アンコンシャスバイアス研修とは?アンコンシャスバイアスが起きる理由や注目される背景、導入事例を紹介!

2024年11月18日|カテゴリー「人材育成コラム
アンコンシャスバイアス研修とは
アンコンシャスバイアス研修とは、人が無意識に抱える偏見や考え(バイアス)を理解し、人や組織にどんな影響を与えるのかを知ることによって、誤った見方や判断を防止するための研修で、今多くの企業が重要な取り組みとして導入しています。多様性を受け入れる社会になった現代において、なぜアンコンシャスバイアス研修が注目されているのか、メリットや企業における導入事例を解説します。

1.アンコンシャスバイアスとは

アンコンシャスバイアス研修とは
アンコンシャスバイアスとは、「無意識の偏見」と訳され、人間の捉え方の中で無意識のうちに認識している偏りや偏見のことです。人間が何かしらの判断をする際に、思考のベースとなる過去の経験や価値観は、自分で自覚できるものではありません。
企業に置き換えると「雑事は若手社員の仕事」「定時帰りはやる気がない」といった思い込みや価値観は、アンコンシャスバイアスの実例といえます。
無意識が判断スピードの向上にもつながるため、バイアスの全てが悪いわけではありません。ただし、アンコンシャスバイアスを正しく認識しなければ、社員モチベーションの低下や職場内のハラスメントに影響するかもしれないため、企業全体で対処法と理解を深めていく必要があります。

アンコンシャスバイアスが注目される背景

アンコンシャスバイアスが注目されるようになった背景には、社会全体で働き改革が行われるようになったことが一つの理由です。働き改革は、働く人々がそれぞれ将来的な希望を持てる社会になることを目的としています。正社員や非正規社員などのように、従来の常識にとらわれず、多様な雇用形態や新しい考え方に対応することが企業にとって求められるようになったのです。

また、アンコンシャスバイアスの理解促進は、職場内でのハラスメントを防止する狙いもあります。ハラスメントは、多くの場合「ハラスメントに該当しない」との認識の甘さから発生します。ハラスメントに対する無自覚な前提を認識することで、職場内でのハラスメントの減少につながるかもしれません。

職場にもアンコンシャスバイアスは存在する

職場におけるアンコンシャスバイアスの実態として、「内閣府男女共同参画局」の「令和4年度 性別による無意識の思い込み (アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果」によると、性別役割について「意識」は男性が、「経験」は女性の方が多いという結果が出ています。つまり、男女に関するアンコンシャスバイアスは、男性は女性と比較して、性別に基づいた役割を直接的な態度で言われた経験は少ない一方で、伝統的な役割に自身がとらわれていることに気づいていない傾向にあるといえます。


2.アンコンシャスバイアスの起こる理由・例

アンコンシャスバイアス研修とは
ではなぜアンコンシャスバイアスは起こってしまうのでしょうか。ここからはアンコンシャスバイアスの起こる理由と日常例をご紹介します。

エゴ

アンコンシャスバイアスが起こる例としては、自己防衛心からくるエゴが挙げられます。自身の中で「自分を周囲からよく見せたい」といった考えが存在することで、無意識のエゴによって偏見を形成してしまうのです。

長期的な習慣

所属している企業や組織での当たり前が、アンコンシャスバイアスの起因になっているケースもあります。毎日仕事を行っている周囲の環境が、暗黙の了解のような形で無意識に偏見を作ってしまうのです。

アンコンシャスバイアスの例

企業において、日常的なアンコンシャスバイアスの例としては、以下が挙げられます。職場内や周囲で似た事象がないか確認しておきましょう。

・育児休暇や育児は女性社員が行うもの
・お茶だしは女性社員の仕事
・外国人スタッフは日本語での接客、仕事を苦手としている

3.アイコンシャスバイアスの代表的な例

アンコンシャスバイアス研修とは
ここからは、アイコンシャスバイアスの代表的な例を6つご紹介します。

ステレオタイプ

ステレオタイプとは、性別や世代といった属性ごとに特定の特徴が存在すると固定観念を抱き、思い込むことを言います。高齢者はITに弱いことや会社の要職には男性が就くなどといった項目になります。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分にとって都合の良い解釈となるように、情報を集めたくなる傾向のことです。会社であれば仕事の業績をあげるには、長時間働く必要があるといった根性論などが該当します。

現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、言葉の通り現状をそのまま維持することを希み、状況の変化を避ける傾向のことです。会社であれば、社会全体として人事評価が見直されていても、理由なくこれまでの評価制度をとり続けるといった具合です。

同調バイアス

同調バイアスとは、集団に所属している際、周囲のメンバーと言動をなるべく一致させたい傾向のことを言います。会議では原則的に満場一致がよしとされる社内の空気や、問題に対して誰も意見しない、といったことをがあたります。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、精神や肉体的に警告的な症状が出ているにも関わらず、自分は大丈夫と軽んじてしまう傾向のことを言います。失敗があっても「今回のはたまたま」など、問題視しない姿勢が該当します。

インポスター症候群

インポスター症候群とは、周囲からの評価が高かったとしても、自分に自信が持てず過小評価してしまう傾向のことです。仕事であれば、上司から役職を推薦されても、どうせ自分には無理と考えてしまうといった形になります。

4.アンコンシャスバイアス研修とは

アンコンシャスバイアス研修とは
アンコンシャスバイアス研修とは、それぞれが無意識に持っている偏見や認識を理解し、今後の行動を変えていくことを目的とした研修です。研修内容としては、以下の3つになります。それぞれ見ていきましょう。

・無意識な行動を理解し、行動を変える
・影響の認識
・解決方法の学習

無意識な行動を理解し、行動を変える

無意識に偏見を持つアンコンシャスバイアスは、何気ない行動や考えにも影響します。アンコンシャスバイアス研修を通じて、アンコンシャスバイアスとは何かをまず理解し、会社や文化といった影響されているバイアスの出所も把握します。

影響の認識

次に、抱えているバイアスが、行動や思考にどのような影響を与えるのかを認識します。バイアスの働く事例や状況を見ながら、周囲の行動を含めて人種や性別、年齢などから生まれる偏見を確認していきます。

解決方法の学習

最後に、アンコンシャスバイアスを解決するための方法を学びます。具体的な対処方法としては、意識的にバイアスを認識して対処する方法、多様性を許容する組織体制の構築などです。バイアスの対処方法としては、他にもバイアスを自己認識する能力の向上や他者理解を深めるといったことも挙げられます。

5.アンコンシャスバイアス研修の実施によるメリット

アンコンシャスバイアス研修とは
企業におけるアンコンシャスバイアス研修の実施には、以下の3つのメリットがあります。それぞれ見ていきましょう。

・心理的安全性の確保
・業績向上
・マネジメント力の向上

心理的安全性の確保

心理的安全性とは、周囲に自分の発言を拒否したり、否定したりする人がいないと確信できる心理状態のことです。Googleによる研究によって、チームの生産性向上に最も影響する要因として心理的安全性が挙げられており、組織の多様性以外にも企業にとって重要視されています。アンコンシャスバイアス研修によって、従業員同士が偏見なくコミュニケーションや意見交換できる環境は、企業における生産性向上にもつながるかもしれません。

業績向上

多様な考えや価値観を受け入れるスキルと組織体制を構築するアンコンシャスバイアス研修は、従業員の力を100%発揮しやすい環境の整備につながります。組織の柔軟性や多様な人材の意見や視点の多角化も期待でき、会社全体の成長の助けにもなります。

マネジメント力の向上

チームのマネジメントを担っている従業員に対して、アンコンシャスバイアス研修を実施することで、組織全体のマネジメント力が向上します。従業員全員が力を最大限発揮しやすい環境づくりをマネジメント層が行うことで、社員への理解が深まり、育児休暇をはじめ働きやすい職場作りにも役立てることができます。


6.アンコンシャスバイアス研修の導入事例

最後に、アンコンシャスバイアス研修を実際に導入した企業事例をご紹介します。

Google

2013年に、検索エンジンにおけるロゴが男女差別的では、との指摘を受けたGoogleは、これを機に社員の無意識なバイアスを理解した上で、多角的な視点をもてる組織になるべくアンコンシャスバイアス研修をはじめました。偏見を排除する目的で行われるワークショップでは、社員・経営陣関係なく参加し、現在においても学習プログラムとして取り入れられています。

味の素

味の素グループでは、全社的にダイバーシティの推進に取り組み、多様な人材を育成するとともに、更なる社会価値の創出を目指しています。アンコンシャスバイアス研修は、2018年から導入し、無意識な思い込みを取り払うことをテーマに現在では全社員に向けて実施されています。

本記事では、アンコンシャスバイアス研修について、実施するメリットや事例について解説しました。

無意識に身についているバイアスはなかなか日常生活では、自分で認知することは難しいです。物事を偏った考え方で捉えず、健全な組織体制を目指すためにも、アンコンシャスバイアス研修でバイアスを正しく理解してみてはいかがでしょうか。

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