聞き取りがしにくい高齢者との会話に機器を使ったり、言い換えたりするのは効果がある。
ただ、それだけで十分とは言えない。
企業研修などを手掛けるセゾンパーソナルプラス(大阪市)の講師で、高齢者とのコミュニケーションに詳しい中尾知子さんは「高齢者がどういう状態にあり、どういう気持ちでいるのかを理解するのが前提」と指摘する。
高齢者は聞き取りやすい音域が狭くなり、特に女性の高音など周波数が高い音が聞き取りづらくなる。
「ところどころ音がとぎれるため、全体として何を言っているのかわからない」(中尾さん)というケースが多い。
話す側が、聞こえないのではと思い込み、必要以上に大きな声を出すのは禁物。
語調がきつく、高圧的になる恐れがある。
中尾さんは、「低い声で、ゆっくり、はっきりと話すことが重要」と話す。
相手の表情を確認すること大事だ。自分が難聴であることを知られたくないため、「分かっていなくても、ウン、ウンと答えてしまうことが少なくない(中尾さん)。
表情からどの程度、聞こえているのかを読み取り、それに合わせて話し方を変えることも欠かせない。
(著:大橋正也 日本経済新聞 2017年7月10日(月)掲載)