生産性向上と業務効率化の違いとは?それぞれの具体的な施策を紹介

2024年8月30日|カテゴリー「人材育成コラム
生産性向上と業務効率化の違いとは?それぞれの具体的な施策を紹介
企業が業績の向上を実現するために、「業務効率化」「生産性向上」の2つの課題に取り組むケースは多いのではないでしょうか。両者の言葉は似た意味を持ちつつも、厳密には意味が異なります。

そこで今回は、「業務効率化」と「生産性向上」の違いと、実現するための具体的な施策をご紹介します。

業務効率化と生産性向上の違い

生産性向上と業務効率化の違いとは?それぞれの具体的な施策を紹介
まずは、「業務効率化」と「生産性向上」の違いについて整理しておきましょう。
業務効率化の目的がインプットの最小化に対し、生産性向上はアウトプットの最大化することを目指します。
それぞれ詳しくみていきましょう。

業務効率化

業務効率化とは、タスクの無駄を削り、工数を削りつつ最大の成果を得ようとする施策です。
「既存業務をAIに任せること」や「無駄な非効率的な作業を減らす」といった行動が業務効率化にあたります。これまでの業務内容を見直し、無駄を減らしスムーズに物事を進めることを目指します。

生産性向上

生産性向上とは、アウトプットの効果を最大化させ、企業価値を高める施策です。

生産性の中には、資本生産性や労働生産性などさまざまな意味合いがあります。
少ない資源でより多くの成果を出すことを目的に、時間や資源、人員をいかに効果的に使うかに着目されています。

生産性向上・業務効率化が求められる背景

生産性向上と業務効率化の違いとは?それぞれの具体的な施策を紹介
なぜ日本の企業に生産性向上や業務効率化が求められるようになったのでしょうか。

理由としては「少子高齢化・労働人口の減少対策」と「グローバルな競争への対応」の大きく2つが挙げられます。

少子高齢化・労働人口の減少対策

一つ目の理由は、日本全体で少子高齢化と労働人口の減少が進行していることが挙げられます。

日本の人口は、労働人口とともに年々減少しています。総務省「情報通信白書 平成30年度版 人口減少とその課題」によると、生産年齢人口割合(15歳〜64歳)は、2040年までに6,000万人を下回ると目されているほどです。2017年時点で生産年齢人口は約7,596万人とされていますから、約20年以内に1,500万人もの働き手が減ってしまう計算になります。

従来の労働力を前提とした業務プロセスでは維持が難しく、少ない人員で成果をあげられる体制へのシフトが求められるようになっているのです。

グローバルな競争への対応

二つ目の理由は、グローバルな競争への対応です。日本生産本部の調査によると、日本における労働生産性は、OECD加盟国の中でも38ヶ国中30位と低く、グローバル社会での競争力の低さが明らかにされています。

そうした競争力の低さの背景には、習慣化された長時間労働が一因ではないかとも言われています。

業務効率化に有効な具体的施策

生産性向上と業務効率化の違いとは?それぞれの具体的な施策を紹介
ここからは業務効率化に有効な具体的施策をご紹介します。

ITツールの活用

業務効率化を実現するにあたって、ITツールの活用は非常に有効な施策です。

これまでアナログ的に行っていたルーティン業務を自動化することができたり、膨大な量になる資料の集積をデータベース上に整理できたりするなど、ITツールは多種多様な場面で活躍しています。
会社が抱える課題は何かを把握し、状況に応じて適切なツールを選ぶことが、業務効率化の鍵となるでしょう。

適切な人材配置

人材配置も、業務効率化を進めるにあたって見直したい要素です。

一人当たりの業務量は適切に分配されているか、社員の適正を見極めた配置になっているかなど、社内体制のなかで問題を抱えているところはないか確認しましょう。
業務が一人に集中している場合は周囲のメンバーで分業化、業務適性が合わないようであれば再度配置を検討し、業務がよりスムーズに進むように調整を行うことが大切です。

全体像の把握

現状会社がどんな課題を抱えているかを洗い出すには、全体像を把握しなければなりません。

各部署、各チーム、各業務プロセスごとに進行上のルールや活用ツールなどを一つずつピックアップしていきます。全体像を洗い出すことができたら、今度は客観的に検証していきます。これまで行ってきた日々のタスクに無駄はないか検証した上で、業務の中で優先順位を決めておきます。

生産性向上に有効な具体的施策

次に生産性向上に有効な具体的施策をご紹介します。

エンゲージメント向上

エンゲージメントを向上させることは、生産性の向上にもつながります。

エンゲージメントとは、従業員の会社への帰属意識のことです。
エンゲージメントが高まれば、業務上の評価項目や報酬以外にも企業に貢献したいとの業務へのモチベーション向上が期待できます。従業員一人ひとりが、能動的に仕事に取り組むようになれば、組織全体が活性化し効率的に仕事にも取り組むようになるでしょう。

外部企業への委託の検討

一つひとつの業務を精査する中で検討したいのが、外部企業への委託です。

業務の中には、これまでは内製してきたものの、専門知識が必要なものや人材への投資につながるものなどがあるかもしれません。

外部企業への委託は、総務や事務、人事の研修プログラムなど多種多様なタスクで可能です。人員不足や専門的知識の不足があれば、一度検討してみるのがおすすめです。

業務効率化の成功事例

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では、実際に業務効率化に取り組み、成果をあげた会社はあるのでしょうか。

ここからは業務効率化を実現した成功事例をご紹介します。

IoT

 IoTとは、これまでインターネットに接続されていないものが、ネットワークにつながることでより効率的な仕組みができることです。

住宅や車、家電といったものをサーバーやクラウドに接続することで、自動化、遠隔操作、モニタリングといった制御ができるようになります。

実際に、子牛の現在位置を把握できる位置情報アプリケーションを開発したことによって、日々の体調変化や運動傾向がわかるようになったケースがあります。
子牛の体調が把握できていれば、病気や体調不良の際も、早期発見、速やかな治療へと移行することが可能です。
これまでの子牛を探す手間が省けたことで、業務の効率化を期待できます。

リモートワーク

リモートワークは、コロナウイルスの蔓延もあって急速に社会に浸透しました。

これまで慣習化されてきた出社という働き方から、リモートワークを導入することで人材の確保が可能になります。

具体的には、顧客への丁寧かつ、的確な対応が求められる営業職では、余計な移動コストが削減され、より迅速で適切な顧客へのサポートが可能になります。
柔軟な働き方の導入によって、人材の離職防止や人材確保はもちろん、オフィスコストの削減や通勤コストも削減にも役立つ施策です。

ナレッジ共有

ナレッジ共有とは、業務進行に役立つ知識や経験、ノウハウを他の従業員でも使えるように共有することです。

社内におけるナレッジ共有は、業務全体をスムーズに行うために欠かせません。作業の効率化だけでなく、誰でも業務を円滑にこなせるようになるため、属人化の防止策としても有効な手段です。
具体的な事例としては、土木現場のスキル継承システムが挙げられます。土木現場の現場担当者数の減少による技術低下を防ぐ施策として、過去にあったプロジェクトの技術情報をデータ化しデータベースを導入しました。データベース上には、実際のプロジェクトにおけるノウハウが蓄積されているため、必要な情報を迅速に抜き取れるようになりました。

生産性向上の成功事例

続いては生産性向上を実現した成功事例をご紹介します。

管理システムの導入

大量のデータ管理に新たなシステムを導入することは、生産性向上を実現する一つの方法です。

実際に中古車販売を行っている業者の中には、以前まで顧客情報や在庫管理をエクセルに手作業で入力し管理していました。
しかし、入力ミスや記入漏れも少なくありませんでした。 

生産性を向上させるため、管理システムを新たに導入し、顧客情報や在庫管理のほか、帳簿管理も行うことで、作業時間の短縮を実現しています。
また確実なデータ管理により、以前以上に顧客フォローにも尽力できるようになりました。

事務処理のシステム導入

事務処理時間の削減も生産性向上には欠かせない要素です。

ある自動車整備業者の事例ですが、その会社では修理の見積もり、資料請求、発注、提携業者とのやりとりなど、事務処理に大幅な時間が取られていました。

ネットワークシステムを新たに導入することで、提携業者とシステム上でのやりとりが可能になり、事務処理時間を4割削減することに成功しています。
また、見積書の作成時間も削減され、生産性は大幅に向上しました。全社員の昇給もできたことで、社員全体のモチベーションも向上し、売上にも好影響でした。

専門家のアドバイスを取り入れる

専門家のアドバイスを取り入れたことで、生産性を向上させた事例もあります。

京都にある老舗旅館では、競合店の進出と人手不足によって売上は最盛期と比較して50%以下にまで低下していました。

生産性向上を目指すべく、専門家に分析を依頼しフロント・客席間での連携や業務の適切な管理ができていないなどの課題を洗い出します。

次に、社員のスキルアップやタブレットやSNSのITツールを利用し業務連絡ができるようにするなど対策を立てました。
すると、全体労働時間の14%の削減に成功し、業務問題全てが改善できるようになったのです。

課題に対処して業務効率化と生産性向上を目指そう

生産性向上と業務効率化の違いとは?それぞれの具体的な施策を紹介
今回は、「業務効率化」と「生産性向上」の違いと、実現するための具体的な施策をご紹介しました。

業務効率化と生産性向上を実現するには、まずは自社内の問題と課題を洗い出さなければなりません。どこに問題を抱えているのかを発見し、課題解決をすることが業務効率化と生産性向上につながります。

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