『RPA時代の事務を考える (2)』 Author:宮崎 敬
コロナウイルス対策に伴い、時差通勤や在宅勤務など未体験の環境で戸惑う方もいらっしゃると思いますが、何か一つでも「メリット」と感じる点があればそれを大事にしましょう。
さて、前回のブログでは、「RPA(Robotic Process Automation)やエクセルマクロは業務効率化に大いに活用したいツールですが、これまで導入が進んでこなかったのにはそれなりに理由がある」ということをお話しました。
今回は、導入や活用に向けてどのように取り組めば良いのかを考えてみたいと思います。
そのためには、機械化を難しくしている「少量多品種」や「ベテランの技」の問題に取り組む必要があります。
まず目につくのは、「普通はこうやるのだけれど、A社については扱いが異なる」などの、個別ニーズ対応です。
サービス競争の中での産物ですが、過去に示された先方のニーズや状況がその後変わっているにも関わらずに特殊扱いが踏襲されている、といったことはないでしょうか?
このような無駄を避けるために、営業と事務の密接な連携で定期的に棚卸をしたいものです。
もうひとつは、「ベテランの技」をチームの共有財産とする努力です。
長年その仕事をやっていた人は、手順が体内にインストールされているため、それを他の人に説明するのが容易ではないケースが多いものです。
ですから、「さあ、仕事の手順を書き出しましょう!」と掛け声をかけた時に、ベテランの方ほど苦労が多いものです。
そこでおススメしたいのが、まず付箋などを活用して仕事の手順を書き出し、漏れがないかをチェックする方法です。
その上で、手順ごとに詳しい処理内容を箇条書きします。
扱っている帳票などがあれば、記入例も添えると分かりやすくなります。
RPAやエクセルマクロなどのツールに代わって仕事をしてもらうためには、このような取り組みを経る必要があります。
そして、ここまでできると、上司やほかのメンバーと共有できます。
まず、休暇取得等の際に代わりにやってもらえる人の育成が進めやすくなります。
さらに、複数の目で見ていくと、「このチェック作業は省略できるのでは?」とか「営業の人にお客さまのニーズをしっかり確認してもらえば、この処理はもっとスムースにできるのでは?」など、仕事を改善するポイントが見えてくることもしばしばあります。
機械化は私たちの仕事を正確で効率的なものにしてくれますが、導入には相応のコスト(RPAでも百万円単位)がかかります。
「コスパ」は飲み会だけの問題ではありません!
仕事を整理して機械に置き換えることができれば大成功ですが、万一そこまでの効果が見込めない場合でも、今回ご紹介したような観点からの仕事の見直し、効率化ができればそれだけでも大きな成果と言えます。
コロナ対策で通常業務が制約を受けている状況を、このような仕事を見直すチャンスとして活用してはいかがでしょうか?
ゲストプロフィール
株式会社オフィスソリューション
代表取締役 宮崎 敬(みやざき たかし)
早稲田大学法学部卒業後、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入社し、証券代行、外国証券管理等の事務サービス業務領域で現場マネジメントを経験。
その後、同社グループ内関連会社4社において常務取締役を歴任するとともに、研修開発・講師を5年間担当し好評を得る。
事務マネジメントに関する経験と研究成果を「事務学」として体系化し、社内外での講演、セミナー、業務改善プロジェクト指導の実績多数あり。
早稲田大学理工学術院創造理工学研究科修士課程(経営工学)2011年修了
公益社団法人 日本経営工学会
一般社団法人 日本品質管理学会
特定非営利活動法人 リスクセンス研究会(理事)
特定非営利活動法人 失敗学会
主な著書:「現場からはじめる働き方改革」「事務ミスを防ぐ知恵と技術」「事務のプロはこうして育てる」