皆さま、こんにちは。
竹内豊です。
ハードクレーム応対に関しご一緒に考える連載の、第2回目(前編)です。
前回はケーススタディとして、飲食店チェーン・JBMバーガーの本社コールセンターでの応対(架空)を皆さまにご紹介しました。
「応対書き起こし」と共に、「考察のポイント」も4点お伝えしました。
「考察のポイント」に書かれている4点は、応対の問題を紐解くための鍵です。応対者(天満太郎さん)が、この4点をクリアできていさえすれば、お客さま(鈴木さま)の反応も違っていたことでしょう。
この4点は、ケーススタディで取り上げた飲食店クレームに限らず、多くの業種でのお客さま応対に通じる内容でもあります。「考察のポイント」に沿って、学習を深めていきましょう。
◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇
【考察のポイント1】
お詫びの仕方が適切ではありません。応対者が天満太郎さんではなく、もしも皆さまなら、通話冒頭からどのようなお詫びをするでしょうか。
応対書き起こしでは、お客さまと応対者のセリフに番号を振っています。1番は応対者の名乗り(オープニングトーク)です。2番がお客さまの第一声で、その後しばらく、「なぜこの窓口に電話したのか」をお客さまがおっしゃる部分が続きます。お客さまの口調を読んでいくと・・・・・・、これは穏やかとは言えませんよね。ずいぶん切り口上です。
応対者はお客さまの第一声によく耳を澄ませ、どのような口調・声音・言葉遣いでお話しをされるかを聴いて、自分の話し方や会話の展開を考える手掛かりにしたいものです。
お互いが顔を合わせる対面のコミュニケーションでは、相手の動作・表情などを目で観る「観察力」が重要です。顔の見えないコミュニケーションである電話応対では、「観察力」ではなく、「聴察力」が大切と言えるでしょう。
もちろん、お客さまの口調がきついからと言って、それだけでクレームと早計に判断することはできません(→口調がきつい・きつくないという判断軸だけでクレームかどうかに結びつけて考えるのは危険です)。ただ、この通話では実際にお客さまが第一声から切り口上なのですから、応対者もその温度感に合わせた口調・声音を発し、必要に応じて遅れることなくお詫びを発するべきだということに、まず気づけるといいですね。
応対者は13番で「はい、申し訳ございませんでした・・・・・・」と言っています。お詫びを述べるタイミングとしては少々遅いと言えます。10番でお客さまから投げかけられた言葉に対し、すかさず11番でお詫びを言えると良いでしょう。またその際は、
「せっかく商品をご注文くださいましたのに、ぬるかったということですね?大変失礼いたしました。」
「ご注文のお品がぬるかったということですね? 申し訳ございませんでした。」
「ハンバーガーの温度がぬるかったということですね? 申し訳ございませんでした。お詫び申し上げます。」
のように、お客さまのお話しの内容をきちんと理解したことを言葉で示しながら、お詫びを言えるとベストです。(「事実フィードバック話法」→解説は後述)。
もしも、お客さまがここまでの部分でおっしゃった「ハンバーガーの温度がぬるかった」というフレーズを拾わずに、単に「申し訳ございませんでした」だけを述べるとすると、お詫びとしては不十分です。マニュアル通り誰にでも言うセリフを機械的に発している印象を与えてしまいます。そうではなく、「個に寄り添っている」という印象を、通話冒頭からもたらしたいものですね。
通話冒頭からしばらく、応対者が「はい」のみであいづちを打っていることにも注目しましょう。字で書くと「はい」という同じ言葉でも、声音にはさまざまな変化を加えられます。明るい「はい」、積極的に身を乗り出すような「はい」、心配そうな「はい」、真剣さを醸し出す「はい」などです。書き起こしだけでは声音が伝わらないのですが、もし応対者の天満さんが声音の使い分けを十分に行えていず、ワンパターンな「はい」しか言えていなかったら、真剣に向き合う姿勢ではなく事務処理的な印象をもたらしてしまいます。お客さまの訴え一語一語に真剣に耳を傾け、それに応じて応対者も感情豊かに応答するという姿勢示すために、あいづちの声にこめる表情も工夫できると良いでしょう。
そして、お客さまのお怒り口調に対して丁寧に反応しながらも、6番では、「お買い上げありがとうございます」の一言を欠かさず言えると良いですね。