ダブルループ学習|人材育成用語集

ダブルループ学習とは

今まで学習してきた物事や思考の枠組みを意識的に棄却(アンラーニング)し、新しい考え方や思考の枠組みを取り込みながら問題解決を図ろうとする考え方のこと。アメリカの組織心理学者アージリスらが提唱し、新たな考え方やアイディアを生み出すための有効な手段として、多くの企業が社内研修に取り入れるなど注目を集めている。

シングルループ学習との違い

シングルループ学習とは、過去の成功体験に基づいて問題解決を図ろうとする考え方のこと。「物事の結果を受け行動を改善し、再度その結果を確認する」といったループを繰り返し、問題の解決を目指す。
既存の枠組みにはない新しい考え方で問題解決を図るダブルループとは異なり、これまでの経験をもとに既存の枠組み内で解決方法を模索するのが特徴。
ダブルループ学習を「改革」、シングルループ学習を「改善」と言い表すこともできる。

ダブルループ学習とシングルループ学習の具体例

ダブルループ学習
コールセンターにおけるアポイントの売上向上を目的とした解決策を模索すると仮定した場合、シングルループ学習では「電話をかける回数を増やす」、「パンフレットを刷新して成約率を上げる」といった従来の行動の枠組みを踏襲した解決策が想定されます。

一方のダブルループ学習では「電話ではなくセミナーやSNSで集客をする」、「売上目標が妥当な数値だったか再検討する」など、問題の前提条件から疑い、過去の成功体験にとらわれない幅広い選択肢から解決策を選ぶことができるのです。

シングルループ学習の弱点

過去の成功体験をもとに解決策を導き出そうとするシングルループ学習では、前提条件を疑うプロセスが存在しないため、下記のような問題が発生することがあります。

・学習者の成長スピードが遅い
・問題を解決できない場合がある

学習者の成長スピードが遅い

既存の枠組みの中で考えるシンプルループ学習では、現状以上の成果を出しにくい性質があります。例えば売上目標の達成のために「訪問営業数を増やす」ことを解決策として掲げても、1日に回ることのできる回数には限界があります。
現状の考え方の範囲を永遠にループすることで物事を多角的な視点で捉えられず、学習者の成長スピードが遅くなってしまうのです。

問題を解決できない場合がある

シンプルループ学習には、問題への前提条件を疑わないことで最適な解決策を見つけにくいといった弱点もあります。例えば、売上目標の達成に向けた解決策でも、目標数値が適正なものでなければ解決は難しいでしょう。既存のやり方が効率的なものでない限り軌道修正をすることができないシングルループ学習は、解決処理能力に限界があることがネックです。

ダブルループ学習のメリット

反対に、ダブルループ学習を活用することは、組織の課題解決能力の向上につながります。組織がダブルループ学習を取り入れるメリットには下記のようなものがあります。

・学習者の成長スピード促進
・角的な視点から問題解決が可能

学習者の成長スピード促進

ダブルループ学習では、既存の考え方や枠組みにとらわれずに解決策を探す手法をとります。そして、常に発想の外に意識を向けて思考することは、学習者の成長スピードを上昇させる可能性を持っています。例えば、売上を伸ばす施策として「セミナーやSNS広告の活用」を実施した場合、これまで活用してこなかった販路からアクセスが集まり、急激に売上が伸びることも考えられるのです。ダブルループ学習の実践によって部下やメンバーが成長すれば、企業として成長にもつながるでしょう。

多角的な視点から問題解決が可能

問題解決で前提条件を疑うことはダブルループ学習の特徴の一つです。「そもそも目標が妥当な数値ではないのではないか」「問題に直面せず、迂回した方が良い」といった柔軟な発想で多くの選択肢を生み出せるため、過去の結果にとらわれず解決策を探る姿勢は、各局面において最適解を導き出す可能性が高いといえます。企業の経営課題や売上目標の壁となる問題と向き合った際には、課題を多角的な視点で捉え、革新的な解決方法を作り出すことができます。

ダブルループ学習を組織に定着させるためのポイント

ダブルループ学習
組織内でダブルループ学習の意識を定着させるためには、上司・部下の立場関係なく意見を言える風土を作ることが大切です。

経営者・上司から問いかけをする

ダブルループ学習の特徴である前提を疑う意見は、組織内で言い出しづらい場合が多いです。
売上目標に未達だった際の改善策として、シングルループの「架電回数を増やす」という意見は提言しやすく、上司も引っかかりなく納得することができるでしょう。しかし、こうしたシングルループの繰り返しは過去の経験の踏襲に終始してしまうため、飛躍的な成長を望むことはできません。
飛躍的成長を促すダブルループ学習を組織に定着させるためには、まずは経営者・上司から問いかけをすることが大切なのです。
売上目標が未達ならば本当に目標の数値は妥当だったのか、テレアポ以外の営業方法はないのか、といった問いかけをすることで部下に新しい発想への意識づけを行います。

部下の意見を取り入れる

経営者や上司が部下に問いかけることで、組織内ではダブルループ学習を意識して、前提を疑うような改革を取り入れた意見が出るようになります。この際、部下から出てきた意見を採用するかどうかはさておき、意見を出したこと自体を褒めることが大切です。

部下が「自由に意見を出しても批判されない」といったポジティブな感情を抱くことができるようになれば、組織内の意見交換も活発化し、問いかけずとも自然に意見が出るような環境が出来上がります。社内の風通しの良さがダブルループ学習の習慣化につながるため、意見を積極的に出したいと思えるような雰囲気作りは非常に重要です。

経営者と上司のマネジメント能力が重要

組織内でダブルループ学習が習慣化し、部下から意見が出たとしても、施策の検討や実行がなされなければ意味がありません。経営者や上司には部下から出た意見を踏まえ、問題解決に向けて意思決定をするマネジメント能力が求められます。
経営者や上司の決めたことだけを実行させていては、組織はダブルループ学習が定着せずシングルループ学習から抜け出せません。経営者や上司が問いかけ、部下の意見を取り入れながら組織をマネジメントしていくことで、ダブルループ学習が定着していくのです。

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