第9回 高年齢者雇用安定法が改正され、シニア社員の働き方はどう変わるの? Author:石村 衛

2021年5月31日|カテゴリー「石村先生と考える“心豊かな人生100年時代”
シニア社員のセカンドキャリア研修
2021年4月1日に「高年齢者雇用安定法(※1)」が改正施行されました。
主な改正点は、従来の「65歳までの雇用確保(義務)」に加えて、新たに「70歳までの就業機会の確保(努力義務)」が設けられたことです。
この改正によってシニア社員の働き方はどのようになるのか確認してみましょう。

※1 厚労省:高年齢者雇用安定法改正の概要
これまでの高年齢者雇用安定法では、対象となる労働者を60歳まで雇用していた企業等
(事業主)に対して

●60歳未満の定年禁止(高年齢者雇用安定法第8条)
●65歳までの雇用確保措置(高年齢者雇用安定法第9条)
 定年を65歳未満に定めている事業主に対して
 1.65歳までの定年引き上げ
 2.定年制の廃止
 3.65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入
 継続雇用制度は、原則として「希望者全員」が対象となります。

という雇用確保(義務)を課しており、ハローワークより繰り返し指導を受けたにもかかわらず、何も具体的な取り組みをおこなわない事業主(企業等)には、勧告書の発出、勧告に従わない場合には「企業名の公表おこなう場合がある」とされています。

今回改正によって、上記の内容に加えて対象となる労働者を60歳まで雇用していた企業等に対して、2021年4月1日以降は

●70歳までの定年延長
●定年制の廃止
●70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入
65歳以上の継続雇用制度は、原則として「努力義務」となり、グループ会社などへの転籍や他の事業主への転職を含むことになります。
●70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
●70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入

という努力義務が加わりました。

この努力義務とは、「上記の改正に基づいて法的に必ず順守しなければいけない」といった義務規定ではなく、あくまで企業等に「就業機会の確保を促す」というものです。
そのためこの改正により、65歳以上のシニア社員が希望すれば、必ず働くことが約束されたものではありません。


では、シニア社員の働き方について、現状を確認してみましょう。
厚労省:令和2年「高年齢者の雇用状況(※2)」によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置(高年齢者雇用安定法第9条)を実施している企業は、99.9%となっており、65歳まで希望者全員の雇用確保が義務化されていることもあり、ほぼすべての企業において、一般的に定年年齢とされてきた60歳到達後も希望すれば働ける状況となりました。

60歳到達後の働くための企業等制度の内訳をみると、

継続雇用制度 76.4%
定年引上げ 20.9%
定年廃止 2.7%
となっており、定年を廃止して無期限雇用を前提とする企業等はわずか2.7%に止まり、60歳以上のいずれかの年齢に定年を引き上げた企業等も20.9%に止まります。

シニア期の働き方は、継続雇用制度を適用する企業等が76.4%と多数を占めており、60歳到達で一旦「定年退職」となり、その後希望者は「有期の再雇用契約で働く」、あるいは60歳以降は「勤務延長制度を利用して働く」という働き方が主流になっています。


60歳定年を迎えた方が、60歳以降にどうされたのかを調べた結果、

継続して雇用された 85.5%
継続雇用を希望せず定年退職者 14.2%
継続雇用を希望したが、継続雇用されない者 0.2%
となり、14.2%の方が勤め先を定年退職したものの、圧倒的多数の85.5%の方は仕事を続ける選択をされています。


65歳以上の雇用確保に対する努力義務を定める改正前の令和2年調査においても、

定年制の廃止 2.7%
66歳以上定年 2.4%
希望者全員66歳以上の継続雇用制度 7.5%
基準に該当した66歳以上の継続雇用制度 10.9%
その他の制度で66歳以上まで雇用 9.8%
66歳を超えて働ける制度のある企業は33.4%と、一定数の企業においてはシニア社員を戦力として活用しています。
さらに70歳を超えて働ける制度のある企業は31.5%と66歳以降も働ける企業の多くが70歳を超えて働ける制度を設けているようです。

※2 厚労省:令和2年「高年齢者の雇用状況」より



60歳以降も働く場合についての調査(※3)では、
高年齢者雇用安定法が改正され、シニア社員働き方はどう変わるの?
自身の体力懸念 65.5%
健康懸念 57.5%
十分な収入が得られるか 48.4%
年金制度不安 37.8%
希望する働き方の可否 31.7%
身内の介護懸念 26.0%
職場の人間関係 19.8%
※3 連合:高齢者雇用に関する意識調査2020


上記調査では、60歳以降に働く続けることへの不安は、過半以上の方が体力の衰えと健康懸念を感じています
また、希望通りの職場・職種で働き続けられるのか、あるいは収入の減少懸念など、60歳を超えて働くことへの不安を抱いているようです。
同時に収入については、半数近い方が不安を感じ、老後資金の基礎となる公的年金についての不安も感じている方が多いようです。

シニア期の賃金面の変化についての調査では、

- 正社員賃金 正社員以外賃金
55~59歳 397.0千円 212.2千円
60~64歳 328.0千円 241.2千円
65~69歳 295.9千円 216.8千円
70歳~ 283.1千円 208.9千円
高年齢者雇用安定法が改正され、シニア社員働き方はどう変わるの?
※4厚労省:令和2年賃金構造基本統計調査
「第6-1表 雇用形態、性、年齢階級別賃金及び雇用形態間賃金格差」

上記の調査に基づいて、シニア期の働き方として多くの方が該当すると想定される、60歳定年・再雇用のケースを想定して当てはめてみると、55~59歳の「正社員賃金」が397万円から、60~64歳では非正規の契約社員241.2万円の賃金を得るとすれば、約4割の減収が見込まれます。

さらに、60歳以降の有期の雇用契約となれば、働く立場が不安定になり兼ねません。
60歳到達時に継続雇用により退職とならず、雇用延長制度を利用して正社員の立場で働き続けたとしても55~59歳の賃金と60~64歳賃金を比較すると約2割の収入減となるようです。

この収入減の一部を補う措置として「高年齢雇用継続給付(※5」という制度が設けられています。
※5 厚労省:高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて


この給付は、60歳以後に60歳到達時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働いた場合、その他の要件を満たしていると給付されるものです。
この賃金低下分について補填される給付率は、一定の計算式により求められます。

例えば賃金が60歳到達時点に比べて74.5%となってしまうケースでは、支給率は0.44%相当の補填金が支給され、補填金を含めた実質の減少率は74.94%と僅かながら減少幅を縮小させる効果があります。
この仕組みは、賃金の低下率に応じて支給率は上昇し、最高適用である61%以下になる場合には15%(上限補填率)の支給となり、60歳到達時点の賃金が60%に低下してしまっても実質75%になるように補填される仕組みです。
この他にも同様の制度として、一旦離職したあと一定の要件を満たせば再就職した場合に適用される高年齢再就職給付金という仕組みもあります。詳しくは、ハローワークで確認できます。

なお、高年齢雇用継続給付は、今回改正施行された70歳までの就業機会の確保(努力義務)を定めた高年齢者雇用安定法の改正により、令和7年4月より給付率を賃金の最高15%給付から最高10%(※6)に低下させる予定となっていますが、60歳到達以後の収入を補うのに役立ちますので、職場を通じて申請をしましょう。

※6 厚労省:高年齢雇用継続給付の見直し


その他にも、今回の高年齢者雇用安定法の改正に関連して、公的年金についても2022年4月より改正が予定され、在職老齢年金やその他の制度についても一部見直されています。
公的年金の見直し内容はそれなりのボリュームがありますので、次回のブログにてその内容をご紹介したいと思います。

高年齢者雇用安定法が改正され、シニア社員働き方はどう変わるの?
高年齢者雇用安定法が改正され、シニア期の働き方は変化する可能性が高まってきたようです。
今回の改正では、従来の定年延長や雇用継続に加えて65歳以上の方が新たに「70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」という記述が加えられたことで、自分のペースで仕事を受託する「フリーランス」という働き方や「起業する」など選択幅が広がると思います。
同様に「70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入」という記述によって、企業等の社会貢献活動の担い手として、シニア人材が世のため人のため活躍できる機会の創出がされることを期待したいと思います。

シニア期の働き方には、不安や心配等のネガティブ要因を挙げれば限がないと思います。
ネガティブ要因ばかりに目を奪われ懸念を増大させるよりも、シニア期の働き方としてそれまでに培ってきた「経験・技能の伝承」、あるいは働いて収入を得ることよって老後資金不足に対する「不安解消」、適度な就労で「健康維持」、ゆとりある時間を使い「社会貢活動」など社会の接点を途切れさせず、シニア世代が活躍できる場が広がる可能性を秘めていると思います。

シニア期は、「体の健康」「心の健康」「財布の健康」の維持を心掛け、穏やかに過ごしながら働きたいものです。

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このコラムを書いた人

石村 衛(いしむら まもる)講師
石村 衛(いしむら まもる)講師

【経歴】
FP事務所 ライフパートナーオフィス 代表
東京都金融広報委員会 金融広報アドバイザー
株式会社JBMコンサルタント 契約講師

【資格】
ファイナンシャルプランニング1級技能士
日本FP協会 CFP(R)

大手食品メーカーにて、全国にまたがる流通卸や大手小売企業の営業を担当。その後、社内管理部門やマーケット開発部門、東京広域支店支店長を務める。
2001年 FP事務所ライフパートナーオフィスを開設、代表就任。相談業務をおこなうと共に若手・ベテラン、退職予定者向け等に向けた「ライフプラン講座」などの官公庁や企業研修講師を多数務め、その他「金融経済教育」をテーマにした小・中・高校・大学・専門学校における出前授業やイベント、保護者向けの教育資金講座やお金と生活のかかわりに関する講座などを幅広く手掛け、年間100件以上(2019年実績)を務める。ちびっ子からシニア層まで幅広く対応しており、「中立・公正」、「わかりやすさ」をモットーにリピートでご依頼いただくケースが多い。
著書に「お金ってなんだろう?~子どもに伝えたい大切なこと~」(PHP研究所)他


≪主な研修実績≫
ライフプラン/金融リテラシー/キャリア育成/確定拠出年金/金融商品販売者・購入者/入社前/新入社員/若手社員/中堅社員/退職予定者
コンクール指導
消費者教育の推進に関する法律 第14条3 対応研修

≪主な実績企業≫
官公庁/地方自治体/大手金融機関/信用金庫/保険代理店/商工会議所/法人会/公益社団法人/一般社団法人/大手製薬会社/部品加工会社/私立大学/公立学校 その他多数


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