こちらのブログでは、「人生100年時代のキャリアを考える」をテーマに、「現状のキャリア構築のどこに問題があるのか、この先どうキャリア設計していくことが必要か」という問いに対して、全5回の連載で順を追って解説しています。
今回はその中の1回目『なぜ今、スモールビジネスなのか』についてお届けします。
「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」という本をご存じでしょうか?著者であるリンダ・グラットンはその中で「長寿化による人生のリスク」を指摘しています。これまでの私たちは、20歳前後まで義務教育を受け、60歳まで企業内で熱心に働き定年を迎え、65歳までの継続雇用中に老後の準備をする。その後は引退して余生を楽しむ――そう想定して、人生におけるキャリアを会社に預けて生活できました。そう、終身雇用制度に守られて。
しかし、会社の給与や退職金に国の年金もあてにならない今、65歳までの働きでその後の長い人生を賄うほど貯蓄をするのは難しくなっていきます。2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されている人生100年時代、65歳で引退すると残りの余生は35年。これを年金だけで過ごせるとは、もはや誰も思ってないでしょう。ですので、20代から60代という時期を、仕事一辺倒、同一会社に仕えて会社内キャリアアップ一筋で過ごすには危険なこと、という認識を持っている方も多いと思います。
「ただ長い」だけの人生ほどつまらない、そしてツライものはありません。そういった人生を過ごした方が最期に思うことのNo1が「思い通りに生きればよかった」、No2が「こんなに働かなくても良かった」です(「死ぬ瞬間の5つの後悔」より)。
だったらせめて自由に使えるお金があれば、と感じますが、日本は大半の国民が老後資金に不足すると想定しています。寿命が延び、退職金が減少し、年金支給額が減少すると推測されているからです。いわゆる老後資金2,000万円不足問題です。また健康寿命も延び、すでに100歳以上の方は8万人を突破しています。その中で65歳以降も知力・体力はもちろん、気力・能力・活力ともに高いまま、定年を迎えてやることがなくなって100歳まで生きてしまうのはつまらなく、またツライことでしょう。
いや、やることがなくなるだけならまだよし。やることがなくなったうえで、さらに日々の暮らしを守れるお金がなくなるのが一番の問題です。となれば、できるかぎり健康に過ごし、より長く働くことを考えてしまいがちですが、会社の定年はそうそう延びません。それに会社にも寿命というものもあり、一部の歴史ある企業を除けばその平均寿命は30年です。私たちの社会人生活よりもその寿命が短いので、定年まで必ず1回は転職しなければならないとデータは教えてくれています。そうすると退職金は確実に減ります。
さらに超一流企業のトヨタ自動車の社長でさえ2019年5月に「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と話すなど、ずっと1社で長く勤め、退職金と年金で優雅な老後を過ごすことは、もはや幻想となりつつあります。年金支給額は年々減り続けていますし、支給年齢も徐々に引き上げられています。長生きすること自体が私たちの人生におけるリスクとなっているのです。人生100年時代はリスクの時代とも言えるでしょう。