【さまざまな分野】第23回 『営業組織力を革新する「OKR+1on1マネジメント」』 Author:松丘 啓司

2020年8月25日|カテゴリー「さまざまな分野 ,さまざまな分野
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 CRM(顧客管理)、SFA(営業支援)、MA(マーケティングオートメーション)など、多くの企業では営業力強化に向けて、これまでにもさまざまなプロセス改革やIT化に取り組まれてきました。しかし、それらの取り組みと比べて、営業における組織マネジメントのあり方は、10年前、20年前から大きくは変わっていません。

 
営業における組織マネジメントの現状

 ここで組織マネジメントと呼んでいるのは、KPIや営業活動の管理のことではなく、営業組織に属する「人のマネジメント」を指しています。営業担当者に年次や半期で目標を与え、その進捗状況を管理して、達成度で評価することを中心とした組織マネジメントのあり方は、長い間、大きく進歩していないのです。

 ところが、これまでの組織マネジメントは時代に合わなくなってきています。しばしば、VUCAと呼ばれるように、変化が激しく、不確実性の高い現在の環境では、もっと機敏なマネジメントが必要とされるからです(注:VUCAはVolatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguityの略)。さらに今回の新型コロナウィルス問題は、VUCAの経営環境をますます進展させたと言えるでしょう。

 営業手法が変化しても、やるのは「人」であることに変わりはありません。その「人」に関する課題をマネジメント層に聞いてみると、以下のような不満がしばしば述べられます。

「もっと提案力を高めることが必要だが、自分で考えられる営業担当者が少ない」
「『やりたい』という意欲に欠け、新しいことにチャレンジしようとしない」
「各人がバラバラに動いていて、情報共有や連携が不足している」
「困難があっても最後までやり抜く気概が足りない」
 
これらの不満は、そもそもマネジメントが十分に機能していないことの表れです。

 上から目標を与えて、やらせてばかりしてきたから自分で考える訓練ができていません。何かをやりたいと営業担当者が提案しても、上司に否定されたら新しいことに取り組む意欲も失せてしまいます。個人目標の達成が第一とされる状況では、他人に対して無関心になるのは当然です。また、上司の支えがなければ、困難を乗り越えてやり抜く気力を維持することも難しいことでしょう。

 ますます進展するVUCAの環境で業績を高めるには、1人ひとりの営業担当者が「考え」「チャレンジし」「連携して」「やり抜く」営業組織を創ることが必要です。そのために、組織マネジメントのあり方を刷新することが不可欠となります。

1on1navi 目指す組織の状態

OKR+1on1マネジメントとは

 OKRと1on1(ワンオンワン)を組み合わせた営業マネジメント方法によって、営業組織力の飛躍的な向上が可能になります。OKRと1on1はどちらも変化が激しいビジネス環境に適したマネジメント手法で、OKRで環境変化に応じて目標を見直しながら、1on1で上司と部下が頻繁に対話を繰り返してマネジメントサイクルを回します。


①OKRによる目標設定

 OKRはObjectives and Key Resultsの略です。40年以上前にインテルで開発され、グーグルが初期の頃から採用している目標管理手法で、短サイクルで目標を見直すこと以外に次のような特徴があります。


■構造化

 OKRでは、目標をObjective(O:到達したいゴール)とKey Result(KR:ゴール到達を測定するための指標)に構造化して設定します。KRはOを実現するための成功要因ともいえるため、このように構造化することによって、目標を達成するための戦略やシナリオを同時に考えることが必要になります。また、VUCAの環境では頭で考えた戦略やシナリオどおりになるとは限らないので、実行して軌道修正を繰り返す「トライ&エラー」が不可欠となります。


■主体性重視

 OKRでは目標を組織の上から下に与えるのではなく、1人ひとりが「自分は何によって貢献したいのか」と考える主体的な意志を重視します。どの上位OKRの達成に貢献するために、自分は何をOKRとしたいかを考えるため、OKR設定のプロセスは「トップダウンとボトムアップの融合」といわれます。OKRはトップの目標を達成するために、上から落とすのではなく、個々人の主体性を引き出しながら組織全体を方向づけるマネジメント手法なのです。

1on1navi OKRツリーのイメージ

■チャレンジの奨励

 OKRでは簡単には達成できない高い目標を設定することが奨励されます。その代わりに、目標の達成度を人事評価に用いないことが原則です。従来の予算管理のように確実に読める数字だけを積み上げるのでは、これまでと同様の行動が繰り返されるだけになってしまいます。OKRには、失敗を恐れず未知の領域に踏み出したり、他者と連携してより大きなターゲットに挑んだりすることを促進するねらいがあります。


■オープン化

 各人のOKRとその進捗状況は広く公開することが原則です。誰が何を目標に仕事をしているかがオープンになることによって、自分と類似の目標を設定している人や、自分の目標達成に影響する人がわかるため、組織を越えた連携がしやすくなります。OKRを用いたマネジメントでは、自部署だけの部分最適に陥るのではなく、組織横断的なコラボレーションを生み出すことが奨励されます。

1on1navi OKRの基本思想と主な効果

②1on1を通じたマネジメント
 
1on1は従来の目標管理面談のように、上司と部下が半年に1度面談するのではなく、より頻繁に(最低でも月に1度)、対話を繰り返すマネジメント方法です。面談の目的は、メンバー1人ひとりの「働きがい」を高めることによって、本人の成長と業績の向上を「支援」することにあります。具体的には、1on1を通じて次の4つの支援を行います。
 

■部下理解・承認

 1on1の場では、上司の意見を一方的に伝えるのではなく、上司の方に部下を理解することが求められます。「自分のことを理解してもらっている」「自分の存在が認められている」と感じられることは、「自己肯定感」を高めるために必須の要件です。自己肯定感が持てるからこそ、「やればできる」とあきらめずに努力を継続することが可能になります。


■目標設定支援

 目標(OKR)は本人が主体的に設定するものですが、「自分のOKRは組織の期待に応えているだろうか」「どれくらいストレッチしたレベルを目指すことが適切か」といったことを確認するため、上司と相談しながらOKRを決めていくことが効果的です。また、環境が変わったり、やってみたら当初の想定と違ったりした場合に、OKRを見直した方がよいかどうか悩む場合にも上司が相談相手になります(ただし、あくまでも決めるのは本人です)。


■経験学習支援

 仕事の経験から多くを学び、成長実感を持てることによって働きがいは高まります。しかし、多忙な日々の中で自分の経験を振り返って何を学んだかを考えることは容易ではありません。そのため、上司が対話における質問やフィードバックを通じて、部下の振り返りを手伝うことが効果的です。また、部下がさらに良質な経験ができるように、機会提供などの支援を行います。


■キャリア開発支援

 今の仕事を通じて自分の将来の可能性が広がると感じられることは、働きがいを高めるために重要な要素です。そのため1on1の場では、目の前の仕事に関することだけでなく、将来、どうなっていたいか、何をやっていたいかについて話し合うことが必要です。上司にとっても部下のキャリアビジョンを理解することによって、その実現のために何を支援すればよいかがクリアになります。


1on1による支援内容とねらい

OKR+1on1マネジメントの導入に向けて

 OKR+1on1マネジメントによる営業組織力の革新は一朝一夕にはできません。組織マネジメントを変革するというトップの強い決意のもと、入念な導入準備と定着化に向けた取り組みが不可欠です。また、新たなマネジメントが軌道に乗るまでの最初の1年間は、辛抱強く運用を継続しなければなりません。導入準備と定着化のためには、以下の3つのステップが必要になります。
 

①デザイン

■運用ガイドライン

 OKRと1on1を用いたマネジメントの運用プロセスを設計します。年次、4半期、月次等での運営サイクルの設計、トップからメンバーまでのOKRツリー階層の深さ、1人当たりのOKR設定数、組織を越えたOKR設定に関する考え方など、運用に必要なガイドラインを策定します。


■トップレベルのOKR

 最初にトップレベルのOKRを設定します。従業員のOKRはトップのOKRの実現に向けて方向づけられることから、どこを目指すかが明確にされていなければなりません。トップレベルのOKR策定に当たっては、従来の予算管理の固定観念を取り払ってトップ層において十分に議論を繰り返すことが必要です。

 
②トレーニング

■OKRワークショップ

OKRを最初に始める際には、当然のことながら既存のOKRツリーは存在しません。そのため初回のOKR設定は、従業員全員でOKRツリーを作り上げる作業になります。この段階でOKR設定を個人に任せてしまっては、品質がバラバラになってしまうため、一定人数ごとにOKRワークショップを開催して、参加者どうしで相談しながら実地でOKRを設定していくことが必要になります。


■1on1研修

 1on1によるマネジメントは従来の目標管理とは異なるため、特に上司に対するトレーニングが必要とされます。研修を1度行っただけでマネジメントはなかなか上達しないため、1on1研修はできれば期間を空けて繰り返し実施することが望まれます。また、メンバーに対しても1on1の目的や1on1の場の活用方法について、理解を深める機会を提供することが必要です。


③IT導入

OKR+1on1マネジメントを組織に定着させるために、ITツールを活用することが効果的です。特に大きな組織になればなるほど、OKRの運用にはITツールが不可欠になります。このITツールはクラウドサービスで簡単に利用できるものでなければなりません。

ITツールの選定に当たっては、システム部門の専門家の参画が望まれます。なぜなら、OKRや1on1に対応するとうたわれていながら、実際は求める要件を満たしていないシステムが少なくないからです。そのため、単に表面的な機能の有無を判定するのではなく、設計思想やデータ構造まで掘り下げて確認できる専門家の視点が不可欠です。

OKR+1on1マネジメントの導入ステップ

「1on1navi」は、上述したようなOKRと1on1の運用に特化した支援システムです。
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◆1on1navi

株式会社アジャイルHRは日本企業のパフォーマンスマネジメントの変革をミッションに活動しています。クラウドサービス「1on1navi」を中心に、1on1やOKRの研修とコンサルティングサービスを併せてご提供しています。


◆株式会社アジャイルHR
松丘啓司
松丘啓司(まつおか・けいじ)
株式会社アジャイルHR 代表取締役社長

1986年 東京大学法学部卒業。アクセンチュア入社

1992年 人と組織の変革を支援するチェンジマネジメントサービスの立ち上げに参画。以後、一貫して人材・組織変革のコンサルティングに従事

1997年 同社パートナー昇進。以後、ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任

2005年 企業の人材・組織変革を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任(現任)

2018年 パフォーマンスマネジメントを支援するスマートフォンアプリ「1on1navi」をリリース後、株式会社アジャイルHRを設立し代表取締役に就任し、日本企業のパフォーマンスマネジメント変革の支援をミッションとして活動中

著書は多数に上るが、「1on1マネジメント」(2018年)はピープルマネジメントの教科書として多くの企業で活用されている。「人事評価はもういらない」(2016年)は人事だけでなく一般の読者にも広く読まれるベストセラーとなった。

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