『ハラスメントのない職場にするための6つのポイント』 Author:増田 和芳

2020年9月4日|カテゴリー「『ビジネスコミュニケーション』コラム
9月になってもまだまだ暑い日が続いています。季節が移っていく過程で、いろいろと想いを巡らすことはありますが、今年はコロナ禍でいわゆる家で過ごす時間が多く、仕事はリモートワーク主体の形態。季節が移っていく過程で、何か感傷的になって想いを巡らすことはそう多くはないのかもしれません。言い方を換えれば、コロナ対策をしながらあまり変化のない日々を送ってきたともいえるでしょう。

これまでと時間の使い方が異なり、様々な行動に対して耐えることが求められるコロナ禍では、人の気持ちにストレスがかかりやすくなっています。そうなると、感情の制御がうまくいかずに爆発してしまうなどということもあるかもしれません。そのようなことは出来るだけ避けたいものです。

ハラスメント_01
もし、感情の制御がきかず、たとえば怒りの感情を爆発させてしてしまうと、ハラスメント行為に発展することが十分にありえます。ここ数年、職場では話題になっているパワーハラスメント(パワハラ)に代表されるように、ハラスメント行為の発生によって、従業員が精神疾患などを罹患することもしばしば起こってしまっています。厚生労働省の統計では、都道府県労働局や労働基準監督署の総合労働相談コーナーに寄せられる民事上の個別労働紛争にかかわるもので、最も多くなっているのは「いじめ・嫌がらせ」に関する内容だそうです。令和元年度においては年間8万7000件を超えていて、昨年よりも増加しています。職場でのいじめや嫌がらせを防ぐことを本腰を入れて取り組まないといけない、ということになるでしょう。

また、今年の6月には、改正労働施策推進法が施行され、大企業においては、パワハラへの対策を講じることが義務化されました。中小企業においても段階的に措置を定めることが義務化されます。こうした背景もあって、パワハラに対しての認知度が更に高まり、パワハラに関する問題に対して企業側も本腰を入れて取り組み始めています。ただ、法律が改正されたからといって、なかなか職場への影響が見えない場合、部下へのかかわり方を全く変えようとしない上司も多くみられます。むしろ、どうすればパワハラにならないか、ばかりに意識が働いてしまい、ハラスメント行為を職場から完全になくすまでの意識がまだまだ向けられていないように感じます。

ということで、今回は、ハラスメントのない職場にするために、どのような点に留意していけばいいのか、その取り組みポイントについて解説いたします。

社内コミュニケーション
これはマネジメントにおいては基本的なことでもありますが、チームメンバーとの接点を毎日もてるように心がけましょう。どこかで接点をもつようにすれば、相手の状況が徐々にわかってくるのではないでしょうか。

特に、表情をみる、声を聞くというのは有効です。表情をみれば、チームのメンバーが元気かそうでないかが想像できます。また、声を聞くと、いわゆる声色によって、そのときの調子が想像できます。

最近はコロナ禍で、同じ空間でチームのメンバーと毎日会えなくなってきています。リモートでチームのメンバーとつながったときには、「最近どう?」「今日の調子はどう?」などと、まず本題に入る前に、お互いに声をかけあってお互いの状況を簡単に確認するようにしましょう。そうすれば、ハラスメント等の行為につながるのを防げるのではないでしょうか。

相手の表情をみて、相手の声をきく。そのためには、チームのメンバーに気軽な気持ちで声がけをするようにしましょう。特にこの声がけは、経営者や管理職等の職位の上位者が積極的にやると、部下も気にかけてもらっていると思って、仕事へのやる気も高まるのではないでしょうか。職位の上位に当たる人から積極的に声がけをするのがお薦めです。

ハラスメント_02
最近、アンガーマネジメントが人材教育のテーマとしてとりあげられるようになっています。これは、怒りの感情に任せて相手に言葉を思い切りぶつけることで職場の空気が悪くなっている様子が見られるので、怒りが生じたらそれを抑えるために感情をコントロールしよう、というものだそうです。

よくアンガーマネジメントにおいて、怒りの感情が生じたときには6秒間待とうなどといわれます。
6秒間待つかどうかはともかく、心がける必要があるのは、「感情に任せて思いきり相手に声を発さない」ということです。怒りが生じて「バカヤロー!」、「ふざけるな!」などの大声を出す人がいますが、こうした行為がハラスメントを引き起こす原因になりえます。まずは冷静になりましょう。

特に長年厳しい上司とともに仕事をして成果を出してきた人のなかには、「上司からいつも怒鳴られて成長できた。それが良かった」という方がいます。ただ、こうした過去の上司自身の体験を部下に話したとしても、部下に同じように通じるとは限りません。なぜならば、そのような状況をイメージできないからです。そのため、上司が部下に怒鳴りつけると、それだけで「パワハラを受けた」と感じてしまうことがあるのです。とにかく、怒りの感情に任せて相手に声を発するのは避けましょう。

上司と部下
最近は、「1on1ミーティング」が多くの職場で行われるようになってきました。

上司と部下が1対1でミーティングを行うことで、お互いに考えていることを一人一人見るようになっています。このように、1対1で話し合いをする場面をとることは有効です。

ただ、目的を決めておこなうようにしないと、このミーティングがハラスメントの原因になってしまうことも考えられます。1対1でのミーティングは、仕事の進捗の確認や、営業上の案件の攻略に関することばかりでなく、お互いのことを分かり合うテーマで話し合いをしましょう。仕事に対する想い、何のために仕事をするのかなど、なかなか1対1でなければ話ができないことを話し合うことが必要です。1on1ミーティングがうまく機能すれば、ハラスメント行為を防ぐことにもつながるのではないでしょうか。

目的を決めてミーティングを行うようにして、ハラスメントがないような職場づくりについて話し合ってもいいかもしれません。

部下の話を聞く上司
ハラスメントをなくすための一つの取り組みとして、細かなことかもしれませんが、相手の話をしっかりと聴くこと、すなわち傾聴の実践です。傾聴といえば、相手の話に心を傾けて丁寧に聴くということですが、傾聴の実践のためには、以下の基本な行動を実践することが必要になります。

【1】相手の話を受容する。相手と考えが違ってもいったんは受け止める。受け止めていることを示すためには、相手に向かって頷きながら、あいづちをうつ。

【2】相手の話に共感する。相手の立場になったときにはどんな気持ちなのかを想像して聴く。そのためには、相手の気持ちが現れている言葉を捉えてその言葉を伝え返す。

【3】相手の言葉を繰り返す。言葉を繰り返してもらえることによって、相手は話を聴いてくれていると思える。

【4】相手から言葉が出てこなかったら、相手が発しそうな言葉をぶつけてみる。

【5】相手が長く話を続けていたときには、代わりにいったん整理してまとめる。

【6】相手から沈黙してしまったときには、黙って待つ。どうしても沈黙に耐えられなくなったら、一言だけ言葉を発することで(例:「それから?」)相手に発言を促す。

このような傾聴の基本スキルを実践することで、相手が話を聴いてくれていると感じれば険悪な関係にはならないでしょう。険悪な関係にならなければ、相手を恫喝するような声をあげることもなくなりますよね。相手が安心して話をしてくれるためには、とにかく一生懸命「聴く」こと。そのためにも傾聴の基本スキルの実践は欠かせません。

社会人
ハラスメントに対して社会的に関心が高まっていることは、総務や人事部門などの経営管理部門のみならず、現場の社員も一般常識的なものとして理解する必要があります。そのときに、事実を正しく理解することが求められます。

特に職位の上位者の方からよくご相談をいただくことですが、「『部下にきつく言ってしまうとパワハラとして訴えられるのでは』、と思って厳しく叱れない」ということです。なにかを部下にきつく言うことが全てパワハラになるかといえば、そうではありません。どんな言い方をすればパワハラになるのかならないのかを知るよりも、より大きな視点で、社会情勢を正しく理解することが大切です。

たとえば、近年は、パワハラなどによって被害を受けた従業員が、ケースによっては労災と認定されることが報道されています。労災の認定は、単にパワハラを匂わすような言動があったからという理由だけでおこなわれたものとは限りません。一つの言葉、一つの行動だけで認定をされるのではなく、その言葉、行動に至るまでに起こった事実や職場の環境などを総合的に見て判断されることが多いです。

ですので、そもそもパワハラを匂わすような言動や行動が発生しないような環境を整えることが重要なのです。
最近は、職場内でパワハラになるような事象として、無視や人間関係からの切り離しなどもあげられます。精神的に追い詰めるようなことも、パワハラの一つのパターンとして多く見られます。
これは、職場内でお互いにコミュニケーションをとって仕事をしていない、あるいは、何もルールがなく無法地帯のような職場環境の下で仕事をしているから起こるのではないでしょうか。

職場のメンバーが、お互いに安心して話せる環境を、職場のメンバーの一人一人がつくるつもりで取り組む必要があります。こうした行動の積み重ねが、パワハラをなくすことになります。そのためにも、社会情勢を正しく知ることが必要なのです。

ミーティング
先ほど、上司や部下との1on1ミーティングを行うことがお薦めというのは述べましたが、1対1だけでなく、職場のチームメンバー全員との対話をする時間も確保しましょう。
こちらも、1on1ミーティング同様に、なにか目的を決めて話をしてみるといいでしょう。

新型コロナウイルスの感染が拡大して、オンラインでのやりとりが増え始めた頃に「オンライン飲み会」が話題になりました。飲み会をやるかどうかはともかく、同じチームのメンバーが一つの場所に集まって話をする機会をつくることは、リモートによるものであっても、ハラスメント行為をなくすための一つの取り組みといえます。

もちろん、こうした場を円滑に進行できるようにすることが必要ですが、まずは、同じチームのメンバーが同じ場所に集まり、なにか目的を決めて話をすることが大切です。チームメンバーの悩みや不安な気持ちをほぐすためにも、同じチームのメンバーが全員集まって対話をする機会を設けましょう。
そのときには、お互いの発言を否定しないなどのルールをメンバー全員で決めて進めることです。お互いに安心して対話できる環境をつくり、実際に対話の機会を設けるようにしましょう。

上司と部下
職場でハラスメント行為をなくすためには、言葉の使い方に気をつければそれでいいというものではありません。
職場で言葉の乱れが表面化しないようにするためには、お互いに職場のメンバー間でコミュニケーションをとりあう、ハラスメントについての情勢を理解するなどの地道な取り組みが必要なのです。
職場のメンバー間でお互いに励ましあえるような環境づくりを、経営者や管理職などの職位の上位者が先頭に立って進めていくことが、ハラスメント行為をなくすことにつながります。
もちろん、職位の上位者だけが取り組めばいいというものではありません。最近は、部下によるハラスメント行為も発生しているようです。
職位に関係なく、働きやすい職場環境づくりを、コミュニケーションを大切にしながら進めていきましょう。そして、業績の向上のためにも、ハラスメントのない職場環境づくりは有効です。ハラスメント行為の発生に怯えて、社員が力を発揮できないということも防げるのではないでしょうか。

コロナ禍だからこそ必要な取り組み。それがハラスメントを防ぐための取組みです。もうパワハラに怯えるのはやめましょう!

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ハラスメントが起こる背景を理解し、防ぐためのコミュニケーションスキルについて理解し、実践できるようにするための研修です

◇【管理職・リーダー向け】ハラスメント防止研修(1時間半)

◇【管理職・リーダー向け】ハラスメント防止研修(3時間)

◇【管理職・リーダー向け】ハラスメント防止研修(4時間)※2時間でも可

【若手社員向け】ハラスメント防止研修(1時間半)

◇【若手社員向け】ハラスメント防止研修(3時間)

◇【若手社員向け】ハラスメント防止研修(4時間)※2時間でも可


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ゲストプロフィール

増田 和芳講師
増田 和芳(ますだ かずよし)講師

<経歴>
三菱UFJニコス株式会社,株式会社日本マンパワー,ソフトブレーン・サービス株式会社
合同会社富士みらいクリエイション代表

<資格>
国家資格キャリアコンサルタント
(公財)21世紀職業財団認定ハラスメント防止コンサルタント
(一社)日本産業カウンセラー協会認定産業カウンセラー
(一財)生涯学習開発財団ワークショップデザイナー

1976静岡県富士市生まれ。大学卒業後、大手信販会社で営業及び債権管理業務を経験。28歳の時に大手教育研修サービス会社へ転職し、約10年間法人営業職として勤務。キャリアデザイン研修やヒューマンアセスメント研修等の企画、営業に携わり、トップセールスとして表彰も受けた経験あり。33歳で営業課長に昇格。通算部下6名の育成に携わる。営業現場の業務改善や営業人材育成に取り組み、営業マニュアル作成や全社教育体系作成プロジェクトでは中心的な存在を担った。また、全社員対象ハラスメント防止研修等の社内研修講師としても活躍。一時は自律神経失調症で苦しむ経験をしたが克服し、2015年3月に営業コンサルティング会社へ転職。ソリューション営業スキル向上、マネジメント、組織内コミュニケーション向上等をテーマに、コンサルタントとして活動し約420回研修講師として登壇。オンライン型及び対面型どちらでもワーク主体の研修を中心に実施し、それぞれの特徴を活かして学びや気づきを促進する研修手法は、受講者から「わかりやすい内容で、現場ですぐに使えることが多い」と評判。

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