企業におけるハラスメント対策・防止法|発生後の対処法や事例も紹介

2021年10月11日|カテゴリー「人材育成コラム
最近ではハラスメント問題が世間に広く認知されたため、企業側の対策も重視され始めました。 しかし具体的に何をすればよいのかわからず対策が進んでいない企業も多いでしょう。 

本記事ではハラスメントの原因から具体的な対策、そして起こった際の対処法や対策の事例などについて解説します。 
本記事を見て自社に合った対策方法を検討しつつ、実際に行われた対策事例もぜひ参考にしてください。

1. ハラスメントとは?種類についても紹介

何となくわかっていても、実は人によって認識が違うことが多いのがハラスメントです。
認識の違いから無意識のうちにハラスメントを行なっているケースも少なくありません。

ハラスメントとは?

ハラスメントの定義とは端的に説明すると、行動や言動による嫌がらせです。
一口にハラスメントといってもさまざまな種類がありますが、相手を不快にさせたり不利益を与えたりする点はすべてのハラスメントに共通しています。

ハラスメントは職場や家庭といったさまざまなところで発生し、種類によって対象者が異なります。

企業ハラスメントの種類

企業で起こりうるハラスメントについて具体例を紹介します。ハラスメントの種類は多いため、代表的なものをまとめて解説します。


・セクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」)
→行動・言動などによる性的な嫌がらせ

・パワーハラスメント(以下、「パワハラ」)
→職場などでの優位的立場を利用した肉体的・精神的な嫌がらせ

・モラルハラスメント(以下、「モラハラ」)
→無視・暴言などの手段により相手の尊厳を踏みにじる嫌がらせ

・マタニティハラスメント(以下、「マタハラ」)
→妊娠や育児をする人に対する、不利益な取り扱いや言動による精神的な嫌がらせ

・ジェンダーハラスメント(以下、「ジェンハラ」)
→性別による偏見をもとにした嫌がらせ

・パーソナルハラスメント(以下、「パーハラ」)
→容姿や人格など個人的な部分に対し非難・誹謗中傷する嫌がらせ

・事後ハラスメント(以下、「事後ハラ」)
→ハラスメント調査後に回答内容次第で不利益な取り扱いをする嫌がらせ

・ロジカルハラスメント(以下、「ロジハラ」)
→正論で相手を追い詰める嫌がらせ

・アカデミックハラスメント(以下、「アカハラ」)
→大学教員が権力を利用して別の教員あるいは学生に対し、不当に不利益を与える行為


性的な嫌がらせをするセクハラや上下関係を利用するパワハラなどは知っている方も多いでしょう。
また言動・態度で攻撃するモラハラ、妊娠・出産時に嫌がらせをするマタハラも比較的有名です。

そのほか個人の外見・人格を否定するパーハラ、ハラスメント調査後に嫌がらせする事後ハラ、論理で相手を追い詰めるロジハラなどもあります。


2. ハラスメントが起こる原因とは?

企業におけるハラスメント対策・防止法
ハラスメントの発生には何かしらの原因があります。ここではハラスメントが起こる主な原因を3つ解説します。


原因1.職場内のコミュニケーション不足

ハラスメントはコミュニケーション不足によるすれ違いから生じることが多いです。

コミュニケーション不足によるハラスメントが起こるケースとして、例えば上司が部下の目線を考えずに自分の考えを押し付けたり、仕事の指示を出したつもりが不明確であったためきちんと伝わっていなかったりといった場合などが考えられます。
コミュニケーション不足は個人だけの問題ではなく、企業風土が原因である場合も多いでしょう。


原因2.ハラスメントする側とされる側の意識の差

上司と部下の間に意識の差があり、その意識の差が原因でハラスメントが生じることもあります。

例えば上司の側は指導の一環として部下を怒ったつもりが、部下にはパワハラであると受け取られるような場合です。
確かにミスをした部下を叱ること自体は上司の役割でしょう。
しかし部下自身に失敗を気付かせるために叱ったつもりが、ただ感情任せに怒鳴りつけているようにしか見えなければ、それはパワハラになり得ます。

このようにハラスメントは必ずしも意図的に行なわれるわけではなく、加害者側は無意識であることもあります。

原因3.雇用形態の多様化による職場の環境

雇用形態の多様化により年齢・価値観・仕事に対する考え方が異なる従業員が同じ職場で仕事をするようになったことでハラスメントが発生してしまう場合もあります。

なぜなら価値観の近い相手に対して通じた話も、価値観の違う相手に対してはうまく伝わらないことがあり、同じスタンスではコミュニケーションがうまく取れないからです。
例えば育児中で時短勤務の従業員に対しての理解がないと、労働時間が短いことへ嫌味をいうといったマタハラが起こります。


3. ハラスメント防止のための対策

ハラスメント対策と防止方法!被害者・加害者を出さないためにできること
ハラスメント防止のための対策はたくさんありますが、ここでは8つの対策法をまとめました。

対策1.社内の現状を把握する

まずは社内におけるハラスメントの現状を知り、どのような問題や課題があるのか考えましょう。

現状把握の方法としては社内アンケートなどによる調査が挙げられます。
アンケートは必ず匿名にし、事後ハラを防ぎましょう。

対策2.対策の方針を明確に定める

ハラスメントを抑止するために、対策の方針を明確に定めて周知・啓発しましょう。
会社全体にハラスメントを抑止する効果があります。

例えばハラスメントに該当する事例を記載したガイドラインを作る、ハラスメントをした場合のペナルティについて公表するなどの方法が考えられます。


対策3.ハラスメントへの対処を就業規則などに明記する

ハラスメントを排除する会社の姿勢を示す一環として、就業規則などにハラスメントに対処する際のルールを明記しましょう。
ルールが明確に定まっていれば緊張感が生まれるため抑止効果が期待できます。

ただし就業規則などに明記しても一部の従業員には認知されない可能性があります。

対策4.定期的に研修を行う

企業が実施しているハラスメント関係のセミナーを利用して、管理職に対して定期的に研修を行いましょう。

研修を実施し管理職が正しい知識を身に付ければ、ハラスメントに対する意識を高めることができます。

対策5.相談窓口を設置する

ハラスメントの早期発見や被害に遭った従業員のサポートを担う場所として相談窓口を設置しましょう。

被害を受けた従業員の休職・退職や職場内の不和など、ハラスメントで生じる悪影響を和らげることができます。
窓口の設置は、会社としてハラスメント防止に努めている姿勢を示すこともできるので抑止力にもなります。

相談窓口は社内だけでなく外部リソースを活用して設置することも可能です。

対策6.定期的にアンケートを実施する

アンケートを定期的に実施し、ハラスメントに対する社内の対策について意見をヒアリングした上で、従業員の意識や実態を把握しましょう。
ハラスメントや、ハラスメントにつながりうるトラブルは職場で日々発生しています。
実態に即した対策を立てるためには、定期的に現状把握に努めなければなりません。

また、アンケートは必ず匿名性で実施するようにしてください。

対策7.コミュニケーションの仕組みを整える

ハラスメントは人間関係の中で生じることから、コミュニケーションの仕組みを整えることも有効なハラスメント対策になります。

人間関係の摩擦は閉鎖的な関係から発生することが多いため、直属の上司だけでなく部署を超えて交流できる仕組みを作るなど、オープンなコミュニケーションを増やす対策が考えられます。

対策8.実施効果をチェックする

ハラスメント対策を行なったら、実施効果をチェックして改善していく必要があります。
対策を実施したからといって、すぐにハラスメントがなくなるわけではありません。
効果をチェックし今後の課題を洗い出しましょう。

チェックの仕方としては、対策をする前とした後でのハラスメント被害件数を比較する、相談の解決実績を振り返るといった方法が考えられるでしょう。
あまり効果がないようであれば再度対応を検討し、改めて対策を実施してください。

なぜなら価値観の近い相手に対して通じた話も、価値観の違う相手に対してはうまく伝わらないことがあり、同じスタンスではコミュニケーションがうまく取れないからです。
例えば育児中で時短勤務の従業員に対しての理解がないと、労働時間が短いことへ嫌味をいうといったマタハラが起こります。


4. ハラスメントが起こった際の対処法

きちんと対策していても、ハラスメントを完全に防ぐことはできません。

ハラスメントが発生してしまった場合にもきちんと対処できるよう、ハラスメントが起こった際の対処法を3つ紹介します。

対処法1.記録を残してもらう

従業員がハラスメントの被害に遭ったときは、あとでわかるように記録を残してもらうことが重要です。
記録があることで事実を整理できたり裁判で証拠になったりと、さまざまな場面で役に立ちます。


対処法2.気軽に相談できる環境を作る

ハラスメントの被害は相談窓口や周囲の頼れる人に相談することで問題が改善に向かうことも多いため、従業員が気軽に相談できる環境を作りましょう。

相談窓口が会社に設置されていても、きちんと機能していないのでは意味がありません。

対処法3.事実確認をする

ハラスメントが実際にあったかどうか、必ず事実確認を行いましょう。
ハラスメントに対する意識は人によって差異があるため、一方の意見を聞くだけでは事実確認として不十分です。

音声データなどの証拠があれば一番確実ですが、証拠がない場合も当事者以外の周囲の話を聞くなどして情報を集めましょう。

事実確認をする上では、被害者本人がどのような形での解決を望んでいるのかをしっかりヒアリングしてください。

5. ハラスメント対策の事例を紹介

企業におけるハラスメント対策・防止法
企業の中には、きちんとハラスメント対策をしたことで高い効果を上げた事例も複数あります。

具体的な対策や効果がイメージできるように、以下ではハラスメント対策の事例を3つ紹介します。

事例1.基本的な対策の徹底

給食サービスを提供している会社の事例です。
こちらの会社では女性職員が多い特性上、早くからセクハラ対策に力を入れた点に特徴があります。

例えば非正規社員を含めた全従業員に新人研修を行った上で行動規範・規定の書かれたカードを全従業員に持たせ、コンプライアンス意識の喚起と普及が図られました。


事例2.ハラスメント対策にアンケートをフル活用

ハラスメント対策のために10年間社内でアンケート調査を継続しており、その結果を最大限に生かしている事例です。

まずアンケート調査の結果からハラスメントに対する理解にバラつきがあることを把握し、共通認識ができるよう研修の強化が行われました。

アンケートでは質問や意見などを記入することもでき、個別相談で意思確認するといったきめ細かい対応がされているのも特徴です。
加害者を特定して罰することが目的ではないため職場の人間関係に立ち入ることは最小限に抑えるといった配慮を行っています。


事例3.基礎からコミュニケーションの改善

労働安全を確保するために現場での緊張が高くなりがちな、建設設備業の事例です。

こちらの会社では厳しい口調で指導する職場の風土もあり、ハラスメント問題が生じやすかったようです。
そしてこのような風土を改善するため、本格的なハラスメント対策が行われました。

具体的にはまず、ハラスメント対策の基礎研修のあとに対話形式のグループワークを実施し、ハラスメントに対する認識を従業員間で共有できるようにしました。
またeラーニングの自由記述の書き込みを活用して従業員の生の声を聞くといった取り組みも行いました。

これらの取り組みの中でわかったことは、きちんと対話することで認識のズレを解消できるということでした。

6. まとめ

ハラスメント問題はコミュニケ―ション不足などすれ違いが原因で生じることが多いです。
方針を明確にして社内に周知し、改善を繰り返しながらしっかり対策していきましょう。

ハラスメント問題が世間に認知されてきたこともあり、2020年6月1日からはパワハラ防止措置が義務化されています。
この流れにともないどの企業も対策に力を入れ始めているため、本記事を参考にぜひしっかりと対策を進めてください。

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