぱいで、自分で自分の人生の「これから」を考えていない、また、考えている暇がないといった状況が多くみられます。

役職定年廃止=会社に依存してよいという意味ではなく、組織に残る以上は、自分がどう貢献したいのか、どう関わっていくのかを自分で考えることは、これからますます重要となってくるでしょう。
また、これは決してシニアだけの話ではありません。
「会社の期待」と「自分の思い」を重ね、会社という組織はそれを実現するためのステージである、という考え方を若いうちから訓練しておくことが、60歳、70歳、80歳になっても会社で活躍するために必要となってくるのではないでしょうか。

役職定年を延長する、子会社に出向させる、リストラする。
それらの施策は一時的には効果があるかもしれませんが、人事の戦術でしかありません。
シニアが年齢に関係なく、働きがいをもって組織に貢献できるようには何が必要なのか?人事の視点も変えていく必要があると考えられます。

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ゲストプロフィール

松丘啓司
松丘啓司(まつおか・けいじ)
株式会社アジャイルHR 代表取締役社長

1986年 東京大学法学部卒業。アクセンチュア入社

1992年 人と組織の変革を支援するチェンジマネジメントサービスの立ち上げに参画。以後、一貫して人材・組織変革のコンサルティングに従事

1997年 同社パートナー昇進。以後、ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任

2005年 企業の人材・組織変革を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任(現任)

2018年 パフォーマンスマネジメントを支援するスマートフォンアプリ「1on1navi」をリリース後、株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任し、日本企業のパフォーマンスマネジメント変革の支援をミッションとして活動中

著書は多数に上るが、「1on1マネジメント」(2018年)はピープルマネジメントの教科書として多くの企業で活用されている。「人事評価はもういらない」(2016年)は人事だけでなく一般の読者にも広く読まれるベストセラーとなった。

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