EdTech(エドテック)とは?社員教育への活用ポイント

2022年2月8日|カテゴリー「人材育成コラム
EdTech(エドテック)とは?
新型コロナウィルスの影響により、教育業界もデジタル化が進みました。
その中で、EdTech(エドテック)という言葉を見聞きしたことがあるかと思います。
本稿では、EdTechとは何か、社員教育への活用ポイントを解説します。

このコラムを書いたのは?

セゾンパーソナルプラス 谷田良純
谷田 良純
株式会社JBMコンサルタント
代表取締役社長
ブレンディッドラーニングを含めたラーニングエクスペリエンスデザインの専門家。年間700社に研修やeラーニング、労務サービスを提供。
https://jbmhrd.co.jp/

EdTech(エドテック)とは

最近、新聞やニュースで、FinTech(フィンテック)やAgriTech(アグリテック)など○○テックという言葉を耳にする機会が増えました。
既存の業界・ビジネスと、AIやビックデータ、IOTなどといった最新テクノロジーを掛け合わせて、新しい製品やサービス、取り組みをX-Tech(クロステック)と言い、具体例として、FinTech(金融×テクノロジー)やAgriTech(農業×テクノロジー)があります。

その中のひとつ『EdTech(エドテック)』が、新型コロナウィルスの影響をうけて加速しています。
EdTechとは、教育(Education)× テクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語です。
教育業界にテクノロジーの力を入れることで、イノベーションをもたらしています。

日本においても、EdTechの市場規模は確実に拡大しています。
野村総合研究所(NRI)は、2016年度におけるEdTech市場規模を約1,700億円と推計しており、2023年には約3,000億円に達すると予測しています。
5Gの導入など、通信速度が速くなったり、タブレット端末が比較的廉価で手に入るようになったりと、発展してきた技術を教育分野に活かすことで、すべての方に役立つ新しい学習方法を提供してくれます。

※以後、文章中の文言は「エドテック」

エドテックと学校教育

エドテックが特に活用されている学校教育について、少しだけ解説しておきます。
日本でエドテックが注目されるきっかけとなったのは、学校教育の分野です。文部科学省が2020年までにすべての小・中学校で一人一台のタブレット端末の導入を目指すという指針を発表したことにあります。それによって、学校教育をサポートするICTが飛躍的に活用されました。

元々日本では地域の学校へ通い、教室で着席し、先生の話を聞き黒板をうつして学ぶスタイルが非常に強く定着しています。
しかし、新型ウイルスの影響で想定以上に休校が長引き、子ども達の学ぶ時間は大幅に減少しましたね。
当たり前だと思っていた「学校へ通うこと」が当たり前でない日常を体験しました。経済産業省による「未来の教室プロジェクト」では『学びを止めない未来の教室』がうたわれています。
「子どもの学びを止めない」未来の教室を実現しようとしているのが、まさにEdTech教育×テクノロジーによるイノベーション(変革)なのです。

このように、学校教育の課題である「一斉授業の限界」「教員の負担」「家計や地域による教育格差」を解決を図る動きをしています。
これは、企業も一緒であり、「階層による統一的な研修体制」「多くの業務を行う人事部の負担」「企業規模などによる教育格差・リカレント教育の不足」といった課題があります。
こういった課題を解決するために、企業の社員教育にも、エドテックを採用されつつあります。

エドテックでできること

エドテックでできることは
(1)オンライン学習
(2)学習管理
(3)アダプティブラーニング
です。

また、下記のように、対面研修とエドテックを活用した学習のメリット・デメリットを理解した上で、エドテックでできることと活用のためのポイントを1つずつ理解しましょう。

比較要素 対面研修 エドテックでの学習
人数 一度に多くの人数に教育できない オンライン研修:一度に多くの人数に教育ができる
eラーニング:一度に多くの人数に教育ができる
時間の拘束 決められた時間のみ参加可能 eラーニング:いつでも受講可能
受講の進捗 全体の進行に合わせる必要 eラーニング:自分のペースで学習できる
双方向性 教え手とのやり取りができる オンライン研修:質問ができる
LMS:いつでも質問ができる
知見の実践度合い 講師の経験談や実務に沿った事例 オンライン研修:講師の経験談や実務に沿った事例
LMS:講師の経験談や実務に沿った事例を蓄積できる
体得度合い ロールプレイングにより実践的に学べる オンライン研修:ゲーム形式で実績的に学べる
受講者間の交流 形成しやすい オンライン研修:形成しにくい LMS:SNSなどで形成しやすい
受講後の後追い 研修後フォローが無いと見えにくい 学習履歴や学習進捗が可視化される
カスタマイズ 自社ナイズや反応を見ての内容調整可 eラーニング:内容調整は不可
オンライン研修・LMS:内容調整可
上記のように、エドテックの組み合わせにより、デメリットを他のツールが補完し、効率的かつ効果的に学習設計をすることができます。

(1)オンライン学習

オンライン学習は、集合研修よりもそれほど制約がなく、インターネット環境と動画などを受信できる端末、オンラインを実現するシステムさえ整っていれば誰でもすぐに参加できることが特徴です。

オンライン研修は集合(対面)研修と異なり、場所の確保、移動時間、交通費が発生しないことから付随的費用を削減できます。
そして、場所の確保が不要であるため、研修所に事前に行って会場を確認したり、資料を大量に印刷したりする工数を削減することもできるでしょう。
さらに、会場に移動する必要がないため、その分の時間を業務に回したり、自席で研修を受けることができるなどのメリットを考えると、業務の効率化にも貢献できると考えられます。
ただし、集合(対面)研修より集中力が落ちるといった問題も指摘されます。
しかし、それは研修を確実に準備しておくことで解決できるでしょう。

欧米の大学ではいち早く導入し、MOOC(Massive Open Online Course)と呼ばれる講義が大人気になっています。
日本にいながら欧米の講義を聞くことができるというのはオンラインならではですし、ひとつの大学だけではなく複数の大学の講義を聞くことができるので、学びの幅も広げることができます。
一流大学の講義などを無料で聞くことができるという部分が、エドテックの強みと言えるでしょう

また、オンライン学習の形式としては、
・オンラインでのLIVE講義
・教育動画によるeラーニング
・グループウェアやSNSを活用した意見交換・ディスカッション
・LMS(ラーニングマネジメントシステム)を活用したテキスト学習・テスト
などがあります。

最近では、複数のオンライン学習を組み合わせて、効果的・効率的に学習する方法が取り組まれています。
こういった学習方法は、ブレンディッドラーニングといいます。
ブレンディッドラーニングとは、いくつかの手法を組み合わせて実施する学習手法のことです。

たとえば、「集合研修(集合学習)×eラーニング」「集合研修×オンライン研修」がその代表例です。
仮に、集合研修とeラーニングのブレンディッドラーニングを実施するとします。
この場合、eラーニングでは知識の習得を行い、集合研修では実践してみて、スキルの取得を行うのが一般的です。
ブレンディッドラーニングはオンラインとオフライン、それぞれの研修・学習を組み合わせることでお互いのデメリットを補える上に、高い学習効果が見込めます。

(2)学習管理について

教育の効果を最大化させるためには、従来の教育プログラムを単にデジタル化しただけでは不十分です。
学習状況を把握し、効率よく管理、運営するための仕組みやシステムが必要となります。

こういった学習管理も、エドテックでは実現できます。
特に、学習管理のエドテックで先行しているのがLMS(ラーニングマネジメントシステム)と呼ばれる学習管理システムです。

LMSとは、インターネット上で教材を配信・回収したり、学習者が学習した履歴を管理したりするためのプラットフォームとなります。
 多くのLMSは受講者がログインして学習する受講機能と、管理者が管理・運営を行う管理機能から成ります。
学習者一人ひとりの進捗状況を一元管理する概念は、EdTechでも重要な役割を果たすと考えられます。

学習管理のしやすさもエドテックの特徴です。
学習者の学習状況を管理し最適な教材を提供するといった機能を持ったLMSというものがあり、ユーザーごとに割り当てられることで効率的な勉強をする事ができます。

特に対面でのやりとりが少なくなった今、簡単に学習状況が可視化でき管理がしやすくなるということは教育の面において重要になってくるでしょう。
また、関係者が学習の進み具合を共有することができるという機能を持っているシステムもあるので、学習状況やこれからの学習についての計画などの管理が容易にできるのです。

こういった学習状況を把握し、これからの学習についての計画をするのが、次のアダプティブラーニングです。

アダプティブラーニング

アダプティブラーニングとは、適応型学習といい、学習者1人ひとりに最適化された学習内容を提供することで、より効率的・効果的な学びを実現する学習方法です。

従来は、学校の授業であれeラーニングであれ、全員が1つのカリキュラムを同じ順番で学ぶのが一般的でした。
テストもあらかじめ用意された問題のセットを解くよう設定されていました。
しかしながら、学習者の理解度や弱点は1人ひとり違います。
そのため一律に提供される学習プログラムが最適であるという保証はありませんでした。従来も、生徒の習熟度に応じて指導方法を変えることは行われていたが、あくまでも教育提供者の経験に基づく感覚的なものでした。

アダプティブラーニングは、個々の学習進捗や解答の正誤情報などを蓄積・分析することで、生徒の習熟状況や不得意分野を明らかにすることで、それぞれに合った教材や次に学習すべき内容を自動抽出します。
アダプティブ・ラーニングによって、学習者それぞれにより細やかな学習指導が可能になるほか、学習者間で学習の進捗状況や習熟度が大きい場合の指導に役立ちます。
画期的な学びから、学習者中心の学びへ。
アダプティブラーニングは理想的な教育を実現する手法として注目されています。

国内では2010年頃より、EdTechのスタートアップ企業などがアダプティブラーニングサービスの提供を始めています。
学校教育では、具体的には、「Qubena(キュビナ):個別最適化学習(アダプティブラーニング)を実現するAIドリル」「すらら/すららドリル:小・中・高向けAI×アダプティブ教材」(経済産業省の実証事業「未来の教室」参照)などがあります。
国もこうした動きを後押ししています。
2018年にスタートした経済産業省の実証事業「未来の教室」では、3つの柱のひとつに「学びの自立化・個別最適化」が掲げられ、アダプティブラーニングへの注目度が高まりました。
社員教育では、具体的には、「Core Learn」「Cerego(Cerego)」「KNEWTON」などがあります。

このように、アダプティブラーニングは、教育におけるICTの活用とともに急速に進化し広がってきた手法です。
今後、AIやICTにより学習者のデータ蓄積と分析がさらに進むことで、飛躍的にアダプティブラーニングの活用が進んでいくものと考えられます。

エドテックの社員活用のポイントと事例

前述した通り、エドテックの活用は公教育の現場に留まらず、企業研修、リカレント教育、個人の学びも含めたムーブメントになりつつあります。

社員教育でのエドテックの活用ポイントと事例を解説します。

オンライン学習

オンライン学習の1つであるブレンディッドラーニングを実施する際は、あらかじめ集合研修やOJTとオンライン研修、eラーニングなどのオンライン学習のそれぞれの特徴を理解するようにしましょう。
その理由は、ただ単に複数の手法を組み合わせれば学習効果が高まるというわけではないためです。
集合研修、オンライン研修、オンライン学習には、それぞれ異なる特徴があります。
その内容を理解できていないと、どの研修・学習内容をどの手法に振り分けるかを正確に選択できなくなってしまうのです。
ブレンディッドラーニングの学習効果を最大限に引き出すには、それぞれの特徴を理解した上で、研修内容を立案する必要があります。
この点は常に念頭に置いておくようにしましょう。
ブレンディッドラーニングの効果を最大化するには、実施する目的を明確にすることが大切です。
そうすれば、学習手法を適切に組み合わせやすくなります。

具体的な事例としては、短時間で効率よく知識の定着をしたい場合は、「eラーニング×集合研修」の組み合わせにするのがおすすめです。
eラーニングで知識を習得させた後、集合研修でそれぞれが知識をアウトプット・インプットする流れを構築すれば、効率よく知識の定着を図ることができます。
このほか、身に着けた知識やスキル早くアウトプットしてほしい場合は、下記のように「集合研修×eラーニング×職場内研修」を行うことも良いでしょう。

オンライン学習:ブレンディッドラーニングの実施イメージ

EdTech(エドテック)とは?


EdTech(エドテック)とは?
集合研修にて基本知識を身に着け、eラーニングで理解度を確認し、職場にて再度研修を行うことで受講者のマインドや行動変容を目指します。
この3段階に分けたサポートを通して、研修内容を早期のうちに実践できるレベルにまで落とし込める可能性があります。
オンライン学習において、ブレンディッドラーニングを実践する際は、このように目的を明確にした上で手法の組み合わせを考えるようにしましょう。
そうすれば、高い学習効果を発揮できるはずです。

アダプティブラーニング、学習管理

アダプティブラーニングは、基本的にeラーニングによる自発的な学習方法であるため、学習者のモチベーション維持が難しい場合があります。
集団研修のような強制力がないため、「業務が忙しい」「やる気が出ない」などを理由に、学習に取り組むことが困難な従業員も出てくることが考えられます。 
そこで、企業としても従業員に丸投げするのではなく、締め切りの設定や社内キャンペーン、ゲーム感覚で学習が進められるような取り組みを行うことがポイントになります。

具体的な事例としては、鉄道業界や金融業界では、業務上必要不可欠な知識の完全習得が必要になります。
多岐にもわたる知識を習得する必要があり、日常業務が忙しい社員としては、非常に習得しにくい環境下にいます。
アダプティブラーニングを取り入れたシステムの導入により、学習時間がない中でも、間違えた課題に応じて苦手克服問題が出題され、個々の学習者の習熟度にあわせた知識の本質的な理解を促す「完全理解」1日後、1週間後、1か月後など、習得した課題を忘れそうになるタイミングで復習を促し、記憶の定着と同時に、実務で使えるレベルまで理解を定着させる「完全定着」の仕組みができました。

しかし、アダプティブラーニングを取り入れたシステムには、導入コストや運用までの設計をする人件費がかかります。
その場合には、あまり費用がかからず活用できるオンライン学習と学習管理の機能を持ったeラーニングシステム(LMS)があり、アダプティブラーニングの要素を仕組みとして取り入れて、実施する企業もあります。

EdTech(エドテック)とは?
上記のように、オンライン学習のオンライン研修後に、LMS上でテストをし、テスト結果を分析した上で、事後学習や次の研修に向けた事前学習で学ぶeラーニングを上司が選定し、OJT・1on1を実施し、そのサイクルを回すといったやり方です。

エドテックを実現するシステム・ツールは多岐にわたるため、自社の教育目的・ゴール、リソース、予算から選定するようにしましょう。

今後もエドテックの活用の場がますます増え、エドテックを実現するシステム・ツールも増えていくのは間違いありません。
エドテックの採用によって、社員教育が今以上に実践しやすくなり、かつ効率的・効果的に教育成果が出るようになります。
そのため、社員教育を実践している企業は、現在の教育体系を見直し、エドテックによって、さらに効率的にできないか、効果的にできないかを検証(PoC)し、導入を検討しましょう。
また、社員教育があまりできていない企業は、エドテックの活用を検討し、将来に向けた社員教育を実践してみませんか。

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