センスメイキングとは?ビジネスでの活用例もご紹介

2023年11月16日|カテゴリー「人材育成コラム
センスメイキング

センスメイキングとは、これまでの経験や事象に意味付けする思考法です。意味づけを行うことで、状況を好転させることを目的とします。

自分の目の前で起きたことをどのように捉え、どんな行動を起こすかで結果は大きく異なることから、ビジネスでも注目されています。今回は、ビジネスシーンでも活用されているセンスメイキングについて、具体的な活用法を含めて解説していきます。

1.センスメイキングとは

まずはセンスメイキングとはどのようなものか、解説していきます。

経験や出来事に意味付けすること

センスメイキングとは、これまで起こった出来事や経験に何らかの意味付けをすることです。身の回りに発生する事象に意味を与えることにより、状況を好転させる目的があります。

センスメイキングは、1990年代の終わりからアメリカの心理学者カール・ワイク氏を中心に広められ、現在ではビジネスにおける物事を前向きに捉えられる思考法として注目を集めています。

センスメイキングの具体例

センスメイキングを活用した具体例としてよく用いられるのが、雪山で遭難したハンガリー軍の話です。

ハンガリー軍の偵察部隊は、ある日アルプス山脈で遭難してしまいました。吹雪による生命の危機に直面し恐怖に怯えていたところ、偶然一人の隊員のポケットから地図を発見します。隊員たちは地図の存在によって落ち着きを取り戻し、結果として誰一人かけることなく下山することができました。

しかし下山後に確認したところ、隊員の持っていた地図は全く違う山脈のものであることが判明したのです。

雪山で遭難するという危機的状況においても「下山できる」という希望が、組織を一丸にする納得感のあるストーリーを作ることができた要因になりました。チーム全体が腹落ちするストーリーを共有することで成果を生み出せるのがセンスメイキングの効果といえます。

エポックメイキングとの違い

センスメイキングとよく似た言葉に「エポックメイキング」がありますが、意味は異なります。エポックメイキングとは、今までなかったような革新的な取り組みのことです。前向きに物事に取り組めるような思考法のセンスメイキングとは意味は異なりますが、新たなイノベーションを生み出す心構えとしてエポックメイキングとも関連性のある言葉といえます。

2.センスメイキングが注目されている理由

注目

ここからはセンスメイキングが注目される理由について解説していきます。センスメイキングが注目されるようになった理由は主に以下の3つです。それぞれ見ていきましょう。

・IT技術の進歩
・先行きのわからない時代
・価値観の多様性

センスメイキングが注目されるようになった背景には、IT技術の進歩があります。インターネットが世の中に普及し生活様式が日々変わっていく現代では、ビジネスにおいても変化をしていかなければ時代に置いていかれる状況になっています。

事実、IT技術の発展によって従来通りの事業戦略は通用しません。企業には、センスメイキングによって組織全体が納得する方針を打ち出し、新たなチャレンジをすることが求められているのです。

現代は、IT技術の進歩も含め、経済状況や価値観、国際情勢など、将来への見通しがしづらい時代になっています。従来の成功体験や慣習が通用しない可能性もあり、企業として今後を見据えた業務や事業の方向性の見直しに重点を置かなければなりません。

センスメイキングによって、周囲の状況を把握・整理し、どうやって今後の行動に繋げていくのかを改めて問い直すことが成功への鍵となります。

昨今では、性別や人種、信仰などSNSの普及によって、多様な価値観に触れる機会が増加し世界的に価値観の多様性が広がっています。企業やプロジェクトチームの中でも、メンバーによって考え方や価値観が異なれば、方針や足並みを揃えることが難しくなります。価値観の多様性が認められる現代だからこそ、センスメイキングによって組織全体にとって納得感の高いビジョンの確立が求められているのです。

3.センスメイキングを構成する7つの構成要素

7つの構成要素

センスメイキングは、以下の7つの要素で構成されています。ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。

・アイデンティティ
・振り返り
・行動力
・社会性
・進行中のプロセス
・情報の部分的認知
・説得性

アイデンティティとは、自身や自身が所属する組織が「何者か、どんなビジョンを目指す存在なのか」を自覚し、言葉にして表現できることを指します。ビジネスにおいて従業員だけでなく企業としてのアイデンティティを明確化することは、事業の方向性やブランディング戦略を確立する上で重要です。「自分たちが何者であるのか」を行動や物事の解釈をする際の軸とすることで、事業領域の拡大や合併が起こった場合でも揺らぐことのない経営戦略を進めることができます。

社員の仕事をする目的が金銭だけだった場合、他社よりも給与が低ければ企業は社員に対して転職を止めることが困難になります。一方で、自身が所属する企業のビジョンや仕事に意味を見出し、やりがいを持っているのであれば離職率の低下が期待できます。

「行動力」は、センスメイキングを実施する上で重要なスキルの一つです。行動力が高ければ、それだけ自身が行動したことによる経験値を享受することができ、センスメイキングによる行動結果の意味付けの回数も増えるということになります。実際に行動し周囲に働きかけて、仮に期待した結果を得ることができなかったとしても修正することができますし、予想通りにうまくいったとしても成功体験として自信になり、次の機会へ向けてポジティブに業務に取り組むことができます。

ビジネスが社会の一部である以上、周囲に影響を与えているように、センスメイキングでもまた、他者との関係性は必要不可欠な要素です。人間は生きていれば無意識に他者からの影響を受けています。上司から褒められると自然と自信につながるように、他者の行動や関係性は今後の自身の行動や考え、そして経験の意味付けに深く影響します。センスメイキングは周囲の環境なくては成り立たず、ゆえに社会性のないセンスメイキングは存在し得ないのです。

センスメイキングでは、過去の物事だけでなく、現在進行中の事象に関しても意味付けや振り返りを行います。物事を振り返り行動するプロセスを循環させるセンスメイキングの性質上、明確な始まりや終わりはありません。ビジネスでは、現在進行形のプロセスであっても、常に何が起こっているのかを把握し修正することが求められます。現状を鑑みて、プロジェクトを継続するのか、それとも中止するのかといった判断をしなければならないため、常に継続して存在する概念といえます。

センスメイキングにおける事象の意味付けは、あくまでも人が認識できる範囲からでしか判断できません。つまり、センスメイキングで認識した個人の認識は、全体の一部でしかないことを常に念頭に置いておく必要があります。センスメイキングに限らず、人は自分が認識した情報をもとに、物事に対する考えや結論を導き出します。センスメイキングで取る行動は、認識が可能な情報をもとに判断されるのです。

現状の仕事を把握したら、次は自身の能力と強みの分析を行います。自分自身を客観的な視点で分析し、「仕事をする目的」「会社に所属する動機」「過去の行動内容」「自身の強みやスキル、特技」などを把握していきます。
書き出した現在の仕事内容では活かしきれていない強みやスキル、また、弱みと捉えていても視点を変えることで強みにすることができないか検討するなど、柔軟に考えることを心がけましょう。

4.センスメイキングのプロセス

プロセス

センスメイキングは、「環境を感知する」「解釈・意味付け」「実行」の3段階のプロセスに分けられます。これらの各ステップを循環させることで、組織全体が同じ方向性・ビジョンを持って進むことができます。

環境感知は、自身や自身の所属する組織を取り巻く周囲の環境の変化にいち早く気づくプロセスです。従来にはなかった新しい事象や大きな変化に関する情報を素早くキャッチし、不測の事態に陥ったとしても正しく状況を把握します。

物事に対し「解釈・意味付け」を行うことで、周囲の変化に惑わされないように組織全体の足並みを揃えます。環境の変化から自分たちが「何をすべきか」「何を目指すべきか」を読み取り、将来に向けて組織を導くストーリーを示すプロセスとなります。

実行することは、センスメイキングにおいて循環プロセスを始めるスタート地点になります。ゼロから何かを始める際はまずは何となくの方向性で実行し、行動の中で試行錯誤しながら情報をもとに環境解釈を進めます。事前に綿密な計画を立てて行動をするのではなく、実行しつつ試行錯誤して最適解を求めていくことが、センスメイキングを進める際のポイントです。

5.ビジネスでの活用例

事例

「センスメイキング」は、意味付けや納得感のあるストーリーを構築する際に用いられます。これらのセンスメイキングの特徴は、ビジネスにおいてもリーダーシップや組織改革など様々なシーンで活用することができます。ここからはビジネスにおいてセンスメイキングが活用できる具体例を紹介していきます。

組織を率いるリーダーとしてのスキルや資質が問われるリーダーシップにおいても、センスメイキングは欠かせない要素です。経営者や上司などの組織を牽引する立場にある人には、事業戦略はもちろん、従業員を納得させ自主的に行動するように導くことも求められます。センスメイキングを活用して、全員が腹落ちするストーリーを作り、組織に強い推進力を与えましょう。

組織を改革する際にも、納得感のあるストーリーを作るセンスメイキングは重要な役割を果たします。組織の慣習や業務体制を変革する場合、多少なりとも社内からの反発を受ける可能性があります。特に組織改革には風土や慣習など、数値に表せず絶対的な正解のないものも多いです。人によって考え方や捉え方が違うからこそ、納得度の高いビジョンをセンスメイキングによって意味付けして説明する必要があります。

センスメイキングは、企業の経営戦略を決める際にも役立ちます。企業のステークホルダーを説得するには、データや競合他社などの市場動向とともに、方針決定者を納得させられるようなストーリーの構築は欠かせません。新たな技術やビジネスが次々と生まれている不確実性の高い現代だからこそ、センスメイキングを活用した納得性の高い経営戦略を練ることが大切です。

まとめ ~センスメイキングで納得の事業戦略を~

センスメイキングで事業戦略を

今回は、ビジネスシーンでも活用されているセンスメイキングについて解説しました。企業におけるビジョンや事業戦略を決める場合、従業員の納得感がなければうまく話し合いが進みません。将来的な会社の方針や目指す目標について、従業員から理解を得られるようなストーリーを作って説明することが、経営者やリーダーには求められるのです。

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