「心理的安全性」~イノベーションは生まれるのか?~【HRMonday Report】

2021年5月18日|カテゴリー「人事制度コラム
「管理職登用」~未来志向への変革~【HRMonday Report】
ここ最近、多くの企業が取り組み始めている「心理的安全」のある組織作り。
心理的安全があれば、組織にイノベーションが生まれ、パフォーマンスは本当に高まるのか?

今回は、楠田祐氏×松丘啓司氏で人事の最新トレンドをオンライントークライブでお届けする「HRMonday」※より、第18回に解説していた、ここ数年で急激に広まった「心理的安全性」=サイコロジカル・セーフティについてをご紹介いたします。

※人事向けオンライン配信「HRMonday」は現在終了しています。

心理的安全性は1960年代からあった概念

「心理的安全(サイコロジカル・セーフティ)」とは、「自分の思ったことを気兼ねなく発言できる組織の雰囲気」(出典:松丘啓司著「1on1マネジメント」)のことで、学術的には半世紀ほど前から研究が続けられている概念です。
1965年にマサチューセッツ工科大学教授の、リーダーシップの巨匠ともいわれる、エドガー・シャイン教授とウォレン・ベニス教授が提唱したことが始まりとされています。

研究の歴史そのものは古いのですが、「心理的安全性」という概念が、ここまで日本でも知られ、多くの企業が「心理的安全性」のある組織作りに取り組み始めたのは、Google社が2015年に発表した、高いパフォーマンスを出すチームが持つ共通点を導き出す「プロジェクト・アリストテレス」の報告がきっかけでした。
このプロジェクトは、チームのパフォーマンスと関係性が高い要素を分析・検証するという取り組みなのですが、その結果、「高い成果を出すチーム=心理的安全性が高い」という結論が導きだされたのです。
次々にイノベーションを生み出しているGoogle社の発表ということもあり、その発表以降、ビジネスの世界でも組織における「心理的安全性」が重視されるようになりました。

日本の会社組織には「心理的安全」はあるか?

それでは、今の日本の会社組織は心理的安全性が高いといえるのでしょうか?
楠田氏と松丘が、お客様からよく聞く、「心理的安全」のない組織のエピソードとして、以下のような例をあげました。

●新たな挑戦をしようと思っても、MBOを優先するように言われる
●会議の場で、立場が上の人が話さないと誰も話をしない
●上長が、部下の発言の真意や背景を理解できず、発言を否定しがち
●上司の考えや発言を本当は理解していなくても、評価がさがる、叱られるのが怖く「理解したふり」をする
●本人の働きがいや、仕事・異動の目的など、キャリアに関わることについて、上司と部下の間で話がされない
●家庭からアクセスするオンラインミーティングでもマナーや体裁を求める

ニューノーマル時代、テレワークが当たり前となり、仕事と私生活の境目がなくなってきた今、「家庭を優先してもいいよ」「無理しないで大丈夫だよ」と、個々の事情を理解し、優先することを受け入れる環境も、今後は重要視されてくると考えられています。

心理的安全性が高ければ、イノベーションは起こるのか?

Google社の目覚ましい発展もあり、「心理的安全が高い=イノベーションが起こりやすい」と捉えている方も少なくありません。
それでは、本当に心理的安全が高ければ、イノベーションは自然と起こるものなのでしょうか?

まず、イノベーションが起こる・起こらない以前に、心理的安全がないと、情報が隠蔽されることにより、大きな失敗をするリスクが高まる可能性があります。
心理的安全のある組織では、立場やバックグラウンドに関係なく、言いたいことを言い合えるだけでなく、

●「小さな失敗はどんどんやっていい」という失敗を許容する
●違った価値観、意見を否定することなく、耳を傾ける

といった、多様性の尊重失敗を許容する文化があります。

言いたいことを言い合えるだけではなく、言ったことを尊重すること、また、言ったことを実行して失敗してもそれが許される文化があってこそ、従業員は新たなチャレンジができ、結果としてイノベーションが生まれていると考えられます。

また、「うちの組織はイノベーションが起きない」という声がよく聞かれますが、変革ではなく改善的な小さなイノベーションは日常でも頻繁にあり、「こうやったらどうか?」と日々の仕事を工夫する行動は多くの従業員がしています。
そういった小さな工夫が積み重なった時、たとえ一つひとつは小さくても、結果として大きなイノベーションとなることを、上長は理解しておくことが必要です。

また、そういった改革・改善のアイデアや思いを、上長が拾い上げ、認めることで、「もっと頑張りたい」「もっと挑戦してみよう」という、気持ちが生まれ、結果として組織へのエンゲージメントも深まります。

心理的安全のある組織になるには、部品だけを取り換えても意味がない

これさえやれば心理的安全が担保される、という取り組みはありません。
来年度に向けて、様々な企業様と取り組みを始めていますが、最初は多くの方たちが、評価制度、報酬制度、等級制度、といった「制度」単位で改革を進める発想をしていました。

制度の改革はもちろん大切ではありますが、それぞれは1つの部品でしかないということを忘れてはいけません。
制度の1つや2つを切り取って変更をしても、目標設定、1on1、キャリア開発支援といったパフォーマンスマネジメントのやり方全体を変えていかなければ、組織文化は変わっていきません。

まずは経営トップが「こういう会社にしたい」「こういう組織を作っていきたい」という思いを描くことが必要です。
それを人事的にどういうデザインにするのかを、経営のトップと一緒に考えていくということが人事の役割なのではないでしょうか?
GAFAに始まり、高い市場価値を生み出している企業は、人事施策にとても力をいれています。
ニューノーマル時代、人事の役割、あり方も新しくなってきているのではないでしょうか?

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ゲストプロフィール

松丘啓司
松丘啓司(まつおか・けいじ)
株式会社アジャイルHR 代表取締役社長

1986年 東京大学法学部卒業。アクセンチュア入社

1992年 人と組織の変革を支援するチェンジマネジメントサービスの立ち上げに参画。以後、一貫して人材・組織変革のコンサルティングに従事

1997年 同社パートナー昇進。以後、ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任

2005年 企業の人材・組織変革を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任(現任)

2018年 パフォーマンスマネジメントを支援するスマートフォンアプリ「1on1navi」をリリース後、株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任し、日本企業のパフォーマンスマネジメント変革の支援をミッションとして活動中

著書は多数に上るが、「1on1マネジメント」(2018年)はピープルマネジメントの教科書として多くの企業で活用されている。「人事評価はもういらない」(2016年)は人事だけでなく一般の読者にも広く読まれるベストセラーとなった。

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