筆者は、「年金が崩壊する」とは考えていません。
なぜならば、年金の崩壊を望んでいる人は「日本中に誰もいない」と思うからです。
望んでいないにもかかわらず「不安」という病魔が蔓延っているのが現状のようです。
とはいえ、現状のままで未来永劫制度が維持できるとも考えておらず、制度の維持のためには
●保険料負担の上昇
●年金受給額の引き下げ・据え置き等
●保険料負担年齢の拡大(原則20歳以上の引き下げ・60歳未満の引き上げ)
●年金受給開始年齢を引き上げ(例えば68歳など)
●保険料未納問題の解消
その他、様々な条件悪化が予想されるでしょう。
現実的には、上記などのどれか一つを実行すれば公的年金の未来が切り開けるわけではなく、痛みを和らげ分かち合うために考えられる全ての項目で条件の悪化を国民が受け入れ、且つその実行が必要になると思っています。
公的年金にも様々な問題点が潜在しており、「公的年金があれば老後は大丈夫」と指摘するつもりもありません。
むしろ、公的年金だけでは老後資金は「足りない」という現実を直視する必要もあるでしょう。
老後を迎えるすべての国民が「年金不安に苛まれている」と嘆くだけではなく、各々が「我が家の老後資金の収支」について冷静に自己分析することが大切です。
そのためには、従業員を雇用している事業主も各々が分析できる環境と知識を提供可能な環境整備をおこなうことは大切なことだと思います。
老後の資金設計の中核を担う年金問題については、政府や自治体に任せっきりにすることなく雇用主も従業員に対する老後の資金設計に関する研修などによる情報提供、学習機会の提供は大切であると思います。
とりわけ、シニア社員にとっての老後の資金設計は、切実に迫った懸念であるため不安解消を図り、働く環境作りはモチベーションに好影響を与えるでしょう。
このようにして各々のシニア社員が、自らの収支を知ることができれば、安心を得るための行動に結びつけることができるはずです。
安心を得るための行動の結果、年金受給額プラス現預金など資産の計画的な切り崩しによって「老後資金が賄える」というシニアにとっては、現状が確認できれば安心感は高まり、働くモチベーションは高まるでしょう。
その一方で年金と資産だけでは老後資金が「賄えそうもない」という残念な結果も浮き彫りになることもあるでしょう。
前向きに考えれば、その結果を糧に不足金額を補うための対策を検討する動機付けになり、目標が明確になるという利点があります。
目標なしに不安・不満を抱き続けたままではモチベーションは下がる一方になるでしょう。
何よりも注意しないといけないのは、様々な思惑から発信される「老後資金は〇〇〇万円必要」という不安を煽る意見には惑わされず、現状把握のうえ準備に向けて冷静に不安感を和らげ、不安解消のための行動が大切なはずですので、それを把握するための機会の創出は、効果的だと思います。