第5回 ベースアップに匹敵する効果を期待『社員の家計改善術』前編 Author:石村 衛

ベースアップに匹敵する効果を期待『社員の家計改善術』
新型コロナウィルス感染症の影響により、働く環境は激変しました。
2021年1月発出の緊急事態宣言では、飲食店等の営業時間短縮要請に止まらず、テレワークの推進や外出自粛等が求められ、コロナ対策として政府・自治体による「給付金」、「支援金」、「協力金」、「補助金」、「助成金」といった具合に様々な名称の支援策が実施されていたものの、収入減少等の生活への悪影響は少なからず及んでいます。

コロナ下においても企業業績は、好調・不調はまだら模様とはいえ、先行きの不透明感から2021年春闘では「賃上げ」という気運は盛り上がらず、連合では『誰もが希望を持てる社会を実現!安心・安全に働ける環境整備と「底上げ」「底支え」「格差是正」で』というスローガンを掲げていますが、実態の生活不安は増すばかりです。

このような状況においては、政府・自治体による公助は限界があり、経営者も雇用確保と賃金の現状維持を優先させ、賃金改定等の待遇改善は「ひとまずお預け」となりそうな勢いです。

ベースアップに匹敵する効果を期待『社員の家計改善術』
賃金改定によるコスト増については、例えば200名の社員に対して「一律5,000円のベースアップをする」と仮定した場合、そのコストは、1か月で100万円となり、1年で1,200万円のコスト増となります。

企業にとって、ベースアップに対応した利益を上げるのは容易なことではありません。

各々の価値観や生活環境、家族構成など様々な要因で異なりますが、仮に家計支出金額を無理なく5,000円の削減を図ることが可能になれば、同じ金額の収入がアップしたと同じ効果が見込まれます。

先行きが不透明でベースアップが難しい時こそ、企業が研修等の機会を利用して「社員の家計支出を削減できる術を伝授する」という情報提供に努めることで、社員自身が研修で学んだことを生かし、実行すれば「ベースアップに匹敵する効果見込める」という気づき効果が期待され、しっかり認識されれば企業と社員の信頼関係の構築にも役立つでしょう。

ベースアップに匹敵する効果を期待『社員の家計改善術』
●収入を得たら支出したあとの残りのお金を貯めようとする
ついつい衝動買いを重ねる
節約疲れの反動が多発する
家計管理の目的を意識していない
「たった○○しかない」と否定的に考える
持っているお金を使いきろうとする
いくらお金と使ったか考えようとしない
欲しいモノを買う時には価格を見ないで買うことが多い
ジャンボ宝くじは欠かさず購入している
ボーナスがないと生活が成り立たない
勧められると断りにくい
理解できないことは聞き流す
ニュースはあまり見ない
「いまさら勉強したくない」という思いが強い

家計改善のヒント

ベースアップに匹敵する効果を期待『社員の家計改善術』
「使うお金」「残すお金」「残ったお金」の違いを知りましょう。

使うお金とは、文字通り日常生活などで使うお金のことです。居住費、食費、水道光熱費、被服費等、教育費、交通・通信費、保険料、娯楽費、その他が該当します。

毎月使うお金以外にも、冠婚葬祭費、耐久消費財(電化製品等)購入・買換え、旅行・レジャー費、税金の支払い、その他が該当し、毎月ではないが必要(or希望)に応じて都度使うお金があります。

残すお金とは、積立貯蓄(or投資)などの手法を用いて目的をもって残すお金のことです。

残ったお金とは、振り込まれた給料から使うお金を使ったあと、たまたま銀行等の給料振込口座に残っているお金です。

家計改善のためには、使うお金を決めて、制御する必要があります。
制御ができていないと、冠婚葬祭費、その他の不意な支出があった場合、「残ったお金」だけでは資金が不足してしまい、たちまち家計が圧迫されます。
一時の家計圧迫で止まれば大事に至りませんが、常態化してしまうと借り入れで対処せざるを得ない事態に陥り、自転車操業状態になり兼ねません。

また、借り入れをせずとも「残したお金」から頻繁に目的外の預金引出しをしていては、「ザルで水を汲む」が如く、いつまでたっても貯まりません。

お金に支配=支払いに追われることなく、お金を支配=限られたお金を活用するのが家計改善の第一歩になります。

ベースアップに匹敵する効果を期待『社員の家計改善術』
使うお金には、生存のために欠かせない「必要な支出」と喜びや満足・楽しさを得るために使う「欲しいモノ支出」という二つの顔があります。

この違いを意識しないと「あればあっただけ使ってしまう」あるいは、そんなつもりはなくとも「いつの間にか使ってしまう」という事態に陥りやすくなります。

「必要」と「欲求」をどれだけ「意識できるか」がポイントになります。

「無駄使いした」という経験は多くの方に心当たりがあると思います。
この言葉は、お金を使った一定期間後に後悔した時に使われます。
「あとで後悔する」ということは、買ったときには「欲しい」と考えたからに違いありません。
無駄使いの原因の一つが、その時点では「無駄とは思っていなかった」ということです。

買い物をする際に「本当に必要なのか?」あるいは「欲しいだけなのか?」を一旦深呼吸するだけでも無駄使いは減るようです。

「必要」と考えるモノを買う時にも注意しましょう。
同じ「必要なモノ」であっても高級品・普及品・安価品が存在しています。
その差は、いわゆる付加価値といわれるもので、コストの違いも含め、性能や利便性、快適性、ファッション、希少性など様々な要因で価格差が生み出されています。

例えば、お米の価格で考えてみると有名ブランド米と外国産米では、価格に大きな差があります。
「空腹を満たす」、「栄養を摂取する」という必要性のみに着目すれば、ブランド米も外国米も必要性は変わりません。
ところが、この価格に違いは「風味」や「食感」、「その他の好み」が一定の購入者に支持された結果、外国米よりも高い価格で販売されます。
同一目的の商品・サービスにおいての価格差が存在する理由を考えてみることも大切だと思います。

同時に「財布の中身と相談しながら買い物を楽しむ」ことも意識しましょう。
利便性や快適性などを求めて「欲しいモノ支出」を拡大させるのは、満足感に結びつきます。
その反面、限りある収入の中であり、それが生涯続くとは限りませんので「ときには我慢する」ということも大切です。

将来を視野に入れつつ 今の生活を豊かに!

我慢ばかりでは、楽しくありませんので、無理のないところで「残すお金を残したうえで、使えるお金を意識して使いきる」というスタンスが理想だと思います。

ベースアップに匹敵する効果を期待『社員の家計改善術』
利便性が向上すれば、利便性に対する対価を支払う必要があります。
極端な例ですが、食器洗い機がなくとも食器の洗浄は可能です。

食器洗い機が、無駄という意味ではありません。
食器洗い機を利用すれば、手間が省けて省いた時間を有効に使えます。

安価な食器洗い機が3万円として高機能品が10万円と仮定すれば、洗浄時間の違いに止まらず、汚れ落ち・節水機能・洗い物容量の違い・機器の手入れなど価格に比例するように利便性が向上します。

同様に不安を解消して安心を求める場合も対価が必要になります。
不安という魔物は、心の奥深くに潜んでおり、不安解消=安心を得るためには躊躇なくお金を使うようです。

例えば、これまで泣き寝入りすることが多かった「あおり運転」に対して、動かぬ証拠を突き付ける有力な手段として急速に普及しているドライブレコーダーは、安心のための機器の代表例だと思います。

一般的に2万円~5万円程度の価格が多いドライブレコーダーの寿命は意外と短命の1~3年と言われ、記録媒体のSDカードにも寿命があり、定期的な動作チェックをしていないと「いざっ」という時に記録されていない事態になってしまうと意味を成しません。 

「保険に入っていた方が安心ですよ」という勧誘文句を耳にすることがあります。
保険は「安心のため」に加入するのではなく、万が一の際に必要な金額を確保するためのものです。

そのため、必要となる金額を最小限度に止めておかないと保険料負担が家計を圧迫する事態になり兼ねません。

例えば、生命保険の場合、被保険者である方が亡くなって失われる収入を補填する目的が圧倒的多数です。

被保険者がお亡くなりになることで収入が途絶え、生活費等の困窮が起こるのであれば、『生命保険に加入する必要がある』と考えられます。
裏を返せば、生命保険に頼らなくとも困窮が回避される見込みがあれば、生命保険は不要となります。

ということは、ご遺族の生活費困窮は、「いくらなのか?」が最も重要であるはずです。
これを知らずして保険に加入するのは、「真っ暗な夜道を無灯火で突き進む」という状況だと思います。

この困窮を査定する手掛かりは、現在の生活費、お子様の自立時期、配偶者の余命、遺族年金の概算、貯蓄残高、死亡退職金等、配偶者の就労状況、教育費など年齢や時期によって変化する生活費以外の支出状況などを調べると役に立ちます。

これら「便利・安心」について「コストがかかる」ということは、「当たり前」と言えば当たり前として既にご存じのはずですが、当たり前すぎて必要性に対する意識が薄れてしまいがちです。

今回の例題では「必要性が高い」と考える人は多数かもしれませんが、意識が薄れていれば、そこには壮大な「無駄使い」が潜んでいないとも限りません


今回はここまで。
次回は、「ベースアップに匹敵する効果を期待『社員の家計改善術』後編」をお送りします。
お楽しみに。

若手・新入社員のライフプラン応援研修 ~集合研修~

<研修のおすすめポイント>
社員一人ひとりが「お金」の問題に真正面から向き合って考えることによって、「自分が描く将来の姿を実現するためにはどう働けばいいのか」、「会社で長く働き続けるメリット」などに気づくことができます。
この研修を受講することによって、社員の就労継続の意欲向上、離職防止や従業員エンゲージメント向上にもつながるため、新入社員・若手社員の研修として導入する企業が増えています。

ライフプラン応援研修
社会経験の浅い若手・新入社員のライフプランの応援を目的とします。結婚・子育て、住宅購入などのマネープラン(得する知識)、キャリアデザインをセットされた研修です。

講義形式を極力避け、ゲーム参加ワークを取り入れた参加型研修となっております。

JBMでは、上記以外の研修も柔軟に対応させていただきます。
ご質問やお見積りにつきまして、お気軽にお問い合わせくださいませ。
石村 衛(いしむら まもる)講師
石村 衛(いしむら まもる)講師

【経歴】
FP事務所 ライフパートナーオフィス 代表
東京都金融広報委員会 金融広報アドバイザー
株式会社セゾンパーソナルプラス 契約講師

【資格】
ファイナンシャルプランニング1級技能士
日本FP協会 CFP(R)

大手食品メーカーにて、全国にまたがる流通卸や大手小売企業の営業を担当。その後、社内管理部門やマーケット開発部門、東京広域支店支店長を務める。
2001年 FP事務所ライフパートナーオフィスを開設、代表就任。相談業務をおこなうと共に若手・ベテラン、退職予定者向け等に向けた「ライフプラン講座」などの官公庁や企業研修講師を多数務め、その他「金融経済教育」をテーマにした小・中・高校・大学・専門学校における出前授業やイベント、保護者向けの教育資金講座やお金と生活のかかわりに関する講座などを幅広く手掛け、年間100件以上(2019年実績)を務める。ちびっ子からシニア層まで幅広く対応しており、「中立・公正」、「わかりやすさ」をモットーにリピートでご依頼いただくケースが多い。
著書に「お金ってなんだろう?~子どもに伝えたい大切なこと~」(PHP研究所)他


≪主な研修実績≫
ライフプラン/金融リテラシー/キャリア育成/確定拠出年金/金融商品販売者・購入者/入社前/新入社員/若手社員/中堅社員/退職予定者
コンクール指導
消費者教育の推進に関する法律 第14条3 対応研修

≪主な実績企業≫
官公庁/地方自治体/大手金融機関/信用金庫/保険代理店/商工会議所/法人会/公益社団法人/一般社団法人/大手製薬会社/部品加工会社/私立大学/公立学校 その他多数


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