ラーニングエクスペリエンスデザインとは?これからの社員教育の設計の仕方

2022年1月25日|カテゴリー「人材育成コラム
ラーニングエクスペリエンスデザインとは
新型コロナウィルスの影響により、教育業界もデジタル化、オンライン化が進み、企業の人材育成体系、社員教育体系を抜本的に見直す必要が出てきています。
今回は、人材育成体系、社員教育体系の再構築に役に立つ「ラーニングエクスペリエンスデザイン(LXD)」について、ラーニングエクスペリエンスデザインとは何なのか、構築の方法などを解説します。



ラーニングエクスペリエンスデザインとは

ラーニングエクスペリエンスデザイン(Learning Experience Design)とは、「学習体験デザイン」という意味です。
英語の頭文字をとって「LXD」と略すことが多いです。ラーニングエクスペリエンスデザインという言葉は、オランダ人のNiels Floor氏が2007年に生み出した考え方です。

ラーニングエクスペリエンスデザインは、学習者が人間中心の目標指向の方法で望ましい学習成果を達成できるようにする学習体験を作成するプロセスと定義されています。
つまり、学習者を中心に考え、学習の先にある目標・成果(現場での活躍)に焦点をあてて、集合型研修だけでなく学習者が学ぶあらゆる体験を設計することです。

■学習者を中心におくこと(human-centered)
■目標・成果志向であること(goal-oriented)

この2つは、ラーニングエクスペリエンスデザインの重要なキーワードのため、しっかりと認識しておきましょう。

人事部・教育担当者の役割とラーニングエクスペリエンスデザイン

前述したとおり、学習者を取り巻く環境の変化により、人材育成体系、社員教育体系の再構築をする必要がでてきています。
そのためには、OFF-JTの研修だけでなく、オンラインやOJTなどあらゆる学習体験を設計し、提供できる人材が必要不可欠です。

人事部・教育担当者の役割

今後の学習体験を設計・提供する人事部・教育担当者の役割は、2点あります。

①学習者が意欲的に取り組める学習体験を提供すること
テレワークや在宅勤務によって、学習者を取り巻く空間が変化したことにより、今まで以上に学びのモチベーションを保つことが難しくなっています。自分ひとりで学びのモチベーションを保ち続ける学習者は多くはないです。
そのためには、デジタルやオンライン、eラーニング、アンケート、テスト、ワークショップ、ディスカッション、目的に合わせた集合研修などを組み合わせて、学習者が楽しく学習でき、意欲的に取り組んでもらえる学習体験を設計し、提供することが必要です。

②学習を目標・成果(現場での活躍)につなげること
学習体験を設計する側として陥りがちな間違いとして、「学習の詰め込み」「成果と手段があいまい」ということが挙げられます。学習体験の質を高めるためには、目標・成果(現場での活躍)を明確にすることが重要です。現場でどういう行動をし、どのような結果を出してほしいのかを明確にして、その目標・成果に向けて学習体験を設計することが必要です。
特に、リスキングなど、学習者にとって未知の分野においては、目標・成果を明確にすることが難しいため、学習者とともに、人事部・教育担当者が関わる必要があります。

※リスキング・・・「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」近年では、特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えている。(経済産業省 資料から抜粋) 

ラーニングエクスペリエンスデザインのための学習分野

ラーニングエクスペリエンスデザインが設計できるようになるためには、複数の学習分野を学ぶ必要があります。
インストラクションデザイン、ユーザーエクスペリエンスデザイン、ユーザーインターフェイス/ビジュアルデザインといった複数の分野にまたがります。
デザイン思考、ユーザー中心デザイン、ユニバーサルデザインといった分野も必要です。

特に、インストラクショナルデザイナーが互換性が高いため、ラーニングエクスペリエンスのデザイナーになる場合が多く、インストラクションデザインは優先的に学習するとよいでしょう。
また、最近では、ラーニングエクスペリエンスデザインを取り入れた提案ができる外部の人材育成提供会社も増えてきているため、相談するのも手です。

ラーニングエクスペリエンスデザインのプロセス

ラーニングエクスペリエンスデザインとは
それでは、ラーニングエクスペリエンスデザインを生み出したNiels氏が提唱する代表的な設計・提供のプロセスを紹介します。

①問いを立てる(QUESTION)
まず、学習者は、デザイン方針、目標、デザイナーの役割、学習設計範囲・フローを考える必要があります。最初からすべてに対して、考えが明確になることはありません。この考えの質がプロセス全体の質を左右するため、時間をかけて、考えを明確にしましょう。非常に大切なステップです。

②調査する(RESEARCH)
調査対象は「学習者」と「学習成果」の2つです。このプロセスは飛ばされがちですが、ラーニングエクスペリエンスデザインの質の差が出るのはここです。ラーニングエクスペリエンスデザインの質の差が出るのは、設計の差ではなく、「学習者」と「学習成果」に対する理解度の差によるものが多いです。

③設計する(DESIGN)
学習者が学習成果を達成するために必要な体験を設計します。様々な「アイデア」を組み合わせて、1つの「コンセプトデザイン」に落とし込んでいきます。

④開発する(BUILD)
設計した「コンセプトデザイン」を実現するために、プログラムのプロトタイプを開発します。新規のコンテンツをつくるか、既存のコンテンツを組み合わせるか、どちらの開発方法が良いかは設計次第です。

⑤試行する(TEST)
開発したプロトタイプが実際に機能するかを試します。はじめから完璧に上手くいくことはありません。最初の設計にとらわれることなく、失敗を許容し、経験から学び、改善を重ねることが大切です。

⑥市場(教育体系)に出す(LAUNCH)
③から⑤のプロセスを繰り返して調整を重ねた後、実際に市場(教育体系への組み込み)に出します。この一連のプロセスを繰り返す必要があります。

①~⑥の流れは基本的なデザイン設計・提供のプロセスです。
まずは、①〜③の準備、設計段階をしっかりと時間をかけて考え抜くことが重要です。

ラーニングエクスペリエンスデザインの最近の傾向と事例

近年、ラーニングエクスペリエンスデザインの考え方は広がりつつあります。
単発のイベント型の研修・セミナーではなく、研修・セミナー前後のフォロー設計から、さらに日常の中でいかに学びを継続していけるかという長期的な視点の学習体験の設計に変化していっています。

ブレンディッドラーニング

研修・セミナー前後のフォロー設計で代表的な学び方が、「ブレンディッドラーニング」です。

ブレンディッドラーニングは、「70:20:10の法則」からも効果的なことがわかります。
「70:20:10の法則」は、アメリカの教育機関の調査結果で、人材育成の領域でよく言及されています。



対象:企業のエグゼクティブリーダー
テーマ:成長したと感じる要因
結果:
70%・・・仕事上の困難な課題ややりがいのある仕事の体験
20%・・・他者・上司との関わりやフィードバック
10%・・・研修・セミナー



この結果からも、「研修」は成長実感において10%に過ぎず、研修の事前・事後にフォローを入れることで成長実感や研修効果が上がることがわかります。

【参考】

ラーニングエクスペリエンスデザインをサポートするLMSとは

ラーニングエクスペリエンスデザインを実現するためには、2つのポイントがあります。

①ラーニングマネジメントシステム(LMS)などによる学習サポート
②前述したブレンディッドラーニングを活用した日々の学習設計

①のラーニングマネジメントシステムができることは、

(1)オンライン学習:オンラインでのLIVE講義(オンライン研修)、eラーニング等
(2)学習管理:学習者1人ひとりの学習状況、学習進捗、成績の把握
(3)アダプティブラーニング:学習者1人ひとりに最適化された学習内容を提供
です。

社員教育に対応したラーニングマネジメントシステムでは、具体的には、「Core Learn」「Cerego(Cerego)」「KNEWTON」などがあります。
今後、AIやICTにより学習者のデータ蓄積と分析がさらに進むことで、飛躍的にラーニングマネジメントシステムもブラッシュアップされ、企業の活用が進んでいくでしょう。

ラーニングエクスペリエンスデザインの事例

日々の学習方法は様々です。代表的な学習方法を紹介します。



・オフライン研修(対面型の集合研修)
・オンライン研修(オンライン型の集合研修)
・オンラインワークショップ(短時間でのワークやディスカッション)
・オンライン学習(教育eラーニング、電子書籍・レジュメ)
・オンラインコミュニケーション(SNSやグループウェアでの意見交換)
・OJT
・アクティブラーニング(職場でのアクション目標を実践)
・ポスターや社内報(紙、WEB関わらず)


などがあります。

上記の学習方法を活用し、ラーニングエクスペリエンスデザインには、3つの型があります。

①反転学習(オンライン学習+オンライン/オフライン研修)
ブレンディッドラーニング(オンライン研修・学習+オフライン研修+職場実践)
③フルスクラッチ型学習(様々な学習方法を組み合わせる)

3つの型は①の方が設計・実践しやすく、③の方が設計・実践しにくくなっているため、これからはじめる会社は、①→②→③と難易度をあげていくと良いでしょう。

③のフルスクラッチ型は設計の難易度が高いですが、これからの将来を担うリーダーを養成する場合や職場の風土改善など中長期的な人材育成体系、社員教育体系の構築には向いています。

対象:次期リーダー候補十数名

⓪社内SNSでクラス内自己紹介 ※常時社内SNSは活用
①オンラインでのアセスメント(現段階の思考、能力などを把握)
②オンラインでのWEBアンケート(ヒアリングだけでなく、プログラムへの意識醸成)
③eラーニングによるオンライン学習(リーダーの役割、基本スキル)
④集合でのオフライン研修(過去の振り返り、ディスカッション、今後への目標・アクション設定)
⑤アクティブラーニング(職場でのアクション目標を実践)
⑥オンライン研修<2〜3時間>(アクションの振り返り、ディスカッション、アクション再設定)
⑦eラーニングによるオンライン学習(部下育成スキル)
⑧アクティブラーニング(職場でのアクション目標を実践)
⑨オンライン研修<2〜3時間>(アクションの振り返り、ディスカッション、アクション再設定)
⑩eラーニングによるオンライン学習(業務管理スキル)
⑪オンラインでのアセスメント(現段階の思考、能力などを把握)
⑫集合でのオフライン研修(アセスメント結果の振り返り、学習者の課題解決)
⑬アクティブラーニング(職場でのアクション目標を実践)
⑭オンライン研修<2〜3時間>(アクションの振り返り、ディスカッション、アクション再設定)
⑮集合でのオフライン研修(成果発表会)
※適宜、WEBテストや電子書籍などの課題図書なども実施

リーダーを養成するためには、数回の研修だけではなかなか育たず、マインドやスキルを段階的に丁寧に醸成することが必要です。
そのためには、上記のような学習体験をデザインすることで、対象者であるリーダー候補のメンバーも、躓く時には早急に解決でき落ちこぼれず、成長を実感しながら、真のリーダーへ向かっていってくれます。

また、プログラム数は多いですが、1つ1つを見ると、時間的にも物理的にも学習者自身には大きな負担はないところも肝です。
日々の業務をこなしながら、大きな負担なく学習を設計することも重要です。

まとめ

ラーニングエクスペリエンスデザインは、学習者を中心に考え、学習の先にある目標・成果(現場での活躍)に焦点をあてて、集合型研修だけでなく学習者が学ぶあらゆる体験を設計することです。最近では、使いやすいオンラインツールやラーニングマネジメントシステムも出てきており、学習体験の設計がしやすくなりました。

AIやITの発展、働き方の変化、DXやSDGsなど社会・経済の変化などから、社員教育を見直す時期にきています。
ぜひこの機会に、ラーニングエクスペリエンスデザインを活用して、人材育成体系、社員教育体系を見直してみませんか。


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