日本の就職活動を例にとると分かりやすいかと思いますが、労働市場、新卒一括採用市場というものを前提に、働きたい会社、業種、職種といった就活目標、キャリア目標をたてそのためのスキル分析、自己分析をしていくといった現状の就職活動の流れがコーゼーション的とアプローチとすると、労働市場、新卒採用市場がない、または予測確実性が低い場合に、自らの持っている手段または手段づくりから始めて、パートナー形成、環境変化への適応を経て、熟達領域を増やしていくというのがエフェクチュアルなキャリアアプローチとしています。
1990年代中頃から後半にかけた就職氷河期の世代の多くは、新卒当時エフェクチュアルなキャリアアプローチを余儀なくされた方が多かったかもしれませんが、その一方で起業家人財も多くいるのも確かかと思います。
そしてここで言いたいのはそれぞれのアプローチが良い悪いではなく、両面のアプローチを知っておくことなのではないか、特に人生100年時代、長期に渡って働くことが必要な時代が来ています。時にコーゼーション的にキャリアを考える、時にエフェクチュアルにキャリアを考える、社会の変化、技術の進化が急激な時代だからこそキャリアの考え方にも流動性があった方がよいのではないかと感じています。そしてすでに世に出ているキャリア理論にもエフェクチュエーションと親和性の高いものがありましたので今回のブログではその3つのキャリア理論を簡単にご紹介しておきます。
一つ目は、ハリー B.ジェラット( Gelatt B.Harry )積極的不確実性「Positive Uncertainty Decision Making Theory」。
この理論を簡単にまとめると「未来や自分の将来は、未知であり不確実なものだ。不確実なものだからといって、諦めたり流れにまかせるのではなく、自ら積極的にその不確実なものに取り組んでいく(意思決定)べきだ。」という意思決定理論です。実は理論形成初期は、「予測(予期)システム」→「価値(評価)システム」→「基準(決定)システム」というコーゼーション的アプローチを推奨していたが、その後研究を進めていく中で、情報は限られており、変化し、主観的に認知されたものである。そして意思決定は、目標に近づくと同時に、目標を創造する過程でもあるし、
キャリアデザインは、不確実なことに積極的にかかわっていくプロセス的意思決定論を打ち出した。これはある意味エフェクチュアルなキャリアアプローチに近いものと言えます。ジェラットは、前期理論を完全に否定したのではなく、コーゼーション的アプローチ、エフェクチュアルアプローチの両面の必要性を説いていると考えます。
2つ目は、ダグラス.T.ホール(Douglas T. Hall)プロティアンキャリア 「Protean Career」。
この理論は、関係性アプローチと言われ「キャリアは、他者との関係の中で互いに学びあうことで形成されていく。変化の激しい現代においては、依存的ではなく、独立的でもない、相互依存的な人間関係の中で学び続けることによって「変幻自在なキャリア(Protean Career)」を築いていくことができるとするもので、これはエフェクチュエーションにおける手中の鳥の法則「whom I know」クレイジーキルトの法則やまさにコ・クリエーションを通して目標/キャリアを変えていくことと近いものではないかと考えます。
最後に、比較的日本の社会人でも知っている人が多いかもしれませんが、ジョン・D・クランボルツ(John D. Krumboltz)計画された偶然理論 「Happenstance Learning Theory」。
「偶然の出来事は人のキャリアに大きな影響を及ぼす。その予期できぬ出来事をキャリアの機会ととらえることができた時、その人に望ましいものとなる」とする理論で『キャリアの80%以上は予期していなかった偶然の出来事によって形成されている』ことを突き止めるとともに、成功したビジネスパーソンたちは何もせずに偶然の幸運や良い出会いが湧いてきたわけではなく、『自分を良い方向に導いてくれる偶然が起こりやすい5つの考え方や価値観・実際の行動力』(好奇心[Curiosity]、持続性[Persistence]、柔軟性[Flexibility]楽観性[Optimism]、冒険心[Risk Taking]』を持っているとしています。これらはエフェクチュエーション理論の『許容可能な損失の法則(アフォータブルロス)』『やレモネートの法則』といったところと非常に親和性が高いのではないか?そんなことも思います。