【さまざまな分野】第31回 『OKRと1on1 は車の両輪~ちぐはぐなマネジメントを解消せよ(その4)』 Author:松丘 啓司

2020年9月29日|カテゴリー「さまざまな分野 ,さまざまな分野
こちらのコラムは「これからのパフォーマンスマネジメント」をテーマに全6回の連載でお届けいたします。今回は4回目です。
※パフォーマンスマネジメント…目標管理制度や評価制度に基づいて、個人と組織のパフォーマンス向上を促進するマネジメントのこと

<前回の記事>第29回 『組織が先か、目標が先か~OKRのコンセプト(その3)』
OKRのコンセプト_12
OKRは簡単には到達できない野心的な目標です。
そのため、部下に実行を丸投げしても、うまくいくはずがありません。

目標が高いからこそ、上司は部下とともに、ゴールに向けて階段を上って行く過程を1on1で支援し続ける必要があります。

目標設定とマネジメントのタイプ分類

1on1
昨今、上司と部下の頻繁な対話(1on1:ワン オン ワン)を導入する会社が増えています。

期初と中間と期末の3回だけの面談では部下の成長とパフォーマンス向上につながらないことから、より頻繁に1on1の面談を行って、部下を継続的に支援していく必要があるからです。

しかし、従来の目標管理制度(MBO)をそのままにして1on1を導入しても、思ったような効果を出すのが容易ではありません。
そもそも、MBOのベースとなる思想と1on1の思想が大きく異なるからです。

目標によるマネジメントのパターンは、目標設定のタイプとマネジメントのタイプによって以下のように分類されます。
【目標設定のタイプ】

(1)主体的目標
本人が主体的に「目指したい」と願うゴール。OKRはこのタイプです。

(2)受動的目標
本人の意志よりも、「やるべき」と上から下りてくるゴール。
従来の目標管理制度における目標設定はほとんどがこのタイプです。


【マネジメントのタイプ】

(1)内発的動機付け
仕事を通じた働きがいや成長実感が継続的に得られるように、個々人に応じて直接的に働きかけるマネジメントです。
1on1はこのタイプであるべきです。

(2)外発的動機付け
会社が決めた評価基準に基づいて成績を付けたり、金銭的報酬や昇進などの外形的なインセンティブによって動機付けるマネジメントです。
これまでの目標管理制度は、大部分がこの考え方に基づいています。
上記の組み合わせは理論上では2×2の4パターンがありますが、ちぐはぐな組み合わせだと十分な効果が得られません。

効果を生み出すシナリオを描く

仕事
目標設定OKRのように「(1)主体的目標」(しかも高い目標)で、マネジメントが「(2)外発的動機付け」の場合をイメージしてみてください。

外発的動機付け重視のマネジメントでは、個々人に対する上司からの個別支援が少なく、働きがいや成長実感は自分で見いだしていかなければならないため孤独です。

その結果、高い目標を追い続けることへの意欲を持続できず、力尽きてしまう人が数多く現れるでしょう。

結局、OKRなど無駄だという声が高まって、元の目標管理制度に戻ってしまうことは容易に想像できます。
上司と部下
逆に目標設定が「(2)受動的目標」で、マネジメントが「(1)内発的動機付け」の場合はどうでしょうか。
これは言ってみれば、「上から与えられた目標であっても、その中で仕事の楽しみや意義を見いだしていこう」とする状況を表しています。

この組み合わせの方が、「(1)主体的目標」×「(2)外発的動機付け」のパターンよりも、まだ何とかなりそうです。

けれども、「上から目標を与えて、そこに意味を見いださせる」マネジメントは容易でないため、成果を出すためには従来のような外発的動機付けの方が手っ取り早いと考える上司が出てきても不思議ではありません。


現在、1on1の導入を進めている企業の中で、この「(2)受動的目標」×「(1)内発的動機付け」のパターンにチャレンジしている会社も少なくありません。
その努力が無駄であるとは言いませんが、研修などに投入するコストの割に効果を出しにくいため、けっして効率がよいとはいえません。

目標設定のタイプとマネジメントのタイプを同時に変更するのは変革プロジェクトの難易度が高いので、まず1on1の導入から始めるというアプローチも十分にあり得るでしょう。
ただ、その場合には、次の段階として目標設定の見直しに取り組むことを視野に入れたシナリオを描き、経営層の理解を得ておくことが重要です。

第27回 『上から目標を与えてはいけない理由~OKRのコンセプト(その1)』 Author:松丘 啓司

第28回 『個人目標を公開することによる効果~OKRコンセプト(その2)』 Author:松丘 啓司

第29回 『組織が先か、目標が先か~OKRのコンセプト(その3)』 Author:松丘 啓司


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◆1on1navi

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◆株式会社アジャイルHR
松丘啓司
松丘啓司(まつおか・けいじ)
株式会社アジャイルHR 代表取締役社長

1986年 東京大学法学部卒業。アクセンチュア入社

1992年 人と組織の変革を支援するチェンジマネジメントサービスの立ち上げに参画。以後、一貫して人材・組織変革のコンサルティングに従事

1997年 同社パートナー昇進。以後、ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任

2005年 企業の人材・組織変革を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任(現任)

2018年 パフォーマンスマネジメントを支援するスマートフォンアプリ「1on1navi」をリリース後、株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任し、日本企業のパフォーマンスマネジメント変革の支援をミッションとして活動中

著書は多数に上るが、「1on1マネジメント」(2018年)はピープルマネジメントの教科書として多くの企業で活用されている。「人事評価はもういらない」(2016年)は人事だけでなく一般の読者にも広く読まれるベストセラーとなった。

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