【さまざまな分野】第47回 『初めての資産運用の心得(後編)』 Author:石村 衛

2021年1月18日|カテゴリー「さまざまな分野 ,さまざまな分野
初めての資産運用の心得
退職時期が近づくと「退職金」の行方が気になりはじめる頃だと思います。
受け取る退職金を「どのくらい使う?」、そして「どこに貯める?」といった具合に多方面から思案をされると思います。

これを機会に「資産運用にチャレンジしてみたい」という方も少なくないようです。

これまで資産運用を積極的におこなってきたベテラン個人投資家はともかく、資産運用の未経験者あるいは会社の確定拠出年金でチョッピリ投資信託による運用をした経験を持つ等の初心者は、事前に知っておけば、多少なりとも役立つことがあります。

今回は、「資産運用の心得」を後編です。


初めての資産運用の心得
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)基本ポートフォリオより筆者が作成
スタートに当たっての運用対象資産は、分散を基本としつつも、対象資産を広げ過ぎず興味・関心がある資産から始めましょう。
興味・関心が湧いてくれば、次に異なる資産を組み合わせて投資先を分散し、値動きを平均化させることで価格変動の幅を小さくなるように工夫します。この手法は、資産の分散投資と呼ばれています。

資産の分散投資のために用いる「一つの物差し」として、公的年金を運用している世界最大級の機関投資家「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)※2」の資産運用構成(ポートフォリオ)が参考になります。

初めての資産運用の心得
年金積立金管理運用独立行政法人の資産運用構成と自分の資産の分散の割合を比較して、株式および海外投資比率の構成比が高くなっていれば、リスク・リターンは増加する「攻めの運用」といえます。
反対に低いとリスク・リターンが減少する「守りの運用」と考えておくと良いと思います。

初めての資産運用の心得
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)より画像引用

世界最大の機関投資家であっても分散投資は基本です。
価格の上昇・下落に見舞われながら、賛否両論ある中で資産の構成比も随時見直しつつ2001年来の運用成績は年率3%を超える水準を維持しています。

だれしも収益期待は大きくなりがちです。「もっと」という欲をグッと抑えて、自分の目標収益を見失わないように注意しましょう。

前編の退職金キャンペーン部分でも触れましたが、資産運用に関わる手数料にも関心を持ちましょう。
手数料は運用成績の良し・悪しに関わらず徴収されます。手数料が原因で投資収益が圧迫されてしまっては本末転倒です。

初めての資産運用の心得
運用対象資産の値動きに関心を持ち、下落要因に止まらず上昇要因についても関心を持って情報収集を行います。

近年、ニュースの接し方に変化が起きているようです。情報収集のためには、ニュースは貴重な情報源となりますが、新聞・テレビ・ラジオのニュースから情報収集する機会が減少傾向にあり、スマホ等を通じたニュースでの情報収集機会が増加しているようです。

スマホ等ニュースは、出どころ不明の情報も混在していることも皆無ではなく、また、読者自身にとって興味・関心のあるニュースなど自分にとって都合の良い情報のみを検索、あるいは自分の意見と同じ記事を探してしまい判断を見誤る懸念があります。

資産運用に関わる情報収集では、出どころ不明の記事には注意を払い、異なる立場の記事にも目を通して客観性を保てるようにするように心掛けたいものです。

他方、資産運用の世界では、「専門家」と称する識者が登場します。
その識者は、金融商品の「販売サイドか?」、「中立な立場か?」、「購入者サイドか?」それぞれの立ち位置により、提供される情報内容に違いがあります。

どの立場の識者(専門家)であっても運用結果という未来予想を事前に的中させることは不可能です。
あくまで参考意見と位置付けましょう。
初めての資産運用の心得
自分なりに値動きの原因が理解できるようになったら、徐々に対象資産と金額を増加させましょう。
この段階までは、スタートしてから数ヶ月あるいは数年かかるかもしれません。
慌てずじっくりと構え「急いては事を仕損じる」という事態に陥らないようにしましょう。

他方、ここに到達しなくとも、ステップ4にあるように「つみたてNISA」を活用して時間の分散投資を図りつつ、毎月コツコツ積立運用をおこなっておくのも良いと思います。

くどいようですが、「いきなり」は慎みましょう。

初めての資産運用の心得
資産の値動きに一喜一憂せず、「お金を育てる」というイメージで長期の運用が良いと思います。

長期運用の概念は、退職金の安定運用を目指す上で重要なポイントであると考えますが、若年層に該当するような30年も40年も運用期間を見込む訳ではありません。

退職金の運用では、年単位を一つの目安として、自分自身の手仕舞いルールを設けましょう。
例えば、収益面をルール化するのであれば「投資元本から20%値上がりしたら手仕舞いする」、あるいは「年限(例えば3年or 5年 or 10年)を決めて手仕舞いをする」といった具合に各々で出口を決めましょう。

そうしておかないと、思わぬ損失に見舞われた際には「塩漬け」という状況に陥り、反対に収益が出れば出たで「もっと」と欲が邪魔をします。

結果として、いつかは使うための退職金であったはずが「いつまでも使えないお金」となってしまっていては、元も子もなくなってしまいます。

初めての資産運用の心得
退職金の資産運用は、未経験者・初心者とって多少のハードルが存在していますし、成功も約束されていません。
運用以外に安心して退職後の生活を送るために以下の選択肢も効果があると考えますので最後にご紹介します。

●住宅ローン等の借り入れがある場合には、将来収支を考慮しつつ、繰り上げ返済を実行しましょう。運用で安定して3%稼ぐのは困難極まりないですが、借入利率分(例えば1.5%)相当のステルス的な収益が安全・確実に見込めます。

●生命保険などの見直しで保険料負担の削減。不要な保障は保険料の無駄になりかねません。保険においては安心を求めず、万が一の際に備える最低限必要な金額に止めましょう。

●家計支出に関心を持ちましょう。一般的に退職後の日常生活費のうち、交際費や交通費、小遣いなどは減少する傾向があります。新たに出ていくお金を捕捉して管理するだけでも老後の資金不安は和らぎます。
 
ニューヨークダウの史上最高値更新や日経平均株価のバブル崩壊後約30年ぶりの高値。
一時は死語になりつつあった「貯蓄から投資へ」という言葉が復活しているようです。
こんな時こそ注意が必要」と考えますが、5年後・10年後という目線においてはリタイア後の資金に対する自助努力は大切だと思います。

運用には困難な場面が訪れることもあるでしょうが、「手をこまねいてみている人」と「リスクを恐れず負けにくい工夫した人」では結果は異なるでしょう。
せっかく手にする退職金です。老後資金の不安に苛まれ、焦って増やそうとすればするほど深みにはまりやすくなります。

退職後の資産運用は、「お金をじっくり育てる」という心積もりで踏みでしてみてはいかがでしょう。

※1 金融庁:あなたとNISA  
 
※  年金積立金管理運用独立行政法人 基本ポートフォリオの考え方

◆前回の記事

シルバー社員のセカンドライフ応援研修

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シルバー社員のセカンドライフの応援を目的とします。シルバー社員のマネープラン(得する知識)、キャリアデザインがセットされた研修です。
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JBMでは、上記以外の研修も柔軟に対応させていただきます。
ご質問やお見積りにつきまして、お気軽にお問い合わせくださいませ。
石村 衛(いしむら まもる)講師
石村 衛(いしむら まもる)講師

【経歴】
FP事務所 ライフパートナーオフィス 代表
東京都金融広報委員会 金融広報アドバイザー
株式会社JBMコンサルタント 契約講師

【資格】
ファイナンシャルプランニング1級技能士
日本FP協会 CFP(R)

大手食品メーカーにて、全国にまたがる流通卸や大手小売企業の営業を担当。その後、社内管理部門やマーケット開発部門、東京広域支店支店長を務める。
2001年 FP事務所ライフパートナーオフィスを開設、代表就任。相談業務をおこなうと共に若手・ベテラン、退職予定者向け等に向けた「ライフプラン講座」などの官公庁や企業研修講師を多数務め、その他「金融経済教育」をテーマにした小・中・高校・大学・専門学校における出前授業やイベント、保護者向けの教育資金講座やお金と生活のかかわりに関する講座などを幅広く手掛け、年間100件以上(2019年実績)を務める。ちびっ子からシニア層まで幅広く対応しており、「中立・公正」、「わかりやすさ」をモットーにリピートでご依頼いただくケースが多い。
著書に「お金ってなんだろう?~子どもに伝えたい大切なこと~」(PHP研究所)他


≪主な研修実績≫
ライフプラン/金融リテラシー/キャリア育成/確定拠出年金/金融商品販売者・購入者/入社前/新入社員/若手社員/中堅社員/退職予定者
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消費者教育の推進に関する法律 第14条3 対応研修

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