ビジネスの場面においては、同じ職場の上司と部下、他部署の社員、組織外部の顧客、グループ会社や協力会社の方々など、様々な人たちとかかわります。オンラインでのコミュニケーションで仕事を進めていくとしても、これまでと同じように成果をあげていくとなれば、オンラインでの相手とのコミュニケーションのとり方が重要になってきます。ただ、オンラインだからといって、特別なコミュニケーションのとり方が要求されるわけではありません。
では、オンラインでのコミュニケーションのとり方には、具体的にどのようなことが求められるのでしょうか?今回は、コロナ禍で欠かせないオンラインでのコミュニケーションのとり方について、特に気をつけるべきポイントを5つの観点から整理します。
1.安心感を与える表情で相手と接する
オンラインでのコミュニケーションにおいては、パソコンやスマートフォンなどの機器に相手の顔がはっきりと表示されます。微妙な表情の変化も、画面を見て話をしているとわかるものです。オンラインツールによっては、相手の表情をアップにできるので、注意しなければなりません。
相手に安心感を与える表情の基本は笑顔です。口角を上げて目元を緩める。毎日数分でも意識して笑顔の表情を確認すれば、自然に相手に安心感を与えられる表情になります。相手が本音でコミュニケーションをとるポイントとなるのは笑顔です。オンラインでのコミュニケーションでは特に心がけていきましょう。
オンラインでの打ち合わせの前に、最初に一人だけで打ち合わせルームにログインして、表情チェックをやってみるといいですね。そのくらい入念に表情チェックをしてから、打ち合わせなどに臨むといいでしょう。
2.相手にはっきりと言葉を伝える
オンラインでのコミュニケーションにおいては、相手がわかるように、はっきりと言葉を伝えようとしなければ、相手に正しく言葉が伝わりません。また、口を開いてはっきりと語尾まで伝えないと、オンラインでのコミュニケーションでは相手が聴き取れないなどの問題がよく起こります。口を開いてはっきりと伝えようとすれば、相手は、何を言いたいのかがはっきりとわかってくれるものなのです。伝えたい内容は最後までしっかりと言い切るようにしましょう。
私は、研修やセミナーなどで長時間話をする際には、物事を伝える役割を担うため、最初に早口言葉の練習をしてから臨むようにしています。早口言葉の練習によって、はっきりと物事を伝えるための準備をします。早口言葉の練習をすると、顔の筋肉がほぐれてくるのです。たとえば、「赤巻紙、青巻紙、黄巻紙(あかまきがみ、あおまきがみ、きまきがみ)」「生麦、生米、生卵(なまむぎ、なまごめ、なまたまご)」「東京特許許可局(とうきょうとっきょきょかきょく)」などの早口言葉をいくつか任意で選んで、それぞれ3回ずつ言ってみると、表情の筋肉がほぐれてきます。仮にうまく言えなくてもあきらめずにやりきりましょう(マスクの下なら外からは見えないので、恥ずかしがらずに試してみて下さい)。オンラインでのコミュニケーションで物事をはっきりと伝えるためにも、こうした準備を採り入れてみるのをおすすめします。
3.話を聴いていることを相手にはっきりと示す
オンラインでのコミュニケーション場面では、相手の表情や動作がよく見えますので、相手の反応がよくない場合や、相手が話を聴いていない場合というのはよくわかります。パソコンの画面を見ていると、相手が画面の端でなにか違うことをしているような動きが見える場合があります。おそらく、画面の外側でスマートフォンを操作しているのかもしれません。なかには、突然カメラをオフにして(オンのままの方もいますが・・・)、いきなり画面の外に消えてしまうような方もいます。これでは、話をする側にとっては、話を聴いてもらっていないのがはっきりとわかるので、大きなショックを受けてしまいます。
オンラインでのコミュニケーションの場面でなくてもそうですが、相手の話を聴くときには、「相手をみる」「うなずく」など、話を聴いているという動作を、相手にわかるように示しましょう。また、カメラの方に体を向けることによって、しっかりと相手と向き合うように位置取りすることも必要です。
また、オンラインでのコミュニケーションをとる場合、言葉に関しても注意をする必要があります。聴いている側が相手の発した言葉を伝え返さなければ、伝える側にとっては、自分の話が相手に伝わっているのか不安になります。「へー、そうなんですね」「なるほど」など、あいづちをうつ場合に相手に伝え返す言葉はたくさんあります。オンラインでのコミュニケーションでは、相手に安心感を与えるような表情、笑顔とともに、あいづちの言葉を有効に使いましょう。
4.重要な言葉はゆっくりと繰り返し伝える
オンラインでのコミュニケーションの場面でも、対面でのコミュニケーションの場面と変わることなく、早口で話をして用件だけを伝えて終わらせようとする人がいます。なにか事情があるのかもしれませんが、オンラインでのコミュニケーションにおいては、早口で話をしてもなかなか相手には伝わりません。ましてや、オンラインでのコミュニケーションをとる場合には、ただでさえ相手の言葉が聴き取りにくいときもありますので、聴いている側にとってはストレスが溜まります。伝える側は、特に重要な言葉や記憶してもらいたい言葉に関しては、何度も繰り返すことで、相手の記憶に留めるようにしましょう。また、伝える言葉のスピードにも工夫します。伝えたい言葉をあえてゆっくりと話して、相手の記憶に残るようにするといいでしょう。ある方は、自分の名前を覚えてもらいたいために、名前の部分だけをゆっくりと伝えるそうです。
また、間違いやすい言葉や覚えにくい言葉については、お互いに繰り返し確認しながら伝えることで、相互に理解を深める工夫をするのが大切です。このように、オンラインでのコミュニケーションにおいては、伝えるときに気をつけなければならないことがありますし、時には対面で伝える以上に時間をかけることも必要です。もしお互いに時間がないときは、せめて重要な言葉でも繰り返し伝えるようにしましょう。
5.威圧的な姿勢をとらないようにする
オンラインでのコミュニケーションの場面では、相手の様子がはっきりとわかります。そのときに、相手に対して威圧的な姿勢をとらないように注意しましょう。たとえば、上司と部下がオンラインでコミュニケーションをとる場面もこれから増えてくるでしょう。上司と部下が面談する場合も、オンラインで行うことも増えてきます。そのときに、とくに管理職や指導役、または先輩にあたる社員の方々には、部下や後輩の話を聴く姿勢について振り返ってほしいのです。部下や後輩に対して威圧的な姿勢や表情で接すると、部下や後輩に敬遠されてしまい、彼らが本音をいうことなく、面談が終わってしまうかもしれません。
特に、上司と部下が1対1で行う「1on1ミーティング」のときにも十分に気をつけましょう。今後、オンラインでの1on1ミーティングも増えてくるでしょう。オンラインでのコミュニケーション場面では、相手の様子がはっきりと見えますし、相手が一人で画面の向こう側にいる場合もありますから、相手に不安感を与えるような、威圧的な姿勢は慎みましょう。こうした姿勢をとりながら部下に厳しい言葉を浴びせると、部下から「パワハラを受けた」と指摘されるリスクが高まります。また、それがエスカレートすると、オンラインでのコミュニケーションがうまくとれなかった影響で、部下が精神疾患を患って休職する事態にもなりかねません。部下の話を聴くときに、ついつい無意識のうちに腕組みをするなどして、相手を威圧するような態度をとってしまったと感じたときには、まず自分で意識して改善しましょう。まずは自分で気づかなければ改善されませんので、部下や後輩だと「上から目線」でみてコミュニケーションをとるのではなく、大切な人の話を聴く、という意識をもつくらいのつもりで聴くようにしましょう。